介護者が知っておきたい口腔ケアの道具5つとケアの心得

by 田中 法子田中 法子 2977views

自分の口の中をじっくりみる機会って、なかなかないものですよね。とくに、歯以外の部分がどのような働きをしているのか、また、どのような役割があるのかなんて、歯科医療従事者でないかぎり情報として得られないですよね。

私が市民講座等で講演をさせていただく際、まずは自分のお口を見ていただき、お口の中の構造や役割を知っていただくということをしています。もちろん、歯科医療従事者に講義するときは、専門用語を使ってお話いたします。

でも、一番大事なのは、「セルフメディケーション」という言葉もあるように、「自分のことは自分で知る、そして守る」ということです。これからの社会、そして今後増加が予想される在宅介護で必要とされてくると考えています。

今回は、介護を行うご家族や在宅介護に従事するスタッフさんのために、私が長年訪問歯科で行ってきたことをお伝えして行きます。

自宅介護での口腔ケア

まずは、「しなければならない!」というプレッシャーの荷物を肩からおろしてください。小児の歯磨きをいやがるお母様方にもお伝えしていますが、「はみがきしなくてはならない!」と焦る気持ちや苛立つ気持ちが手や表情に出てしまい、相手に伝わります。

次に、「できること」を行ってください。「できること」の幅を少しずつ広げ、口腔ケアにおいても「できること」を行い、歯科衛生士さんが訪問した際、専門的口腔ケアを行ってもらいましょう。その時、どんなふうにするのかを観察したり、聴いたりしてみてください。

それでは、「できること」とは一体なんでしょうか。「できること」第一段階はずばりこれです。

手を握る

え?口腔ケアでしょ?!って、思いますよね!(笑)

じつは、脳内の運動野といわれる運動神経の範囲と感覚野といわれる感覚神経の範囲は、口と手、両方同じくらい大きく関連しているんです!ですので、口をあけていられるか?舌や唇を動かすことができるか?ということは、手や指の動きができるか?と一緒なんです。

そして、最も大切な「いきなり口をあけさせるのではなくコミュニケーション&スキンシップから!」ということをしていただきたいんです。「さあ歯を磨くよ」って、寝ているときにいきなりブラシを口の中に入れられたら誰だってイヤですよね!「ちょ、ちょっと!なにするの!!」って、なりますよね。

介護者は、これを「拒否」という言葉で表現しているのかなという気がします。「おはよう、お母さん。今日は外、暖かいのよ」と言いながら、手を握ったり、顔をあたたかいタオルでふいてあげてもいい。口腔ケアは、ここから始まっているんです。

介護者に知っていてほしい口腔ケア~道具編~

それでは次に、どんな道具を用意すればいいのか?また、使いやすく要介護者に負担にならない道具をご紹介いたします。

歯ブラシ

やわらかめのものを使用します。そして、毛先が細いもの。本来、毛先が細いものは歯周病予防などに使うものですが、短い時間内に細かく磨くことができない介護における口腔ケアは、歯ブラシの毛先が細いものの方が磨きやすいです。

ガーゼ

ハンカチくらいの大きさのガーゼを4つに折り、人差し指の先端にかぶせるように巻き付け、頬がわの歯肉にそって置くようにします。そうすると、歯垢まみれのだ液を誤嚥することなく、ガーゼが吸い取ってくれます。

歯間ブラシなど

歯間ブラシで、歯と歯の間を清掃したいという思いはありますが、しっかりと開口を維持できる方でない限り、おすすめできません。なぜなら、歯間ブラシは外側から内側に向かって入れますよね。そのとき、間につまったものが反対側に出てしまい、誤嚥したり、その菌が口の中に停滞してしまう危険性があるからです。

私がおススメしたいのは1歯用の筆のような小さい歯ブラシです。最近はドラッグストアでも見かけますので、ぜひ確認してみてください。歯間ブラシよりも扱いやすく、際や間も奥までとどきます。

保湿剤

薬の副作用や加齢で、だ液量が減少していきます。専門用語では「口腔乾燥」と言います。口腔乾燥をどのように観察するのかというと、舌の上を見てください。

  • 乾いている
  • ひび割れている

これは赤信号です。そんなときは、保湿剤をスポンジブラシにつけて塗ってください。

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どのようなスポンジブラシがいいかというと、断面図がお花のようになっているもの、車輪のようになっているものがおススメします。なぜなら、丸いでこぼこが保湿剤をしっかり捉え、まんべんなく塗ることができ、舌の上などの汚れをくるくる巻き取ることができるからです。

口腔乾燥がある舌や頬の粘膜は大変薄く、繊細です。いくらやわらかそうに見えても、乾いたスポンジブラシやガーゼで絶対に拭き取らないでください。表面の組織がはがれてしまうこともあります。

介護者に知っていてほしい口腔ケア~気持ち編~

口腔ケアは、3大難関とも言われ、噛まれる、拒否される、難しいと思われています。はたしてそうでしょうか?

「今日全部の歯を行う!」
「しなければならない」

という気持ちが、この難関を作ってしまっているのではないかな、と感じます。

私は30年間、訪問歯科や介護に置ける口腔ケア、摂食嚥下の研究に携わってきましたが、実際に母の介護になるとひとりの介護家族になります。母が認知症になり始めのときは、「歯科医療従事者だからキレイにしないと!」「なんで嫌がるんだろう」と、キリキリしていました。

しかし、最近母に語りかけたり、手を握ったり、髪をとかしたり、乾燥した頬にクリームを塗ったりする中で、「そうだ、歯もキレイにしておくね」と、まるでついでのように言って、口腔ケアをするんです。

すると、本当に不思議ですが、簡単に口を開いてくれます。もちろん、人それぞれと思いますが、ぜひ、介護に関わる皆様が肩の力を抜いて、専門家にお願いするところはお願いして、コミュニケーションのひとつとして口腔ケアをしていただけたらな、と思います。これが、気持ち編の1番お伝えしたいところです。

さいごに

今回のコラムが介護の上での口腔ケアにお役にたてるようあえて専門用語などは使わず勧めてまいりました。次回は更に具体的な方法についてお伝えして参ります。

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田中 法子

田中 法子

歯科衛生士歴35年の中で、一般診療・歯科衛生士学校講師・歯科助手学校講師・大学病院勤務・訪問歯科・審美歯科勤務を経て、口腔の疾患を繰り返すより予防することの大切さに気づき、北欧他ヨーロッパへ留学。最先端予防と福祉を学ぶ。1997年、日本デンタルスタッフ学院を設立。20周年を迎える。現在までの指導実績は54,000名を超える。叔母と母の介護経験から、家族にとって認知症との関わりがこれからの時代は大切であると痛感し、口腔介護アドバイザー認定資格取得講座を開設。学院経営ならびに専門誌への寄稿・TV・報道番組への出演。歯科医師会・看護協会など多方面にて講演中。2016年11月、医療・介護スタッフのための人材紹介会社を創立。
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