今さら聞けない新オレンジプラン!見えてきた課題とは

オレンジプラン アイキャッチ

2015年に厚生労働省が発表した新オレンジプラン。名前はよく耳にするけれど、詳しくは知らない…という方も多いのではないでしょうか。今回は、新オレンジプランの内容と、開始から数年経って見えてきた課題について、解説します!

新オレンジプランがはじまった背景

高齢化の進む日本で、認知症を持つ高齢者の数は加速度的に増えています。厚労省は、認知症高齢者が今後も増え続けると見越し、2012年に認知症施策推進五カ年計画、通称「オレンジプラン」を示しました。目的は、「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現です。

当時想定していた2025年時点での認知症高齢者の人数は470万人。しかし、高齢化の進展に伴い、認知症の人はさらに増加し、予測数は700万人に増え、「新オレンジプラン」に修正されたのです。

オレンジプランと旧オレンジプラン認知症高齢者数の推移予測比較(厚生労働省発表の統計データより作成)

従来のオレンジプランとの違い

従来のオレンジプランも、目的は認知症を持つ人が暮らしやすい地域づくりという点では新オレンジプランと同じです。施策内容は下記の通りです。

  • 標準的認知症ケアパス作成と普及
  • 認知症の早期診断と早期対応
  • 地域生活支援のための介護サービス構築
  • 地域における日常生活と家族への支援強化
  • 若年性認知症施策
  • 医療・介護サービスの人材育成

全体像を見渡すと従来のオレンジプランでは「認知症の人をいかに支援するか」という介護者医療者視点が中心で作成されており、肝心の当事者が抜け落ちているのがわかります。そこで、新オレンジプランでは「認知症の本人とその家族の視点」を重視する形で改変されました。

新オレンジプランの7つの柱

オレンジプランから引き継いだ内容も含め、新オレンジプランでは、認知症の人とその家族が住み慣れた場所で暮らせる「やさしい地域づくり」を掲げ7つの柱を公開しました。

1.認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進

全国的な広告キャンペーンや認知症サポーター養成講座の積極開催により、国民の理解を深めます。認知症サポーター数の目標値も800万人へと上方修正がなされました。
【関連記事】認知症サポーター要請講座とは?

2.適時・適切な医療・介護等の提供

認知症の容態に合わせ、もっともその人にふさわしい場所と内容の医療・介護が提供されること。MCIに関する理解と啓発を進め、相談窓内の充実と地域住民による気づきが得られる体制づくりが進められます。

3.若年性認知症施策

若年性認知症の対する知識と理解の啓発、特に当事者となる方に対して、早期の受診や変化への気づきを持っていただくことを目的としています。
【関連記事】若年性認知症の基礎知識

4.介護者への支援

認知症の人とその家族による情報共有や知識獲得・繋がりの構築を目的とした認知症カフェ設置を進めます。また、認知症初期集中支援チームによる早期の診断・対応により、家族介護者の負担軽減を図ることとなります。

5.認知症の人にやさしい地域づくり

サ高住や有料老人ホームといった住まいの多様化による選択肢の充実、地域による見守り体制の構築、生活上のリスクとして考えられる「消費者被害」の防止と権利擁護を徹底して行うことで住みやすいまちづくりを行います。

6.予防・診断・治療・リハ・介護モデルの研究推進

認知症そのものは未だ「わかっていない」ことが多くあります。なぜ認知症が発症するのか、症状を改善するために何が効果的かについてさらに研究が推し進められています。また、認知症の人が自身の生活をより良くするために、そして家族の負担軽減や介護の質を上げるためのロボット活用・AI・ICT・IOTを活用した機器の研究開発も行われます。

7.認知症の人や家族の視点の重視

認知症の人やその家族が現在どんな生活を送っているのか、また、その中でどんな工夫がされているのか。そこから導き出される必要な施策は何かを模索します。オレンジプランと比較して、当事者や家族が主体として参加する点が大きなポイントとなっています。

開始から2年で見えてきた課題

新オレンジプランが始動する中で、いくつかの課題も見えてきました。

認知症初期集中支援チームが浸透していない

まず挙げられるものは「認知症初期集中支援チーム」が普及していないというポイントです。2018年度までに全国で設置するとされている集中支援チームですが、社会に浸透しているとは言い難い状況です。このシステムの対象者は40歳以上の在宅者であり、認知症が疑われる人もしくは認知症の人で医療・介護サービスを受けていない等の条件が必要になります。認知症の人と家族の会からも2016年にその旨が指摘されています。

認知症カフェの運営難

そしてオレンジプラン時代から引き継がれている認知症カフェの運営についても課題が残ります。多くはNPOや介護事業所、地域包括支援センター、地域の有志によって運営されているカフェですが、その運営については必要資金の持ち出しが発生するなど、困難な状況となっているカフェも存在しています。平成26年度には厚労省の「認知症地域支援・ケア向上事業」予算案が15億円から26億円に増額され、認知症カフェもその対象となる旨が記載されています。

また、認知症カフェについては、「本当に困っている家族ほどカフェに参加する余裕がない」「カフェ開催のアナウンスが難しい」などの声も聞かれており、地域に即した運営方法が各地で模索されています。
【参考記事】3分で分かる認知症カフェ。どんな場所?参加メリットは?

精神科医療への依存度の大きさの懸念

最後に、最も大きな課題として挙げられるものが「認知症の人=精神科への入院」という文言が当然のように記載されている点です。これは、精神科医との連携が強調されているとも読めます。新オレンジプランは認知症の人が自宅・地域でより良く暮らすこと。それにはもちろん、認知症の専門医による支援は不可欠でしょう。しかし、医療に頼りすぎると、精神科へ必要以上の入院を促すことにもなり得ます。「精神科医の関与」は慎重に行なわれないと、入院患者が増えるばかりで認知症高齢者が住みやすい環境づくりとは離れた形になりかねません。

おわりに

今回、新オレンジプランを改めて見直してみました。策定から月日が経過し、皆さんの地域ではどう変化があったでしょうか?認知症の人が住みやすい社会は同時に誰もが住みやすい社会です。ノーマライゼーションの父、バンク・ミケルセン氏はこう言っています。

「ハンディキャップを負った人々のために、政治家や行政官、まわりの人々が何かをしようとするとき一番大切なのは、自分自身がそのような状態に置かれたとき、どう感じ、何をしたいか、それを真剣に考えることでしょう。そうすれば、答えは自ずから導きだせるはずです」
(出典:有斐閣『講座・障害をもつ人の人権・1-権利保障のシステム』第1部 第4章「ノーマライゼーションの理念と政策」)

新オレンジプランが、理想ばかりの抽象的な制度に終始するのではなく、認知症の人が住みやすい社会を実現するための制度になってほしいものです。

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軍司大輔

軍司大輔

前介護福祉士養成校学科長。介護療養型医療施設等で介護福祉士として従事した後、介護教員となり、現在は地域での介護事業に携わっている。介護職ネットワーク「ケアコネクト」代表として認知症勉強会や情報交換会を開催。国家試験実技実地委員、実務者研修・初任者研修・福祉用具専門相談員講習講師の他、介護福祉士養成校・各種試験対策講師を務める。教育と臨床の両面から地域で活動する。HR/HMギタリスト。

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