見えないけど気づいてほしい「理由」〜「口の中の違和感」編〜

見えないけど気づいてほしい「理由」〜「口の中の違和感」編〜

************************
【自分がそうする時はどんな時?】
「口の中の違和感」をどう表現するか?

食べない・飲まない。
入れ歯を外す(入れない)。
しゃべらない。
歯磨きをしたがらない。
やたらと口をゆすぐ。
病院に行こうとウロウロする。

これらの表現を受け取る力も介護力のひとつ。
************************

行動から体験を逆に想像する

ケアの相談を受けるとき、わたしは利用者本人の言動をより詳細にイメージできるように、仕草や表情、セリフや周囲の状況などを具体的にきかせていただきます。

  • その時、本人がいた場所、周囲の状況(人、物、出来事)
  • その時、本人が見ていたもの
  • その時、本人に聞こえていたもの
  • その直前の本人とのやりとり等

 

その時の本人が体験したであろうことを想像し、自分が同じ状況で、同じ行動をとるところをイメージしてみます。そのようにイメージしながら「同じ行動をとるときはどんな時だろう?」と、本人の思いや考えを想像してみるのです。

こうした作業を繰り返していると、今回例示したような行動から「口の中の違和感」などの理由を推測できるようになってきます。そうなると利用者の言動からサインを読み取る感性や想像力が豊かになっていくのです。

「口の中」の確認はおろそかになりがち

例えば、今回例示したような行動であれば、まずはじめに、どのような理由を推測するでしょうか。

  1. 食べない・飲まない = 意欲が低下している?
  2. 入れ歯を外す(入れない)= 入れ歯があわない?
  3. しゃべらない = アパシー(無気力)?
  4. 歯磨きをしたがらない = 介護拒否?
  5. やたらと口をゆすぐ = 意味のない行動?
  6. 病院に行こうとウロウロする = 徘徊?

2番目の「入れ歯を外す(入れない)= 入れ歯があわない?」は、口の中の違和感として想像しやすいところですが、それ以外はなかなか最初に「口の中の違和感」は推測しにくいですよね。

そして、理解力の低下、意欲の低下、介護拒否、意味のない行動、徘徊など「認知症」から連想しやすい解釈をしがちなので、あえて、「認知症」以外の解釈を働かせるのです。

「口の中の違和感」にはどのようなものがあるか?

ちなみに、「口の中の違和感」にはどのようなものがあるでしょうか?

虫歯がある、被せものが外れている、グラグラして抜けそうな歯がある、噛み合わせが悪い、歯槽膿漏がある、入れ歯が痛い 入れ歯が外れやすい、口内炎がある、舌を噛んでしまって痛い、食べかすが歯間に挟まっている、口の中が粘ついている、口の中が乾いている、口の中がかゆい、口の臭いが気になる、舌の動きが鈍くなっている・・・等

いかがでしょうか? 他にも「口の中の違和感」はまだまだありそうですが、例えば「虫歯」や「口内炎」や「食べかす」等の経験は一度や二度はあるでしょうから、想像しやすいでしょう。

「食べかす」を取るためのつまようじがなければ、

  • 口に指をつっこむ
  • とがったもの(箸、串、フォーク等)をつっこむ
  • 水分(場合によってはお味噌汁?)で口をゆすぐ
  • ずっと舌を動かしている

といった行動をとるかもしれません。あるいは、歯の間にものが挟まりやすくて、すぐにいつでも「ペッ」と出せるように、やたらとティッシュを集めて、肌身離さず持ち歩くということもあるかもしれません。そう考えると、「口の中の違和感」は思った以上に大きく影響すると言えるのではないでしょうか。

さいごに

わたしが理由を探る時に心がけていることは、「なんでもかんでも“認知症”で理解してしまわない」ということです。すべての言動が“認知症”に決定づけられているわけではないし、今回示したような「口の中の違和感」は、わたしたちであっても行動に影響する要素なのですから、そうした想像力を働かせずにいると、相手の行動から理由を察知する感性は磨かれません。

次、利用者の行動の理由がわからないことがあれば、「自分が同じ状況で、同じ行動をとる時は、どんな時だろう?」と想像してみるようにしましょう。(最低でも3つ、考えられる理由を想像してみることをおススメします)

The following two tabs change content below.
裵 鎬洙
コーチ 認知症ケアスーパーバイザー コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)講師 介護支援専門員実務研修・専門研修講師 【略歴】 1973年生まれ。兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後は介護施設で相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、関わる人の内面の「あり方」が ”人”や”場”に与える影響の大きさを実感。介護に携わる様々な立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の⼤切さを発見する研修やコーチングセッションを提供。著書『理由を探る認知症ケア~関わり方が180度変わる本~』。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。
介護のお仕事

Facebookコメント