アルツハイマー型認知症の基礎知識

アルツハイマー型認知症は、ある日突然発症するわけではありません。その潜伏期間は長く、人によっては20年以上におよぶ長い潜伏期間があり、その間じわじわと脳細胞が変性していきます。その進行ステージ(段階)は、軽度認知障害(MCI)⇒軽度⇒中等度⇒高度と変化します。

ここでは、アルツハイマー型認知症の症状と対応のポイントを軽度認知障害・軽度・中度・高度と分けて説明します。

アルツハイマー型認知症とは?

アミロイドβやタウと呼ばれるたんぱく質が脳に溜まることで起こります。神経細胞が死に、脳が萎縮することで、知能や身体の機能が全体的に衰えていきます。発症率は男性より女性の方が高いと言われています。

他の病型と比べて、なだらかな坂道をたどるようにゆっくりと、ただし時間の経過とともに確実に進行することが特徴といわれています。

アルツハイマー型認知症の進行スピード

アルツハイマー型認知症の進行スピード

発症後の進行スピードは個人差がありますが、発病から4~6年の時間をかけて高度に移行するのが一般的と言われています。ただし、64歳以下で発症する若年性アルツハイマー病の場合は、進行速度が速まります。脳の変性の広がりに応じて様々な症状が現れ、進行するほど日常生活に支障をきたす影響度も大きくなります。

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症状は段階別に変わる

軽度認知障害(MCI)⇒軽度⇒中等度⇒高度と段階が変わるアルツハイマー型認知症ですが、それぞれの段階で現れる症状は違います。初期症状がみられ、「もしかして認知症かも?」と思われたら、専門医の早期診断により、症状を遅らせたり改善させることができます。

軽度認知障害(MCI)で見られる症状

正常レベルと発病までの中間的な時期は、軽度認知障害(MCI)と呼ばれ、認知機能の一部に問題はあるものの、日常生活には支障がない状態を指します。この段階で適切な治療を受ければ、認知機能の低下を遅らせ、発病を延ばすこともできるといわれています。

以前から知っている人や物の名前が出てこない
  • 「あれ」や「それ」といった代名詞を使って話すことが増える
  • 家族や親戚の名前が思い出せなくなる
人と約束をしたことを忘れる
  • 会う約束をした日時を間違える
  • 会う約束そのものを忘れてしまう
最近の出来事をよく忘れる
  • 連続ドラマのあらすじが思い出せない
  • 電話を切った直後、電話をしていたことを忘れる

軽度で見られる症状(初期症状)

記憶をつかさどる海馬を含む前頭葉が、ダメージを受けて始まるアルツハイマー型認知症。初期は、身近な人でなければ気づかないほど少しずつ出始めます。一番最初に異変に気づきやすいのは本人で、自分の認識と現実が噛みあわない状態がストレスとなり、不安やうつ状態を最も引き起こしやすい段階でもあります。

見当識は、時間⇒場所⇒人物の順番に、認識できなくなるものが増えていくのが一般的です。初期では、時間が分からないケースが多く見られます。

初期症状は次の通りです。

記憶障害
  • 数分前に言ったことと同じ内容を何度も尋ねたり、話しかけたりする
  • 日付や曜日など、年月日が分からなくなる
もの盗られ妄想
  • 通帳や財布、印鑑など、自分の大切なものが見つからなくなり、身近な人を疑う
  • 新しい担当ヘルパーに対して、「盗っ人」と言う
うつ状態
  • 趣味や習い事に興味を示さなくなる
  • 1日中ぼーっとしている日が多くなる
取り繕い
  • もの忘れで失敗したことを取り繕うために、積極的に作り話をするようになる
  • 質問に対して曖昧な回答をする
実行機能障害
  • 朝の身支度や料理の手順にまごつき、以前よりも時間がかかるようになる
  • テレビのリモコンなど、頻繁に利用する電化製品の使い方が分からなくなる

