介護の仕事に携わって約25年、これまで何人もの離職者を見てきました。離職の原因は大きく2つに分けられ、ひとつは無知ゆえの離職、もうひとつは自分の思いと現実を実感してのずれ、そしてそれに伴う向上心からくる離職です。
なお、新聞やテレビの報道でよく取り上げられている、給料の低さを原因とする人はほとんどいませんでした。
離職者が無知の場合
「離職者が無知だから」だけではないと思いますが、総じて言えるのは、離職者自身に問題がある場合が多いということです。
介護の仕事を知ることで、「こんな大変な仕事とは思わなかった」「簡単に考えていた」と言い、退職していきます。
確かに、訪問介護(ホームヘルパー)以外は、特別な資格を必要としません。しかし、長年介護の仕事をやっている人の多くは、資格こそ必要ないものの、知識や技術といった専門性が問われる仕事であることを知っています。
知らないのは、国の偉いと言われている方々と、それを信じて報道するマスコミです。冒頭に、離職者の無知だけが原因ではないと書いたのはそのためです。
雇う側が無知の場合
雇う側の無知も、離職の原因となることが多いです。慢性的な人手不足となっている職場において、応募に来た人はまさに救いそのものです。それゆえ、応募者を十分に知ることなく、また仕事内容を丁寧に説明することもなく採用した結果、「そんなこと聞いていなかった」と言って、応募者は離職します。
理想と現実のギャップで離職する場合
そしてもうひとつの離職の原因、自分の思いと現実を実感してのずれ、それに伴う向上心については、介護職経験が長い、もしくは何か所かの職場を経験している人がほとんどです。
仕事をする中で、介護の現実を知る中で、本や講習などを通じて自らの理想とする介護が生まれてきます。そして、自分が働いている職場において実現できないものかと考えます。しかし、それを同僚や部下、さらには上司に対して伝えたり理解を得たりをすることができず、思い悩むことになります。私事で大変恐縮ですが、私はまさしくこの理由で退職しました。
改めて自分自身を振り返って分かるのは、理想とする介護を現実に働いている職場の状況も考えずに、良いか悪いかの二者択一でしか考えられなくなっているということです。そのため、自身と違う考えの人や職場が「変」な存在にしか見えなくなるのです。
さいごに
自身の反省を踏まえて言うなら、双方がより柔軟性を持った考えを持っていれば、状況は変わっていたのではと今になって思います。
ただ、それに気づかず自分の理想が正しいとだけ考える人は、理想を求めて離職を繰り返すことになるのではないでしょうか。そして、自分の理想を形として作りあげたいとの向上心から、様々なリスクを承知の上であえて独立の道を選んで離職する私のような人もいることを覚えていただければ嬉しく思います。

魚谷幸司

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