孤独を救うは、認知症を救う。株式会社こころみ代表・神山晃男さんインタビュー

【アイキャッチ】こころみインタビュー

孤独な高齢者ほど、認知症になりやすい――今年5月、孤独なお年寄りは、認知症や要介護になるリスクが通常より1.4倍という調査(日本福祉大等による)結果は記憶に新しいところです。ひとり暮らしのお年寄りが増える今、高齢者の孤独は、深刻な社会問題になっています。そうした中で、「高齢者の孤独・孤立をなくす」を理念に掲げ、一人暮らしのお年寄りを対象にした「会話型」見守りサービスを行っている企業が注目を集めています。今回は、株式会社こころみの代表取締役の神山晃男さんに、孤独と認知症の関係について、詳しいお話を伺ってきました!

一人暮らしのおじいちゃんの6人に1人が「月2回しか会話しない」

___孤独と認知症。なぜ関係性が深いと言われるのでしょうか?

まず、高齢者のどれ位が孤独を感じているかどうか、参考になるデータをお見せしますね。例えば、一人暮らしのお年寄りの会話頻度ってどれ位だと思いますか?誰とでもいい、電話でもコンビニでのちょっとした挨拶でもいいので、どのくらいの頻度で人と話をしていますか、という質問です。

___一人暮らしのお年寄りの会話頻度・・・1日に3回、とかでしょうか?

正解は、4割の人が2~3日に1回以下、という結果でした(2013年国立社会保障・人口問題研究所のアンケート調査により)。ほとんど毎日、家に閉じこもったきりのお年寄りが多いことが分かりますね。

さらに、注目すべきは男性です。16.7%、つまり6人に1人は2週間に1回以下しか話をしていません。女性の場合は、たとえ夫が亡くなっても家族や周囲とも対話する傾向があるのですが、男性の場合、一人暮らしになった途端、毎日話をする人の比率がガクンと下がります。

___2週間に1回!高齢者の孤独っていうのは、本当に、深刻なんですね。

仕事をしたり学校に通ったりしている立場からすると、信じられないですよね。けれど、孤独って本当に身体を蝕んでしまうんですよ。認知症も引き起こします。この状況は本当に恐ろしいことだと思います。

孤独が引き起こす「自分への過度の甘やかし」が認知症につながる

___孤独がなぜ、認知症を引き起こしてしまうのか、そのメカニズムに興味があります。

孤独感とは、危険を知らせる脳へのメッセージなんです。そのルーツは、昔、人類が一人では生きられなかった時代にさかのぼります。その時代では、群れから離れたり、集団に馴染めないことは、死を意味していました。その時代から、「一人でいると死ぬぞ!」と心の痛みとして緊急通報が鳴ることが、孤独感なのです。

___なるほど、でも今の時代は、孤独でも生きていけるはずですよね?

確かに、今は群れで行動する必要はありませんし、お金があれば衣食住に困ることはありません。けれど、今も昔の名残は残っていて、孤独を感じている間は、緊急通報がずっと鳴っている状態なのです。孤独を感じるとどうなるか。まず、孤独感という名の緊急通報がうるさいので、集中力が下がり、自己制御機能が低下します。実際に孤独感を覚えている人は、そうでない人に比べて筆記試験などの点数が著しくに低い傾向もあります。

___孤独が発端になって、自分をコントロールできなくなるのですね。

そうですね。また、孤独を感じると脳は緊急避難的な行動をとります。暴飲や暴食、運動不足、過剰睡眠といった、過剰な甘やかしをしてしまうのです。自分をコントロールしにくい状態なので、短絡的に身体が欲するものを得ようとし、規律のない自堕落な生活になるんですね。そうすると、身体に負担がかかり、細胞が傷つく。当然、認知症にも大きく影響を及ぼします。

___孤独と認知症の因果関係がよく分かりました。

さらに怖いのは、孤独は慣れてしまうということです。慣れると、孤独を強化する負のスパイラルが起こります。

▼孤独な状態
▼不健全な生活
▼駄目な自分という認識
▼社会による消極姿勢
▼孤独な状態

・・・という具合です。

孤独のスパイラル図
孤独な状態が、自堕落な生活を招き、自己嫌悪で他人に会いたくなくなる…まさに負のスパイラルです。

「会話」がもたらす、認知症への効果とは?

