介護施設で参加者の心をグッと掴む季節の歌

【アイキャッチ】介護施設で喜ばれる季節の歌

高齢者や 認知症が進んだ方にも楽しんでいただける音楽会、「音楽の花束」を主催しておりますGOTOです。信頼関係を築き、コミュニケーションを深めるために、音楽はとても有効です。今回は、4月に私たちが音楽を通じて深めたコミュニケーションをどのようにデイサービスの自立支援に役立てたかについてお伝えします。

「春」や「花」の季節を連想する曲を選ぶ

例えば4月のある土曜日には、こんな曲をセレクトしました。

  • 荒城の月
  • 東京の花売り娘
  • 春一番
  • 花は咲く
  • 白い花の咲くころ
  • また逢う日まで

この日は歌がお好きなS様が、来所後すぐから繰り返し「荒城の月」のメロディーを口ずさんでおられました。そこで「最初の曲は今朝のS様の鼻歌からスタートしましょう」と、「春」や「花」から連想される曲を選びました。歌のプログラムはその日の皆さまの状態に合わせて、ひとつひとつ選んでいきます。

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歌の花束の演奏シーえる音楽とはン

「荒城の月」や滝廉太郎の「花」は、わざと歌詞を提示せずに歌いました。歌詞が出てこないなと思われるところは先読みをしますが、大丈夫そうでしたらゆっくり歌いながらご一緒に、探り探り歌います。そのことは、もちろん脳の活性化にも繋がりますが、もっと大切にしているのはアイコンタクト、笑顔で声を出したり口を動かすという行動を促す、やり取りそのものです。

歌詞を書いたものを注視しないことで、互いに顔を見合わせ、気持ちを合わせることができるのです。歌い終えて、いつ、どこで習ったのかなどをお聞きすることも楽しいです。学校の先生の名前や、教室の様子までお話しが出ることもあります。

歌をきっかけに思い出話を引き出す

連想でリクエストを募るのももちろん「脳トレ」として大切ですが、スタッフに聞いたりGOTOからも提案しながら笑顔のやり取りと会話、交流を促し、チームとしての深まりを作ることを意識していきます。この日「東京の花売り娘」はお客様から、「上海~」はGOTOの提案。「花売り」のこと、この時代の歌手は皆本格的に音楽の勉強をした人だったこと、上海などの異国情緒にあこがれた歌が多かったことなど、皆さまから出てくる様々なお話しから彼の時代に想いを馳せました。

ここでちょっぴりしんみりした雰囲気を一新するため、キャンディーズの「春一番」をノリノリで歌いました。こうした曲はスタッフが踊りだしたり、また一緒に歌わない方も「あら、懐かしい!」「よく聴いた曲」と身体をゆすったり手拍子をしたり、パッと笑顔になって「鑑賞」というよりもライブ会場のお客様のような積極的な反応が出ます。参加意識を高め、一体感も生まれます。ノリノリで歌う利用者のみなさん

そこから今度は、震災記念日には必ずTVなどで流れるようになった「花は咲く」を、今度は歌詞を見ながら歌いました。震災の想い出は辛いことですが歌詞とメロディーが美しくまた素晴らしく、三陸出身の作詞、作曲家が思いを込めて作った歌です。「三陸のことだけを歌っているのではなく、メロディーも沖縄の旋律を取り入れ日本中の人が故郷としての日本を大切にしていくような感じですね」とお話しすると、A様がGOTOの顔をご覧になり、「ああ、そうだね。そうなんだね」と感に堪えない様子で相槌をうたれました。

半身麻痺でふさぎがちだったAさまの心に響いた音楽

A様は、脳梗塞のために右半身麻痺となって、言語機能にも問題が残り発語訓練を続けておられます。来所された当初は大きな音を立てたり大声で叫ぶなど、ご自身の身体が思うように動かず、言葉も人に理解してもらえないことへの悔しさや苛立ちをぶつけておられました。

発語の訓練も少しずつ進み、会話も当初に比べればかなり聞き取れるところまできています。しかしここまでA様は音楽を楽しまれてもだいたい俯いておられ、声に出して歌われることは滅多にありませんでした。リハビリを兼ねていることをお伝えしていますがどうしても気持ちにストップがかかり、短く、小さい声で唱和される程度でした。そのA様が大きく声に出して相槌をうつことは珍しく、しかも今回は心なしか目に涙を浮かべて歌を聴きながらリズムを取っておられる。これは、大きな変化でした。

変化をとらえ、振り返って、参加者と喜びを共有する

その変化に応えて、最後に『また逢う日まで』をご提案しました。歌う前にGOTOは「この歌はS様の愛唱歌ですね」とお伝えしました。S様は冒頭の「荒城の月」を口ずさんでおられたかたで、実は、半身麻痺のA様がどんなに大きな声を出しても常に温かく見守り、励ましの声をかけておられ、A様も大きな信頼を寄せておられる方です。

イントロで皆さんが手拍子を入れるとA様の顔がしっかりと歌詞に向けられるのが見えました。そしてすぐに「♪また逢う日まで~」というところから、不明瞭ながらしっかりとした声で歌い始められました。あっと思いながら2回繰り返したところ、A様は真剣な表情で最後まで大きな声でお歌いになりました。歌に触れる中で心が動き、信頼の輪の中で、安心して大きな声を出して最後まで歌うことができたのです。

毎回、プログラムを終えると、その日の「歌の旅」を振り返ります。参加者の方と楽しい時間を共有できたことの喜びを再確認すると、皆さんの顔に充足感とともに笑顔が溢れてきます。送迎スタッフにバトンを渡しながらも、余裕があればそのあと送迎待ちのみなさまとリクエスト大会に突入することもしばしば。

A様の変化をそのあとスタッフに伝えたところ、「A様、すごい」「ご家族に知らせたいから、連絡ノートに書きましょう」「発語訓練がすすみそう」「会話がよりスムーズになればご家族が喜びそうですね」とすぐに今後の関係づくりや機能訓練に活かしていけるような反応が返ってきました。素晴らしい時間でした。
音楽にできることはまだまだある。GOTOの模索は続きます。
次回もどうぞお付き合いください。

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後藤 京子(GOTO)
「音楽の花束」代表。星美学園短期大学講師。東京音楽大学卒、同大学第2副科オルガン専攻修了、邦楽演奏コース長唄三味線専攻修了。1986年日本ピアノコンクール全国大会第3位、受賞記念演奏会出演、1987年読売新人演奏会出演。NHK邦楽技能者育成会に学ぶ。短大西洋音楽史講師、小学校音楽科教諭を経て2004年より「音楽の花束」のプロデュース活動を始める。2015年きらめき認知症シスター(きらめき認知症トレーナー協会認定)取得。カトリック東京カテドラル関口教会オルガニスト。デイサービス「空の花 高井戸」取締役副社長。>>公式サイトへのリンクはこちら「音楽の花束」
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