見えないけど気づいてほしい「理由」~「言葉」編~

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【通じていると信じてしまう錯覚】

「エアコンのリモコンはどこですか?」
「車イスのブレーキかけましょうね」
普段使っているカタカナ語って
ひょっとしたら、理解できていないかも?

伝わらなかった時に
「認知症で理解力が落ちているからか…」と捉えよりも
「単語が理解できていなかったのかな?」と捉えて
工夫してみるのも一手だよね。

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ちぐはぐにみえる行動の理由は?

利用者をベッドサイドで介助する時や、お風呂やトイレに一緒に行く時、わたしたちは利用者に声をかけますが、その時に話がかみ合えば、その声かけは利用者が理解できる言葉だったととらえるでしょうし、話がかみ合わなければ、理解できていなんだろうと判断するでしょう。

「言葉」の意味がわからなければ、ちぐはぐに見える行動をとっても不思議じゃありませんよね。ところが、相手に「認知症」があるというだけで、ついつい次のようにとらえてしまうということはありませんか?

  • 「認知症があるからわからないんだ」
  • 「認知症があるから覚えていないんだ」

でも、ひょっとするとその言葉にピンと来ていないだけかも?というのが、今回のテーマです。

耳慣れない「言葉」を聞くと人はどうするか?

例えば、「お風呂に行きましょう」でピンと来ていない様子であれば、「温泉に行きましょう」「身体をキレイにしにいきましょう」と言い換えたりするでしょう。そして、それは、この単語じゃわからないのかな?と推測するから言い換えるんですよね。

ただ、それは「会話が通じていない」と感じた時なので、「会話が通じている」と感じるような反応の時には、自分がどのような単語を選択したかを自覚していないことが多いのではないでしょうか。

自分たちでは気づきにくいのですが、意外と一般人には耳慣れない言葉を使っているものです。

  • デイ
  • パット
  • リハビリ
  • 眠剤
  • 片マヒ

…等

会話の流れで、本当はわかっていない単語だけど、いちいちわかっていないという反応をせずに会話を流していることだってあるかもしれません。それは、ご自身の体験に照らし合わせてみれば、簡単に想像がつくでしょう。

「緊張して会いにいった医師からの説明が専門用語だらけでさっぱりわからなかったけど、質問もできなかった…」
「スマホの操作方法がわからなくて、携帯電話ショップに行ったけれど、言っていることがチンプンカンプンで疲れた…」

相手が言っていることはわからなくても、文脈で理解できるかな?と思って、質問せずに会話を続けてみたものの、やっぱり意味がわからず、「でも、いまさら、聞けない」とあきらめた体験ってないですか? 僕はあります。そして、だいたいそういう時は、途中から話がほとんど聴けていません。

「はい」って言ってたのに…なんで?

明らかに通じていないということもあれば、通じているようで通じていないという場合もあるでしょう。特に、この言葉のやりとりで振り返ってほしいのは、次のような場合です。


職員
Aさん、◯◯しましょうか

Aさん
はい、はい。

というやりとりのあとで


職員
あれ、さっき◯◯って説明しましたよね?

Aさん
そうでしたかね?

職員
さっき、「はい」って答えてましたよ?

Aさん
そうでしたかね?ハハハ…

こういうやりとりがあると、ついつい「さっき、説明したことを忘れているんだ」ととらえるでしょうし、そうなると「認知症だからなぁ…」と考えてしまいますよね。でも、先ほども見た通り、わかっていないけどわかったフリをすることは誰にでもあるものです。
だから、そういう時も、『認知症だから忘れているのかもしれないけど、実はさっきの言葉(表現)が理解しにくかったのかも?』という観点ももってみてください。また、少し丁寧なコミュニケーションを自然とするようになると思います。

おわりに

年配の利用者さんは、耳が遠くても聞こえたフリをすることもあります。また、できるだけ調和を保つように意識する世代でもあるので、話の腰を折るようなことも避け、意見が違っても「そうやね」と同調する方も少なくありません。そうした気づかい・心づかいは、「認知症」になったとしても残り続けるものです。そういう面がコミュニケーションの背景にあるということも、わたしたちが忘れないようにしたいですね。

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裵 鎬洙
コーチ 認知症ケアスーパーバイザー コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)講師 介護支援専門員実務研修・専門研修講師 【略歴】 1973年生まれ。兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後は介護施設で相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、関わる人の内面の「あり方」が ”人”や”場”に与える影響の大きさを実感。介護に携わる様々な立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の⼤切さを発見する研修やコーチングセッションを提供。著書『理由を探る認知症ケア~関わり方が180度変わる本~』。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。
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