************************
【その人だから、反応するもの】
体や五感で覚えていること。
例えば、匂い(香り)などは、その人にしかわからないもの。
わたしは、とある漢方薬の匂いで、母方の祖父母の家を思い出す。
しかし、言葉で誰かに伝えることはできないので、匂ってもらうしかない。
そんな風に、「伝えられない要素」も、その人には影響してるかも。
************************
匂いから受ける影響
匂い、つまり人が嗅覚から影響を受けていることは、想像ができますよね。口臭や体臭など、当事者にはわかりにくくても、他人はとても敏感に感じたりします。逆に、当事者は反応するけど、他人にはわかりにくいものもあります。そして、反応もマイナスな反応もあれば、プラスの反応もありますが、同じ匂いでも人によってまちまちでしょう。
- 仏壇のあるお部屋の線香の匂い
- 病院のアルコールやオムツの匂い
- リラグゼーション効果のあるアロマの匂い
- 魚やギョーザを焼いている匂い
- カレーで使う香辛料の匂い
など
わたしの家には仏壇がないので、お線香の匂いがするお宅に訪問すると気になるし、慣れるまでは話に集中できなかったりします。病院のアルコールの匂いを嗅ぐと、なぜか身体が緊張します。カレーは大好物なので、カレーの匂いがしてくると「食べたいなぁ」と幸せな気持ちになります。
このように、その匂いがその人に及ぼす影響が、プラスかマイナスかがわかれば、介護する側にできることも幅が広がるのではないでしょうか。
匂いに関する“落とし穴”
ところが、オムツの匂いやアルコールの匂いなどに慣れてしまっていると、その匂いに気づきながらも無視してやり過ごせてしまうことがあります。そうなると、匂いが利用者に及ぼしている可能性に気づきにくくなります。「自分が気にならないことは、他の人も気にならないだろう」としてしまっていることがないか、観察が必要です。
一方、同じくオムツが汚れている匂いがしているのに、利用者がまったく気づかない場合もあります。そこには、「嗅覚の低下」という要素が考えられますが、それもまた目に見えないものなので、わかりにくいものです。他の可能性としては、オムツの匂いに慣れてしまっていて、匂いとして感じにくくなっている可能性も考えられます。
「匂いを疑ってみる」という選択肢
利用者の言動を理解しようとする時、まずは言葉のやりとりを通して、理解しようと試みますね。ましてや、その場面を振り返るカンファレンスの場においては、匂いという情報を確認することもできません。
人間は五感で周囲の状況を察知し、それに適応して行動する生き物です。その行動のきっかけにおいて、視覚、聴覚に次いで、嗅覚はあなどれない要素です。いい匂いがしてきたら、それだけで幸せな表情が浮かぶし、イヤな匂いがしてきたら、それだけで表情が歪むでしょう。
だからこそ、「幸せな表情が浮かぶ匂いがしていなかったか?」「表情が歪む匂いがしていなかったか?」という問いに取り組んでみてほしいと思います。
おわりに
そもそも、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚を通して外界を認知し行動するのは、地球上の多くの生き物に言えることです。そして、人間には価値観がそれぞれあり、その匂いへの反応も人それぞれであることを踏まえると、「目には見えないけれど、確かに影響を及ぼすもの」として、匂いにも気を配り、相手の言動を理解するための感性を磨いていくことは、とても大切なことだと言えるでしょう。
匂い一つで“不快”から“快”に状態を変えられる力をもつためにも、意識していきたいですね。


最新記事 by ペ ホス (裵 鎬洙) (全て見る)
- 「言動=思いの表現」として受け取るコツ - 2018/1/30
- みんなで「認知症」に備えよう! - 2017/12/25
- 「やらない=わかっていない」は本当か? - 2017/11/24
編集部おすすめ記事
この記事を読んだ人にぜひ読んでほしい、その他の記事