相続のこと、親が認知症になったらどうすればいい?

by 芳賀 由紀子芳賀 由紀子 4082views

あなたは、親の相続なんてまだまだ先のことだとは思っていませんか?
もちろん、いつまでも親が元気で長生きしてくれればそれにこしたことはありません。しかし、人間必ずいつかは死ぬものです。悲しいことですが、あなたの親もいつかは亡くなり、その場合には相続が発生することになります。そして、親が認知症になった場合には、とくに、相続において注意しておきたいことがあります。

重要なことは、聞けるうちに聞いておく

あなたが親の身の回りのことをすべて把握できていれば別ですが、一般的には、本人から聞かなければ、親がどのような生活をしていて、何を所有していて、それがどこにあるのかを逐一調べることはとても困難です。親が亡くなった後に、預金通帳や印鑑が見つからず、どの金融機関に口座があるのかが分からず苦労した、という話はよくあることです。また、借金があることが判明して大慌てすることになった、という話も聞きます。
まだ身の回りのことが分かるうちに、親に相続の対象となる財産にはどのようなものがあるのか、どこにしまってあるのか、それをどのように親族に分け与えたいかについて、聞いておいたほうが無難でしょう。

認知症の状態で書かれた遺言書は、もめる原因に

また、財産をどう分け与えたいかについて、遺言を書いてもらう場合にも注意が必要です。親が認知症になり、その症状が進行し、自分の行為の結果を判断できない状態に陥ってしまえば、遺言書を作成してもらうことなくなります。すなわち、法的効力のある遺言をするためには遺言能力が必要となりますが、認知症が進行し、自分の行為の結果を判断できず有効な意思表示ができなくなった状態では、原則として遺言能力があるとは認められず、そのような状態で書かれた遺言は無効となってしまうのです。
よって、認知症になる前に、親に遺言を書いてもらうことが最良といえるでしょう。

認知症でも遺言書を作成できるのか?

親が認知症になってしまった後に、「どうしても遺言書を作成してもらいたい!」という場合はどうしたらよいのでしょうか。
まず、認知症が進行し、事理弁識能力を欠く常況にあるとして後見人がついている場合は、一時的に判断能力が回復したときに医師2人以上の立会いのもと一定の方式に従うことで遺言をすることができると法律で認められています(民法973条)。
しかしながら、この遺言手続きはかなり厳格で、この方式にしたがう遺言は極めてめずらしいといえます。

次に、認知症がそこまで進行しておらず、きちんと自分の行為の結果を判断でき、有効な意思表示ができる状態であるのであれば、医師にその旨の診断書を書いてもらったうえで、公証役場で公証人に公正証書遺言を作成してもらうという方法が考えられます。
しかし、認知症の状態で書かれた遺言書は、その有効性をめぐって紛争となりやすく、万全を期したつもりでも、不信感を抱いた一部の親族から不満の声があがり、親族間で長きにわたり裁判で争われることもめずらしくありません。

家族間でもめているイラスト

いずれにしても、深刻な相続争いを招かないためには、相続のことについては早い段階からきちんと考え、対策を講じておいたほうがよいでしょう。「自分の親族は仲が良いから大丈夫」「財産はないから心配ない」などと考えずに、一度真剣に相続のことについて考えてみることをお勧めします。

【参考図書】

The following two tabs change content below.
芳賀 由紀子

芳賀 由紀子

弁護士。大学卒業後JRに入社。法務室に配属され自分のアドバイスで人が笑顔になることに喜びを感じ,一念発起して弁護士を目指す。法科大学院在学中は特待生として授業料免除を受け,その後司法試験に合格。弁護士になってすぐに経験した遺産分割事件で,親族間の凄まじい紛争を目の当たりにし,相続問題に関心を持つようになる。日々の業務の中で多数の相続案件を取り扱うとともに、「ベスト・クロージング」(有限責任事業組合)において、分野の異なるスペシャリストと共に相続&終活のサポートを行う。NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク所属。著書に「遺言書作成のための適正な遺産分割の考え方・やり方」(同文舘出版)。その他、共著多数
介護のお仕事

Facebookコメント