疑似体験から「理由」を探る〜あえて余地を残すという発想〜

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【これだ!と決めてしまわない】
「皮膚がかゆい」とどうするか?

かゆいところをかく。
塗り薬を買いに行こうとする。
塗り薬を塗ろうとする。
「かゆい」と訴える。
お風呂に入りたがらない。
イライラして周囲にあたる。
寝る。
服を脱ごうとする。

そしてこれらの行動から
逆にかゆみを探り当てる力も介護力のひとつ。
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求められるのは「逆引き辞典」のような観点

わたしたちは、人の行動を理解しようとする時、多くの場合、「自分ならどうするか?」ということに引き当てながら考えます。例えば、上述のように「皮膚がかゆければどうするか?」という問いには、「自分ならどうするか?」と考えて答えるでしょう。

しかし、「認知症」がある人を介護するわたしたちに求められることは、上述の例で言えば、「お風呂に入りたがらないのはどういう時?」という問いに「かゆみがある時」と答えられる観点をもちあわせることです。

つまり、逆引き辞典のように、行動から理由へと逆に発想を広げるのです。そこでバリエーションに富んだ想像ができているなら、それはとても素晴らしいことです。

相手の世界を疑似体験する

「すべての言動には理由がある」といいますが、その人の言動から理由を探るためには、どんな方法があるでしょうか。わたしの場合は、その人が体験している世界で、その人が見るもの、聞くもの、匂うもの、触れるもの、味わうものを可能な限り疑似体験するようにしています。

可能であれば、その人と同じ場所に行き、同じ場所に座り、同じ動作をするようにします。それができない場合は、その人の背景や心身状況、環境などを頭に置きながら、目を閉じてその場所で同じ言動をするところを想像してみるのです。

そして、「こんなものが見えればあれをするな」「こういうやり取りが目の前であったらこれをするな」「こんな身体の調子ならああいう言い方をするな」という具合に、まさにその言動が生まれる理由(きっかけ)を探るようにしています。

「理由」は一つとは限らない

疑似体験から想定する「理由」はあくまでも想定に過ぎませんが、最適なケアを導きだす上ではとても貴重な材料になります。しかし、ここで重要なことは、「理由はこれだ!」と決めてしまわないことです。

  • Aかもしれない
  • Bかもしれない
  • Cの可能性だってある
  • Dもあり得るかもしれない

コミュニケーションでは「間(ま)」が大切なように、仮説を立てた関わりでも「余地」は大切です。90%の確率で理由が特定されていたとしても、常に「他にもあるかも?」という余地を残すことで、観察する目も偏らずに様々な角度から見ることができるようになります。

おわりに

今回、ご紹介した疑似体験は、文字にすると伝わりにくいところがありますが、最近は、VR(バーチャルリアリティ)技術を用いて「認知症」をもつ人の体験を疑似体験する『VR認知症』というツールも存在します。わたしも体験しましたが、想像力が豊かになりますので一度は体験をしてみてほしいと思います。

【関連記事】VR認知症体験会は社会を変える!【VR認知症体験レポート】

それ以外にも、相手目線で物事をとらえる想像力を鍛えるためには、小説を読むことも有効です。昨今は、研修でも動画や写真などわかりやすいもので示されることが多くなりましたが、逆に想像力を奪っている可能性を示唆する方もいらっしゃいます。豊かな想像力は、理由を探る上では欠かせない能力の一つですので、育んでいきましょう。

【関連記事】認知症介護小説『その人の世界』全編

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ペ ホス (裵 鎬洙)
アプロクリエイト代表 コーチ/人材課題コンサルタント 「理由を探る認知症ケア」マスタートレーナー コミュニケーショントレーニングネットワーク講師 介護福祉士・介護支援専門員・主任介護支援専門員 【略歴】 兵庫県在住。訪問入浴介護、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハ、通所リハ、訪問介護、介護老人保健施設等に従事。コミュニケーショントレーニングネットワークにて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、関わる人の内面の「BE(あり方)」が”人”や”場”に与える影響の大きさを実感。その学びと約20年の現場経験を活かした研修・指導には定評があり、これまでの参加者はのべ10,000人を超える。著書に「理由を探る認知症ケア~関わり方が180度変わる本~」がある。毎日新聞・医療プレミアでも連載中。

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