認知症のある方の心の問題を解決するには○○の力が大切!

施設の職員である私たちができることは、日々のお世話、それに尽きます。

ご家族が、日常生活の中で面倒をみるのはとてもたいへんです。そういうとき、施設でお世話させていただければ、ご家族の心身の健康も保たれ、ご本人の身体状況も常に快適に保たれて、お互いにいい関係が成り立ちます。

しかし、心の問題の場合は、ご家族の存在が助けになることも多いのです。

今回は、ある利用者様のお話を通して、介護のプロがご家族の力を頼りにするときについてお話いたします。

聡明さゆえの強いこだわり

Fさんは、先日102歳のお誕生日をむかえられました。

脚が悪く、ご自分で歩けないので車椅子を常用されていることと若干太り気味であること以外は、いたってご健康に見えます。

飽くなき好奇心をお持ちで、毎朝必ず新聞をチェックされますし、他の利用者様や職員の行動にも常に関心があります。今、他の利用者様がどんな健康状態であるとか、それぞれの職員の家庭の事情なども、交わす会話の端々から把握され、しかも記憶力が素晴らしく、一度聞いたことはほとんど忘れないのです。

しかし、そのように聡明だからこそ、陥る罠があります。

Fさんは、アレルギーの影響でしょっちゅう鼻やら耳やら目の周りやらを掻いている他の利用者様のことを、「不潔だ」とたいへん毛嫌いされています。アレルギーが理解できないため(Fさんの時代は、アレルギーがあまり認知されていなかったためだと思われます)、ご自分がかつて患ったヘルペスだと思っておられるようです。「みんなにうつるから、いい医者にかかって、注射1本うってもらって治せ」とその方含め、スタッフや他の利用者様にもしょっちゅう言っておられるのです。

とても健康そうに見えるFさんですが、このような強いこだわりは、認知症の症状の始まりでもあります。

思い込みにしがみついて聞き入れてもらえない

人に迷惑をかけるのがお嫌いなご性格なので、Fさんはご自分のことも責めてしまわれます。

最近食事のときによく咳き込まれるのですが、ご本人は、他の利用者様にとって自分が咳き込むのは迷惑な行為だと、いたく気にされているのです。お医者さんが、年齢のせいで食道が細くなり、食べ物がスムーズに通らなくなったからとおっしゃっていてもです。

グループホーム内にインフルエンザが発生したときには、「Fさんの咳が、みんなに風邪をうつしている、と言っている人がいる」という思い込み(妄想)をされてしまいました。

職員が利用者様の思い込みを解くことは、とても難しいのです。お医者様からも、「そんなことはない」と何度もお話いただきましたが、全く聞き入れてくださらず、自分の思い込みにますます意固地にしがみつくありさまです。

職員が家族の力を借りるとき

そんなとき、いちばん頼りになるのは、やはりご家族の方です。特に、同居されていた長男さんのことを、Fさんはとても頼りにされています。こういうときは、長男さんに少し意見していただくようにお願いしています。

すべてが解決するわけではないのですが、それでも「長男さんもそう言ってらっしゃいましたよね」と言うと、少しは聞き入れてくださるようになります。

ここで私が言いたいことは、たとえ親御さんを施設に入れることになっても、すべての面倒を施設で解決できない場合もある、ということです。やはり、ご家族というものがご本人には一番の心の拠り所であり、信頼のおける存在なので、ご家族のほうが問題の解決に力となる場合もあるのです。

職員もできることはたくさんある!

お年を召してくると、たとえば便の回数が多くなったり、その状態も悪かったり、また認知症が進んでくると臭いに鈍感になってくるので、便が便だという認識も難しくなってきて、壁などに塗りたくったり、最悪の場合、ご自分で食べてしまうこともあります。

じつは、Fさんは入所されてきたとき、脳梗塞の後遺症で発語のときあまりろれつが回らず、何を話されているのか聞き取りにくい状態でした。しかし、職員が積極的に聞き役になったり、会話をしたりしているうちに、半年余りで普通に会話ができるまでに回復されたのです。

他の利用者様でも、同じように脳梗塞等の後遺症で手を動かすことが不自由であったり、発語が不自由になった方がいらっしゃいますが、毎日のようにぬり絵をしたり、嚥下体操をしたりしているうちに、徐々に身体状況は改善されていきます。

認知症の症状そのものも、職員の日頃のお声かけによって、進行の度合いは遅くなったりします。

さいごに

ご本人たちの心になにかしら問題が生まれたとき、ご家族のお力が必要となることがある、ということを覚えておいていただけると、私たち職員はもちろん、なによりご本人がとても安心されるのではと思います。

今日もFさんは、「レクは○○さんがいちばん上手い」「トイレの介助は○○さんがいい」「日常生活で頼りになるのは〇〇さんだ」などとつぶやかれながら、職員の見守りの中、ご自分らしい生活をされています。

前回記事:認知症の方の暴言や暴力との付き合い方~あるグループホームの話~

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長谷川侑紀

長谷川侑紀

コピーライターを経て、現在演劇をやりながら認知症患者の施設であるグループホームでパート勤務。演劇を通して認知症の方や介護の職員の方々にも楽しんでいただけるワークショップなども研究中。認知症の方々の日常を知っていただくことにより、人間が人生の最期を幸せに迎えるためには、他人に助けてもらう必要があることを、世の中に広めていきたいと考えている。
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