認知症の母を「まず褒めよう」と思ったのは、ビジネス書の世界的名著「人を動かす」(デール・カーネギー著)を読んだからです。80年間以上売れ続けているのは、人間関係の原則は何年経っても変わらないということだと思います。
本の中にある「人を変える9原則」の第1原則が「まず褒める」です。これを認知症介護に応用したらどうなったかというお話です。
5分前の出来事は忘れても、「褒められた」うれしい記憶は残る
わたしは母の作るシンプルな醤油ラーメンが大好きなので、

と何度も褒めていました。「あら、うれしいわ」と言う母に、認知症になる前の姿を見たような気がしました。昨日、デイサービスに行ったことを覚えていないし、5分前に誰から電話が来たかも覚えていない母ですが、認知症と診断されて5年経った今でも買い物に行くと必ずラーメンを買ってきてしまうのは、「褒められた」といううれしい記憶が強く残っているからだと思います。

また、リハビリを嫌がる母に、

と伝えると、さっきまで文句を言っていた母が、急に得意気な表情に変わり、穏やかになる瞬間を何度も見ました。
「まず褒める」ということが、認知症の人とのコミュニケーションにおいても通用することに気がついたのです。
医師が語る「褒める」の効果とは?
認知症の人を褒める効果について、認知症専門医である笠間睦医師は次のように言っています。
認知症に対するリハビリテーションの基本は、『褒める』ことです。ですから、難しい課題を与えてはいけません。達成可能な課題にして成功体験を繰り返し、目一杯褒めて、モチベーション・生きがいを高めていくことが大切なのです
このように「褒める」ことが認知症のリハビリにもなり、コミュニケーションを円滑にすることを自著やコラムで紹介したところ、読者の方から次のようなご意見を頂きました。
- 褒められて嬉しいのは元気な人も一緒なのに、なぜか『認知症の人にも』という発想がなかった
- 子育ても褒めてから注意すると親に習った、認知症の人も同じことだ
- 認知症の人が自信がついた表情になり、会話が変わった
なかには、小さい頃からの親子の軋轢が解消できず、どうしても褒めることができないというご意見もありました。
専門書以外の本に眠る認知症介護のテクニック
認知症介護で困った時、医療や介護の専門書を読んで悩みを解決することが多いと思います。
しかし、認知症の人が特別なわけでなく、同じ人間として考えてみると、専門書だけに答えが書いてあるわけではないことに気づきます。「人を動かす」は認知症の専門書ではありませんが、認知症介護に応用できるポイントが多数あります。
「専門的な」視点で認知症を見ることも大切ですが、「人間的な」視点で認知症の方に接することはもっと大切ではないでしょうか?
今日もしれっと、しれっと。
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