認知症専門ナースケアマネの市村です。以前「入浴拒否」をテーマに、認知症の方の感情や介護する側の考え方に焦点をあてた記事をかいたことがあります。
今回の記事では認知症の病型別に、入浴時の特徴をご紹介します。
アルツハイマー型認知症
入浴拒否の80~90%は、アルツハイマー型認知症と言われています。アルツハイマー型認知症の方の入浴拒否の特徴として、入浴そのものより、服を脱いで裸になることに強い抵抗を感じてしまう点が挙げられます。背景には記憶障害、見当識障害などの中核症状と感情の両方が影響をしています。
中核症状による影響
入浴への怖さ、恥ずかしさ、介護者への不満など、負の感情が強くなると拒否という形で表現するようになります。
- 記憶障害
-
- 前回の入浴について覚えていない
- 毎回「はじめての場所」での入浴
- 不快な感情を伴う記憶のみが残っている
- 見当識障害
- 時間の感覚がつかめない
- 自分がどこにいるのか分からない
- 入浴をしてよい場所なのかわからない
- 判断力の低下
- 入浴の必要性がわからない
- 介護者の話している内容が理解できない
- 実行機能障害
- 入浴の手順がわからない
- 手際が悪くなる
- 失行
- 衣類の着脱ができなくなる
- 失認
- 空間認識の障害
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症と比較すると、入浴拒否は少ないと言われています。アルツハイマー型認知症の方と大きく違うのは、服を脱ぐことへの抵抗は少ないということです。
幻視や日内変動の影響
幻視や妄想、思い込みによるものが目立ちます。また症状が変動するという疾患の特徴がありますので、タイミングが合わないと難しいこともあります。
パーキンソン症状の影響
レビー小体型認知症では身体がうまく動かない(パーキンソン症状)ことが、入浴を嫌がる背景になっている場合もあります。身体が動かしにくくなることによって入浴が億劫になり、「入浴は好きだが疲れるから嫌だ」と感じている方もいます。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症の場合は、前頭葉が萎縮することによって脱抑制の症状が目立つため、自分勝手な理由で拒否をすることが多いのが特徴です。例えば「今テレビを観ているから」とか「スタッフのことが気に入らない」などと話された方もいました。
また疾患の特徴として清潔への関心が低下するとも言われていますので、入浴が嫌というよりは必要性を感じていない方が多かったように思います。
脳血管性認知症
脳血管障害の発生した部位によって症状が異なるため、その人によって症状が違いますが、一般的には入浴が好きな方が多いと言われていて筆者もそのような印象があります。
しかし、もともとの性格が影響しやすいため、怒りっぽい、怖がり、清潔への意識が低いなどがあった場合は嫌がる方もいます。
まとめ
認知症の方は、他の疾患と比較すると入浴を嫌がることは確かに多いと言えます。しかしその背景は個人によって様々であり、認知症の原因疾患によっても違いがあることを知っておいていただけると、アプローチのヒントになるのではないかと思います。
次回の記事では、実際にあった場面から入浴ケアの方法を考えていきたいと思います。
前回記事:認知症治療における抗精神病薬の副作用と観察のポイント


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