認知症だっていいじゃない ~ものがたり診療所もりおか・松嶋大の認知症コラムvol.1~

by 松嶋 大松嶋 大 28857views
【アイキャッチ】松嶋先生コラム認知症だっていいじゃない

自問自答してみてください?

「あなたは認知症を差別していないと自信を持って言えますか?」

かくいう私は差別していないつもりです。でも、無意識に、いやどこかで差別している自分を否定できません。差別しないことは大切です。ただし、同じくらい重要なことは、差別していないかどうか自問自答する姿勢ではないでしょうか。

さて、申し遅れました。私は松嶋大です。ものがたり診療所もりおかで認知症診療と在宅医療に深く関わっています。診療所名には、患者さんと私たちのそれぞれの物語を大切にしたい、一緒に物語を紡いでゆきたい、そういう願いを込めています。

私は、認知症を患いながらも力強く、精一杯生き抜いている人、そしてそのご家族をたくさん存じ上げています。そこで、私は今後、物語や在宅医療の視点からみた認知症について、皆さまに定期的にコラムをお届けしようと思います。
初回の今回は、私が日々大切だと思っていることをご紹介します。

バカになってしまった!?

「先生、すっかりバカになってしまったよ・・・」
もの忘れを自覚する認知症の方々がよく口にされる言葉です。この語りの背景には、「認知症≒バカ」という方程式があるようなのですね。
念のため「馬鹿」を辞書で調べてみました。広辞苑によると「おろかなこと。社会的常識に欠けていること」とあります。いかがでしょうか。あえて意味など調べる必要もありませんよね。認知症は当然「馬鹿」ではありません。

花粉症や脳卒中の人を差別しますか?

認知症は病気です。

例えば、花粉症で鼻水を出している人を差別しますか?
「おいおい、なんでそんなに鼻水を出しているんだ!バカじゃない!?」なんて言わないですよね。
あるいは、脳卒中で麻痺になった人を差別しますか?
「なぜ手が動かないんだ!気合が足りないぞ!」なんて怒らないですよね。
認知症だって同じ。高血圧が血圧の高い病気、糖尿病が血糖の高い病気のごとく、認知症はもの忘れの病気。ですから、認知症を差別すべきでも、馬鹿にすべきでもありません。

認知症は特別な病気ではない 〜長寿国・日本では当たり前の病気〜

 
認知症は全く特別な病気ではありません。誰だってなりうる、実にありふれた病気です。 このご時世、高齢者の7人に一人が認知症を患います。そして、長生きすれば誰でもなりうる病気です。というのも、認知症の最大要因は加齢、つまり長生きなのですから。
世界に冠たる長寿国の日本。長生きが認知症の最大要因とすれば、認知症にならないためには「認知症になる前に死ぬしかない!?」と笑い話ともいえない話も浮上します。

誤解のないように。早死にを奨励していませんよ。私が申し上げたいのは、要するに認知症は特別な病気ではないということです。だから何度でも言います。認知症を差別している場合ではありません。

認知症の人を悪者にしないで!

お願いです。認知症の人を悪者にしないでください。
すぐに忘れたって、少し強い口調になったって、あちこち迷子になったって・・・、認知症の人が悪いわけではないのですから。もし、何かが悪いとすれば、それは認知症という病気、さらにいえば認知症を差別視する社会の風潮ではないでしょうか。

さらに私は、認知症は社会的に過剰に祭りあげられた病気という見方もしています。メディアからは連日のごとく「認知症のこと」「認知症の人の事故」などが流れ、認知症が重大な病気であるイメージがどんどん社会的に構成されています。そして、認知症の人があたかも悪いかのごとく・・・。でもでも、認知症の人が悪いわけじゃないんです。みなさま、どうぞ、認知症の人を悪者にしないでくださいね。

まずはココから始めよう!

認知症への差別や偏見が、本人や家族をどれだけ孤独に追い込んでいるかに注目しましょう。誰にも相談できず、一人で不安になっている方々がたくさんいます。カミングアウトすれば恥ずかしくなる、差別されるんじゃないか、馬鹿にされるんじゃないか・・・、そういった恐怖や不安があり周りに言い出せない。そして孤独に悩んでいく。そういう悪循環です。

だからこそ差別しない。ココからはじめませんか!
認知症の人、そして認知症そのものを温かく受け止める周囲と地域。もちろん差別も偏見もない。そのような社会が今後求められているように思えてなりません。
  

人間だもの、そりゃあ病気の一つや二つなりますよ。
もちろん、私だってなります(早死にしなければ)。
だから、認知症だっていいじゃない!
 

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松嶋 大

松嶋 大

ものがたり診療所もりおか 所長。ナラビットホールディングス株式会社 代表取締役。一般社団法人もりおかナラティブ勉強会 理事長。岩手県盛岡市生まれ。医学博士。2000年岩手医科大学医学部卒業。同年、自治医科大学地域医療学教室に入局。自治医科大学病院総合診療部での初期研修を経て、新潟、岩手、沖縄で地域医療に従事。2009年自治医大大学院卒業。藤沢町民病院などを経て2015年4月より現職。自治医大臨床講師を兼任。専門は総合診療。認知症と在宅医療を得意とし積極的に取り組んでいる。また2012年もりおかナラティブ勉強会、2015年にナラビットホールディングス株式会社をそれぞれ創業し、医療福祉介護に関わる様々な事業を展開している。
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