3年前の、とあるスーパーでのこと。
買い物をしていると、なにやら不穏な空気が。
視線を向けると、そこにはご高齢の夫婦が1組。周りの人は冷たい目で見ている…その理由は、奥さんが地べたに座り込んで、野菜の袋をバリバリ開けていたから。
そんな奥さんを、ご主人は優しくたしなめている。
パート店員さんらしき人は慌てて社員を呼びに行った。
私はその光景を見ているだけでは我慢できず、
咄嗟にご主人に近寄った。
気づいたら言葉が口から出ていた。
「お手伝いできることはないですか?」
もうひとり、買い物をしていたであろう女性の方もその様子を見て一言。
「わたしもお手伝いしますよ」
ご主人は
「すみません、すみません」と何度もすまなそうに、頭を下げられた。
私は奥さんの方にむきなおし、女性の方はご主人についた。
野菜の袋を開けている奥さんに向かって、「今晩のおかずは何を作りましょ?」と声をかけた。
その人は一瞬キョトンとした顔をした。
そのあと、私を見てにっこりしながら
「あんた何が食べたい?」って…
そのときご主人は、野菜を拾い集め買い物かごに入れようとしていた。
もうひとりの女性は、「奥さん、ご主人と2人家族?たくさんの野菜やから、私にも少し分けてもらえるかしら?」って。
地べたに座り込んでいた奥さんは「はい、どうぞ」って気前よく分けてくれた。
パート店員さんは、その様子をしっかり見守っていて下さった。
社員さんは「お買い忘れはないですか?こちらのレジにどうぞ」って優しく声をかけてくれた。
4人でレジまで進んだ。
何もなかったかのようにそのご夫婦も並ばれた。
奥さんはスーパーの袋の中の茄子やししとうを見ては嬉しそうな顔をご主人に向けていた。
店を出て、ご主人は私たちに頭を深く下げられた。
「申し訳ない、おたくらの親切に甘えてしまいました。」
もうひとりの方は、
「私もうちに大変な(認知症のある)おばあちゃんが居てましてん(ゝω・)こんなんはお互いさまですやん。」って。
私は何も言えなかった。
奥さんと茄子や野菜たちを見つめて、ただ側に立っているだけだった。
同業者であろう人も中には居た。
事業所の制服を来たヘルパーらしきその人は、さっと名札を隠した。
身につけていたオレンジリングが悲しくみえた。
さいごに
今、日本中で「認知症になっても伴(とも)に」のスローガンのもと、オレンジのタスキを繋ぐマラソンが行われている。みんなが助け合いの気持ちを忘れずに持っていれば、オレンジのタスキは必ずつながって行くと信じています。
すごく特別に映っちゃうけれど、いつの日にか特別な事じゃ無くなりますように(@^▽^@)

山川洋子

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