認知症、そしてタンゴセラピーと「相手を受け入れる事」

日本タンゴセラピー協会理事、グループホームで働いている中川です。今回は、【相手を受け入れる】ということを掘り下げて考え、私の生涯の社会活動であるタンゴセラピーと、仕事として毎日携わっている認知症の症状の相性を考えてみました。

相手を受け入れるということ

【受け入れる】ことは、「今のままのあなたでも良い」と思う事や、「どんな面もあなた自身なのだ」と理解することです。これは、家族・恋人・友達などすべての人間関係の中で、大切なことです。しかし、一言でそうは言っても、相手の嫌な部分は見て見ぬ振りをしたり、受け付けないということもあるのではないでしょうか?

認知症という症状を受け入れるということ

認知症という症状を理解しようとし、その症状に「対応」「対処」するのではなく、まずはしっかり心で受け入れ、自分が思うように動くことが大切なのではないかと思います。

私たちは反復する活動に対して「慣れ」を感じ、いつの間にか「自動運転」のように、頭で考えなくても動いてしまうことがあります。毎回毎回、その人はその人として、その症状はその症状として、「認知症の症状のこんな面も、また認知症の一部分なんだ」と思えると、人は人として、認知症の症状は、認知症として受け入れられるのではないでしょうか?

タンゴセラピーの考え方

タンゴセラピーでは、「音楽」「抱擁」「歩き」を大切にして人と人がまず相手を受け入れ、一緒に楽しみ、お互いに癒し、応援し、そして相手を敬います。

モチベーションが上がったり、身体機能が向上することはその結果ではありますが、基本的な考え方は、「男は男らしく、女は女らしく生(活)きることを楽しむ」ことを目標としています。

タンゴセラピーと認知症の相性

タンゴセラピーは肌と肌、体と体が触れ合います。身体の感覚から伝わってくることは、相手の身体機能や、疲れだけではなく、その方の感情や、気持ち、緊張感も一緒に伝わってきます。認知症の症状には、言葉ではどう対応していいのかわからないこともあります。

この答えが本当に良かったんだろうか?もっといい言い方があったんじゃないか?と考えることもありますが、体を使ってのコミュニケーションには、そういう迷いがほとんどありません。相手から緊張が伝わってきたなら自分がよりリラックスし、深呼吸を伝え、笑顔を伝えます。

不安を感じていることが伝わってきたなら、自分が自信を持ち、しっかり相手を抱擁することが、相手の安心につながるかもしれません。そのやり取りは、認知症の症状のある方、ない方、関係なく全く同じです。認知症の症状のことを一切考えずとも、身体を使ったコミュニケーションは可能で、その結果、嬉しくなったり、楽しくなったり、モチベーションが上がったりすることは、まるで会話のようです。

認知症の方の身体能力の改善だけでなく、体での会話を楽しめることは、相手を受け入れることそのものであり、認知症の症状を気にせずできるコミュニケーションではないでしょうか?

まとめ

私たちは認知症の方と接する際、「共感することが大切」と習っています。介護福祉士の試験でもそのような問題があるはずです。これはとても奥深いことではないでしょうか?というのは私たちはそれぞれ、十人十色の考え方があるからです。

同じ物事に対して認知症かどうかにかかわらず、様々な考え方をします。要するに、相手とともに感じるためには、自分の考え方をも変えて同じように感じることが必要になってきたりする。

しかし、タンゴセラピーではずいぶん違ってきます。「共に感じる」という点では同じなのですが、それが「直感」なんです。相手の呼吸、表情や体温、気分、気持ちを肌で感じ、動きを感じ、そして自分の動きや意思を直で体で伝える、一緒に音楽を聴く。誰にでも難しい反面、誰でも正直になれる。むしろなってしまう。

それは直に感じるからであり、相手や音楽を感じる時に頭で考える時間や余裕はなく、常に相手、そして音楽から情報が来て、また、自分からも動きという情報を発している。

実際にやってみると、言葉では伝えきれないことがいろいろ伝わってきます。そして、あなたからもたくさんの言葉では伝えられなかったことを伝えることができることに驚くはずです。

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中川健一郎

中川健一郎

北海道三笠市生まれ。東京都在住。20代は世界を放浪し、30代でアルゼンチンタンゴと出会う。アルゼンチンタンゴ講師から、タンゴセラピーがきっかけとなり介護職に転職、社会貢献活動として2016年4月より、 NPO法人日本タンゴセラピー協会の理事として、東京7施設、名古屋1施設での介護施設でのタンゴセラピー活動を行っている。夢は、「人と人のふれあいで、お互いを理解し、社会の平和につなげること」です。
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