その入浴援助は誰のためですか?無理強い介護を見直そう!

認知症専門ナースケアマネの市村幸美です。入浴援助について、数回に渡りお伝えをしてきましたが、今回は入浴援助を行う介護者の気持ちに焦点を当ててお伝えします。

第1弾:認知症の病型別「入浴拒否」の原因を知る!
第2弾:介護者は知っておきたい!認知症高齢者の入浴中の事故とその特徴
第3弾:介護でありがちな場面から考える!入浴拒否への対応方法

入浴は誰のため?

入浴は誰のためですか?「そりゃあ、患者(利用者)さんのためですよ」と、お答えになると思います。しかし、最初は相手のためと思っていたはずが、いつの間にか介護者の自己満足のためになっていることがあるのです。

「入浴してサッパリしたら気持ちいいに決まっている」という個人的な価値観や、「入浴させることができた」という自分の実績のために、相手の本当の望みを無視している場合もあるのです。この怖いところは、当人が無意識であったり、「良いことをしている」と勘違いしていたりする場合があるということです。

筆者自身もこのような経験があります。「お風呂は気持ちよいもの。週に2回しか入れないのだから、今日入ったほうがいい」などという自分の価値観を中心に、無理強いさせてしまったこともあります。今ではとても反省しています。

その入浴援助、本当に相手のためですか?一度振り返ってみましょう。

無理強いしてもいいことは何もない

認知症の方の入浴援助で多いのが、「最初は拒否されたけど、なんとかお風呂場に連れて行ったら入ってくれて最後は気持ちいいと言ってくれた」というもの。筆者はこれが認知症の方の入浴をこじらせている大きな原因だと考えています。このパターンの場合、次も同じことを繰り返すことがほとんどです。つまりどんなに気持ちよいと感じてもらえても、次もまた同じように拒否されるのです。

これは前の記事でも書いたように嫌な記憶は残りやすいという特徴があるからです。「気持ちよかった」という気持ちより「無理やりお風呂場に連れて行かれた」という気持ちの方が残るということです。無理強いしても拒否が長く続くだけです。

入浴させることだけがケアではありません。引き下がる勇気もケアです。

入浴させなければならないという気持ちを手離す

ケアする上で1番大事なのでは考えているのが、入浴させなければならないという気持ちを手放すことです。プレッシャーは必ず相手に伝わります。

介護場面から離れて考えてみましょう。ノルマに追われて切羽詰まった営業マンに、必死に商品を勧められたらどんな気持ちになりますか?筆者ならその必死さが怖くて、「早くこの人から離れたい」と思ってしまいます。

入浴させなければならないと、必死で誘っている場合、おそらくこの場面と同じようなことが起こっている可能性があります。介護経験のある方ならば、認知症の方がこのような介護者の気持ちに敏感であることを知っているはずです。

「入浴してさっぱりしてほしい」と思うことは悪くありません。ですが、「入浴させたい」と思うのは介護者のエゴではないか、と感じています。

さいごに

4回にわたり書いてきました入浴シリーズですが、筆者が1番言いたかったのは今回の内容です。「入浴」そのものを行うことが入浴援助ではありません。入浴したくないという意思を汲んで引き下がること、入浴したくない背景を他のケアを通しながら探っていくこと、これも入浴援助だと筆者は考えています。

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市村幸美
准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症専門のナースケアマネ市村幸美の【美Happy介護】』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。

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