___孤独の負のスパイラルから抜け出すための方法はあるのでしょうか。

このスパイラルは、とても強固なんです。なかなか、自分の意志だけで抜け出すことは難しいでしょう。現実的にできるのは、次の2つだと考えています。

  • 生活リズムを取り戻すことで健全な生活にする
  • 自己認識を高めることで、駄目な自分だという認識をなくす

例えば、仕事、趣味、スポーツ、恋愛など、生活リズムを整えながら自己認識を高める方法は色々あると思います。

___御社が提供されている、ひとり暮らしの高齢者向け・会話型見守りサービス『つながりプラス』も、お年寄りの孤独を無くすことを目的に始められたと伺いました。

そうです。僕自身、孤独な高校時代を過ごして、孤独の辛さは身をもって体験しているので…。弊社のサービス「つながりプラス」も、お年寄りとの日常のお電話のなかで、少しずつ自己認識を高め、リズムのある生活を導くお手伝いをしています。自分の話を誰かに聞いてもらうことは、「自分はこのままでいいんだ」という安心につながり、自信がつくものなんです。

___会話を通して、自信が身に付くのですね。認知症のお年寄りもサービスの対象なのでしょうか?

もちろんです。サービス内容の特性上、お電話で会話ができることが条件になってしまうので、軽度の認知症の方が中心ですが、実際に何人もご利用いただいています。例えば、認知症を発症してから無口になり、家族も半ば会話することをあきらめかけていたおばあさんがいました。毎週2回、電話で他愛もないお話を続けていたところ、家族との会話も増え、娘さんから「母がこんなに笑うのは久しぶりに見ました」と言っていただいたこともあります。

日常会話のなかで、認知症の傾向が分かるサービスも!

___御社のサービスに、日常会話の中で認知症の傾向を把握するものがあると伺いました。

はい、『認知症早期発見レポート』ですね。ご本人にいっさい気づかれることなく、お電話での日常会話の中で、認知症の傾向を把握・判断するというものです。認知症専門医の監修のもと作成された、認知症早期発見スケールに基づいた質問とその反応の観察を行って、認知症の傾向を家族に知らせるレポートを毎月お送りする、というものです。

認知症早期発見レポート

___認知症の具合をチェックする、決まった質問リストのようなものがあるのでしょうか?

いいえ、あくまで“対話”の中から、認知症の傾向を判断するものなので、定形の質問項目はありません。日常会話を通して、「家事・身辺整理の自立度」「意欲や周囲との交流はあるか」、「会話が成立するか」、「記憶力はあるか」、「見当識はあるか」といった5つの視点で、質問と観察を継続的に行って、結果を点数化します(25点満点)。認知症の初期症状を把握することができ、お医者さんに診てもらうタイミングの適切な把握が可能となります。

___認知症の検査を嫌がられる方も多い中で、自然な流れで認知症の傾向がつかめることは、家族にとっても嬉しいですよね。実際に使われてみた利用者さんの反応はいかがですか?

「毎月レポートが届くので、変化が目に見えて分かりやすい」という声をいただきます。一般的に、一度もの忘れ外来に行っても、次に行くのは数年後で、その間に症状が悪化してしまう…というケースが多いです。その点、毎月継続してスコアを記録するので、どの項目で変化があったか把握しやすいということだと思います。認知症は、ご家族からは切り出しにくいテーマです。弊社のサービスが、より適切なタイミングでの認知症発見と対応に貢献できると嬉しいです。

認知症早期発見レポート
認知症早期発見レポートの一部。毎月コメントと一緒に、グラフで分かりやすくレポートが届きます。

___さいごに、サービスを展開される上で、大切にされていることを教えてください。

弊社は、高齢者を対象にしたサービスを行っていますが、大事しているのは、「高齢者を高齢者扱いしない」ということです。時々、世の中は「お年寄りになる」ことを「お年寄りという別人になる」ように扱っているように感じることがあります。例えば、大人相手に敬語でも、おじいちゃん相手には突然タメ口になったりします。弱いものとして扱われることに、お年寄りは敏感です。私たちは、お年寄りを一人の人として、過去に培ってきた経験に敬意を払い、その経験に裏打ちされた判断を尊重する。当たり前のことですが、そんな当たり前のことを守れるサービスでありたいと考えています。

★今回お話を伺った方

神山様プロフィール画像
株式会社こころみ 代表取締役社長
神山晃男(かみやま・あきお)さん

1978年5月12日生まれ 長野県伊那市出身
慶應義塾大学法学部政治学科卒業

10年間、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに勤務。コメダ珈琲店、ウイングアーク1st等を担当。2013年6月に株式会社こころみを設立、2014年2月には高齢者向け会話型見守りサービス「つながりプラス」を開始。「コミュニケーション」と「高齢者マーケティング」の専門家として数々のセミナーや勉強会に出演中。2014年10月より「日常会話形式による認知症スクリーニング法の開発と医療介護連携(代表研究者:佐藤眞一大阪大学大学院教授)」の共同研究者に就任。2014年11月より「介護のほんねニュース」公認パートナーとして、超高齢社会問題やコミュニケーションに関する記事の寄稿を開始。
Twitterアカウントは、@akiokamiyama

株式会社こころみ 企業サイト

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認知症ONLINE 編集部

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