高齢者の身体を蝕むオーラルフレイルに要注意!

オーラルフレイルという言葉をご存知でしょうか。

オーラル=口元
フレイル=衰える

つまり、歯や口といった機能の虚弱、ということです。これは、2015年に生まれた口元の老いという新しい概念。東京大学高齢社会総合研究機構 辻哲生特認教授 飯島勝也教授らによる大規模研究調査の厚生労働科学研究によって示されました。

このオーラルフレイルという考え方には、高齢者の筋力低下には、 運動面だけではなく「食」や「口腔ケア」による影響が大きいとする考えです。今後の高齢者の口腔ケアには欠かせない考え方として注目を集めているオーラルフレイルとは何か、介護者はどんなことに注意ををすれば良いのか、解説します。

80歳代の平均残存歯数は10.7本

歯科業界には、8020 運動と呼ばれる活動があります。
「80歳まで、20本の自分の歯を残しましょうね」という意味を込めて、
平成元年から厚労省と日本歯科医師会が取り組んでいます。

80歳まで20本歯を残すことは、ご高齢の方にはとても大変なことです。早い時期から定期的に歯科医院に健診に通っている方でなければ、なかなか20本の歯を残すことは難しいのです。そこには、「歯を守りたい」という意識がまず必要ですし、むし歯や歯周病で嫌な経験をしたもという苦い過去もあるかもしれません。

現在、80歳代の平均残存歯数は10.7本です(厚生労働省 歯科疾患実態調査より引用)。それ以外は、義歯等、自分の歯以外の歯を入れるのが一般的です。

「自分の歯でなくても食事を楽しめるはず」と思われる方もいるかもしれませんが、それは十分ではありません。

人工の歯で食事を十分楽しむのは難しい

確かに最近ではインプラント治療等、新しい歯科技術が生まれています。しかし現状ではまだ、自分の歯に勝るものはありません。自分の歯でないと、十分に噛み切ったりすりつぶすことはなかなか厳しいからです。

かろうじて残っている歯があっても、むし歯が神経まで進んでしまっている場合、神経を取り除き、金属やセラミックをかぶせた状態となります。そのため、「歯がある」ように感じますが、それは人工の歯であり、自分の本当の歯ではないのです。ここが問題なのです。

かみ合わせがずれたり、スキマが出来たり、詰めた金属が腐食して、二次的なむし歯になってしまったりということも起きます。そのようなお口で、最大に栄養が取れるでしょうか。最大にお口が動かせるでしょうか。最大にお口の機能を使えるでしょうか。私は、ノーだと思います。

バランスの良い食事を楽しむには、自分の健康な歯が必要です。たとえ 少ない歯であっても維持する事が大切なのです。

口元の衰えは全身の衰えにつながる

オーラルフレイルの影響は歯だけではありません。次のような様々な身体的機能の低下に発展する可能性があります。

  • 咀嚼筋肉を使わないことによる嚥下力・反射力の低下
  • 栄養不足からくる筋力低下
  • 筋力低下による身体機能の低下
  • 栄養不足による免疫力低下

こうした身体機能低下は、日常生活に支障をきたし、精神的な負担にもつながります。

オーラルフレイルは予防できる!

オーラルフレイルは、年を重ねれば誰にでも起こります。白髪が生えてきたり、ちょっとしたことで疲れるようになったり、食事の好みや味が変わったり。その兆候は浅深あったとしても、予防することが可能です。

私が考えるオーラルフレイル予防3つのチェックポイントをご紹介します。

  1. 現在自分で噛める歯がどれだけ残っているか
  2. その歯で噛めているか
  3. 噛めてものみ込めるか

次回はこの3つのポイントに沿って具体的にどのようなことが必要かをお伝えします。

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田中 法子

田中 法子

歯科衛生士歴35年の中で、一般診療・歯科衛生士学校講師・歯科助手学校講師・大学病院勤務・訪問歯科・審美歯科勤務を経て、口腔の疾患を繰り返すより予防することの大切さに気づき、北欧他ヨーロッパへ留学。最先端予防と福祉を学ぶ。1997年、日本デンタルスタッフ学院を設立。20周年を迎える。現在までの指導実績は54,000名を超える。叔母と母の介護経験から、家族にとって認知症との関わりがこれからの時代は大切であると痛感し、口腔介護アドバイザー認定資格取得講座を開設。学院経営ならびに専門誌への寄稿・TV・報道番組への出演。歯科医師会・看護協会など多方面にて講演中。2016年11月、医療・介護スタッフのための人材紹介会社を創立。
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