中等度で見られる症状

「アルツハイマー型認知症は、中等度が最も大変」と言う人が少なくありません。足腰は元気なまま、徘徊と呼ばれる一人歩きをしたり、暴れたりするBPSDが最も出やすい時期であることが大きな理由です。この段階では、前頭葉からさらに変性が広がり、見当識障害も一歩進みます。現在の時間に加えて今いる場所も分からなくなるため、本人の混乱が一層大きくなる時期でもあります。介護者のケア次第で、心の落ち着きを取り戻すことは可能です。

中等度の状態で表れる代表的な症状は次の通りです。

見当識障害(時間・場所)
  • 真冬に半袖を着たり、真夏に長袖を着る
  • 道路を裸足で歩く
道具や手足が使えない(失行)
  • 食事が一人で食べられない
  • 着替えにも介助が必要
言葉がうまく使えない(失語)
  • 意味の通らない言葉を言う
  • 言葉が出なくなる
徘徊
  • 家の中を歩き回る
  • 外出した先から帰れなくなり、歩き回る
失禁・弄便
  • トイレ以外の場所で排泄をする
  • 排泄物が何か分からなくなり、便をいじってしまう

高度で見られる症状

高度のアルツハイマー型認知症は、寝たきりの状態へと移行する段階です。徐々に、脳内の大脳皮質の機能が広い範囲で失われていきます。最終的には「失外套症候群(しつがいとうしょうこうぐん)」と呼ばれる状態になります。これは、眼は動かすが、まぶたは閉じず、身動きひとつせず、言葉も発さない状態を指し、通常はこの状態になる前に肺炎や心不全等で亡くなります。

高度の状態で表れる代表的な症状は次の通りです。

失認
  • 長年連れ添った配偶者や、自分の子どもなど、身近な人の顔が分からなくなる
  • 視野に入る情報の半分が見えなくなるため、食事が並んだ際、右(左)半分だけ残す
表情がなくなる
  • 広範囲に脳機能障害が進んだ結果、話しかけても反応しなくなる
  • 表情を動かさなくなる
摂食障害
  • 嚥下障害等が進み、介助があっても食べ物を受け付けなくなる
  • 食べ方自体が分からなくなる
寝たきりになる
  • 歩行や、座位を保つことが困難になり、寝たきりになる
  • 寝たきりになることにより、症状がさら進んでしまう

接し方のポイント

同じことを繰り返し聞かれても怒らない
同じことを繰り返すのは、記憶障害による物忘れのためです。認知症の方は、「初めて聞いたのに怒られた」と思い、自分自身を否定された気持ちになります。また、感情の記憶は残るため、介護者に対し「この人は怒りやすい」と記憶されてしまいます。同じことを繰り返し聞かれても、否定はせず、別の話題に切り替えたりしましょう。

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断られても無理強しない
お風呂に入らない、食事を食べないという言葉をよく耳にします。ここで無理強いすると、介護者や行為そのものに悪い印象を持ってしまいます。断るのには、必ず理由があります。食事を食べないのも入れ歯が合っていなかったり、歯茎が腫れている等、口の中が痛いから食べたくないということもあります。断られた理由をまず考えてみましょう。

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孤独にしない、心の通った会話と人との関わりを増やす
初期の段階では、孤独な環境がうつに繋がることもあります。物忘れや見当識障害で一番とまどっているのは、ご本人です。「なんでここにいるんだろう?」「どこに行くつもりで車に乗ったんだろう?」と不安な気持ちは症状悪化の原因にもなります。介護者の温かい言葉や寄り添い触れ合う態度が安心感をもたらし、悪化を防ぐことにも繋がります。

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薬の服用時の反応を注意深く観察する(服用前からの変化があれば専門医に相談する)
薬による副作用の影響で、症状が悪化してしまう可能性があります。服用前までに見られなかった症状が服用後見られた場合は、早急に専門医へご相談ください。

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音楽を聴く、買い物に行く、等楽しめるリハビリを実施する
非薬物療法を実施することで、症状の改善や進行を防ぐことができます。リハビリを強要するのではなく、ご本人が楽しんでできることを一緒に見つけていくことも、寄り添う介護と言えます。

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