認知症専門ナースケアマネの市村です。前回は、認知症の種類別における入浴拒否の背景についてお伝えしました。今回の記事では、入浴中に起こりやすい事故とその特徴をまとめます。
転倒
入浴に限ったことではありませんが、認知症の方は、身体機能が保たれていても中核症状やそのほかの要因によって転倒してしまうことがあります。空間認識の障害によって、浴室内や浴槽の距離感がつかめずつまずいてしまったり、手すりをつかみ損ねたりしてしまう場面などがそうです。抗精神病薬を服用している場合はふらつきが強くなるため注意が必要です。
またレビー小体型認知症の方や脳血管性認知症の場合は、このような症状に加えて身体の動きにくさも影響します。
溺水
介護現場で時々あるヒヤっとする場面です。少し目を離した瞬間に口まで沈んでいたという経験が筆者にもあります。この場合は認知症の症状というよりは、血圧変動や意識レベルなどが原因のことが多いように感じています。
脳血管性認知症やレビー小体型認知症では、血圧が不安定な方がいらっしゃいます。入浴による血流の変化によって、血圧が変動しボーっとしてしまい沈んでしまう可能性がありますので注意して下さい。また、抗精神病薬の副作用によって眠気が強く出ている場合も、同様に注意が必要です。
熱傷
認知症が進行してくると、浴室の温度調節の方法が分からなくなったり、水とお湯の蛇口の違いを認識したりすることが難しくなってきます。間違えて、高い温度のままシャワーを出してしまい火傷をしてしまうということもあり得ます。施設などで介護者が一緒に入る場合は心配ないと思いますが、在宅でおひとりで入られている場合は注意が必要です。
誤嚥
意外に思う方もいるかもしれませんが、入浴中の誤嚥もあります。以前洗髪介助時に、本人の呼吸と介護職のシャワーのタイミングがずれたことにより、お湯が口に入り誤嚥してしまったという例もあります。
また介護度が高い方は、入浴時にリフトを利用します。リフト浴での体位の問題により、唾液を誤嚥してしまう可能性もあります。
ヒートショック
最近よく聞かれるようになった言葉ですので、ご存じの方も多いかと思いますが、ヒートショックとは、急激な温度の変化によって血圧が変動し、健康に悪影響を及ぼすことです。とくに冬の入浴時に起こることが多いのが特徴で、溺れて死亡するケースもあります。
認知症の方の場合は、予防策をとることが難しくなるため、在宅で入浴している場合は注意が必要です。
まとめ
認知症の方の事故の理由のひとつに、「過去にこのようなことをして危ない思いをした」という、体験を忘れてしまう背景が挙げられます。身体機能がしっかりしていても、思いがけない事故が起こってしまうことがあるということを介護する側が理解しておくことが大切です。


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