認知症の母親に料理が効果的だった話

【アイキャッチ】料理

料理活動は高齢者にとって、生活の中で繰り返されていたなじみのある作業である。できる限り自立して料理をつくることは、高齢者の生活の自立を促し、介護予防にも有効である。また、多くの工程・作業を含む。このため、各人の能力に応じた役割分担が可能である。このことは、日常生活における「役割」を再認識し、「自信の回復」につながる。また最近脳の前頭前野の働きを活性化することが明らかになっており、これらのことから、認知症の周辺症状の緩和効果も期待されている

これは認知症の非薬物療法のひとつで、「料理療法」と呼ばれています。認知症になったうちの母は、元々仕事も料理、趣味も料理で、母の父もシェフという料理と共に生きてきた人です。特に料理療法を意識したわけではないのですが、結果として料理が認知症に有効というお話をします。

認知症でも変わらない「美味しい料理を食べさせたい」という母の気持ち

「遠くに住む独居の認知症の母にとって、大切なものは何ですか?」

そう質問されたら、定期的な通院やお薬という回答が多いのではないでしょうか?確かにどちらも大切なんですが、わたしの回答は「料理をしてもらうこと」です。

息子においしい料理を食べさせたいという気持ちは、子育て真っ最中の頃も認知症になってからも変わっていません。億劫になって外出がイヤだ、お風呂に入りたくない、こういう事はよくあっても、料理だけは頑張ってやります。

なぜそんなに頑張れるのか?というと、母としての役割だとわたしは思っています。自分のためだけに料理をするのではなく、誰かのために作ってあげるという事で、自分の役割を再認識していますし、さらに母としての自信にもつながります。認知症になっても、母の役割は果たしたいのです。

介護する者として、お薬をきっちり飲ませる事はとても大切なんですが、わたしは役割を与えることはもっと大切だと思っています。だから通いの遠距離介護をして、料理を作ってもらっています。

固い大根、皮付きの人参

料理を頑張ってはいますが、豊富だったレパートリーは忘れてしまって全盛期の半分もありません。味付けも不安定ですし、煮物の大根は固くてガリッ、人参の皮をむき忘れることもあります。それでも、できる料理、扱える食材をヘルパーさんに揃えてもらっています。

できない事も増えましたが、まだできる事もあります。できる範囲で好きに料理をしてもらっています。固い大根があったら、本人に感想を聞きます。皮つきの人参も見せますが、文句だけは言わないようにしています。食えない、まずいとは決していいません。本人のプライドや自信を傷つけない配慮をしています。おいしい時は、思いっきり褒めるようにしています。

料理を続けることで見えはじめた母の変化

デイサービスでは料理リハビリをやってもらっています。これも社会的役割を持たせるためにやっているのですが、最近ではだいぶ飛躍して、自分がデイサービスの調理職員として働いていると思っています。つい先日は、新しく通い始めた病院の先生から調理要員としてスカウトされたと言い出しました。これは母の妄想ですが、ポジティブな方の妄想なので、聞く方も楽しく聞けます。

母は長年寮母をやっていて、全国から集まってくる男性社員に対して、料理を作っていました。おいしい料理を作って喜ばれる事が何よりも楽しく、自信となっていました。その頃の感覚を、調理リハビリをすることで取り戻した結果、いい妄想になっているんだと思います。

認知症が進行するとできない事は増えますが、簡単な調理をすることで昔を思い出して生活に活力を取り戻したり、自信がついたりするという実例です。

今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどひろ)
1972年生まれ。ブログ「40歳からの遠距離介護」など執筆を生業にする介護作家・ブロガー。祖母(要介護3)と母(要介護1)のW認知症&遠距離介護からスタート。父(要介護5)も在宅介護して看取る。成年後見人経験者、認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。現在も東京と岩手を年間約20往復しながらしれっと遠距離介護中。

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