認知症の症状の一つに、つい人の悪口を言ってしまうというのがあります。温厚だった母(73歳・要介護1)も、認知症になってから悪口を言う回数が増えました。
この場合の介護者の対応として本などに書いてあるのは、傾聴する、話題を変える、認知症の人の意見に同調するというものです。すべて試してみたのですが、数回なら効果はあるものの、長期で実践できる対処法ではありませんでした。

と悪口を言う母に同調してしまうと、わたし自身がストレスを感じるようになりました。悪く思っていない人を悪く言うのは、気分のいいものではありません。じっくり悪口を聞くのも無理でしたし、話題を変えても、翌日また同じ悪口を繰り返すためうまくいきませんでした。何かいい手はないかと考え、ある方法で母と接してみることにしました。
悪口にポジティブな回答をぶつけてみる
母が悪口を言う相手は、初めて会う介護職が多いです。新しいヘルパーさんに対して、「なんか、あの人好きになれない」、「言い方がきつくて、怖い」と言います。わたしはヘルパーさんとも関係を密にしているので、そういう方々でないことは分かっています。そこで、わたしはこう答えるようにしました。



少し話を盛って言うこともありますが、母の悪口に対して自分のポジティブな回答をぶつけてみることにしました。母を否定しているわけではありません、自分の意見を母に伝えているだけです。ポジティブな回答なので、わたしは自然と笑顔になっています。
ある日、母に変化があらわれた!
このポジティブ回答を、1か月、半年、1年と繰り返しているうちに、母にある変化が起きました。

100回の悪口に対して、100回のポジティブ回答をしてみたら、悪口が消え、褒め言葉に変わっていたのです。わたしが洗脳しているようにも見えますが、母が悪口を言う時の邪悪な表情を見る必要がなくなっただけでも、意味がありました。
認知症の人は、怒りや悲しみといった感情よりも笑顔は最期まで認識できると言いますが、きっとポジティブなやりとりを続けた結果、わたしの笑顔を読み取って、記憶として定着してくれたのかもしれない・・・そう感じました。
【関連記事】認知症の人が最期まで衰えない「能力」のはなし
5年近くこの方法を実践していますが、対象となる方を信頼して好きにならないとうまくいきません。無理にポジティブ回答をすると、自分が疲れて長続きしません。自分に嘘をつくと、疲れます。
今日もしれっと、しれっと。
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