介護者は知っておきたい!高齢者を介護する上で必要な器質的口腔ケアとは?

by 田中 法子田中 法子 1912views

「むずかしい」
「やらせてくれない」
「特別なことをしなくてはならない?」

「口腔ケアと聞いてどのようなことをイメージしますか?」と聞くと、みなさん同じように回答されます。人によって口の中は異なりますが、まずは「むずかしい」という先入観をなくすことが大切です。そこで今回は、セルフケアの延長線上である高齢者介護時に必要な口腔ケアについてご説明いたします。

前回記事:口腔ケアの基礎知識~口腔概要・のみこみの確認について~

口腔ケアの種類

口腔ケアと一口に言いましても、以下のとおり2種類あります。

機能的口腔ケア
口腔機能を維持したり向上・増進させることを目的とした口腔ケアを言います。笑う・話す・食べる・表情をつくるために、機能的口腔ケアはとても大切です。

  • 舌を動かす「舌体操」
  • 顔の筋肉を動かす「顔面体操」
  • 口まわりを動かす「口輪筋や唇を動かす運動」
  • 唾液腺のマッサージをしてだ液を出やすく促す

口や顔の筋肉を積極的に動かすことによって、唾液の分泌促進による咀嚼、嚥下、発音などの機能の向上を目的としています。

器質的口腔ケア
お口の中の細菌の繁殖を防ぐために、食べかすや歯垢を清掃用具できれいに取り除く口腔ケアを言います。歯についているものだけではなく、義歯が入っていれば義歯やその周りの歯も清掃します。

  • セルフケア(歯磨きなど日常的に行うケア)
  • プロフェッショナルケア(指導やアドバイスなど歯科医師や歯科衛生士が行うケア)

お口の状態を改善し、細菌や汚れの除去を目的としています。

歯ブラシの選び方

できるだけ、柔らかめの歯ブラシを使いましょう。健常の方は「硬くないとみがいた気がしない」とおっしゃいますが、みがいた気持ちと歯肉の状態は違います。特に高齢者の場合は、炎症個所があることで歯肉の周りが薄くなっています。

私はSS(スーパーソフト)からの使用をお勧めしているのですが、力を強くいれてしまうと、すぐに毛先が開いてしまいます。握って持たずに、鉛筆を持つように持ってください。そして、細かく横に動かして10回くらいカウントしてみてください。

毛先が細い歯ブラシ

歯肉の周りや歯と歯肉の境目を清掃するのは、毛先が細い歯ブラシです。歯肉の周りに炎症や腫れがある場合、歯科で診察してもらう必要があります。

炎症や腫れが特段なければ、できるだけ毛先が細めの歯ブラシを使用してみましょう。歯と歯肉の境目の細かな部分まで毛先が行き届くように、毛先をいれて細かく振動させます。

スポンジブラシ

「口唇や口腔内の乾燥ケア」「頬の内側の汚れを落とす」「上あごに付いている汚れを落とす」など場合に使用するのがスポンジブラシです。乾燥している状態でいきなり使用するのではなく、スポンジブラシを濡らしてからしっかりと水分を切り、保湿剤をスポンジブラシの中に入れ込んでゆっくりと口腔内に入れます。

ほうれい線の内側に沿わせて膨らめるように下に移動させます。そして、スポンジをよく洗ってから水分をきり、また保湿剤を着けて下さい。これを繰り返します。

舌ブラシ

舌の上の汚れを落とす場合に使います。しかし、柔らかい毛先の舌ブラシでないと逆に舌の上を傷つけてしまう場合がありますので、毛先はしっかりと見て選んでください。

舌の上の細菌は舌苔(ぜったい)といいます。舌の表面にはちいさい粒が無数にあります。そのスキマに細菌が繁殖するので、表面をなでるだけではなくブラシが必要です。

歯ブラシで歯をみがいたついでに舌の上をごしごしする人もいらっしゃいますが、これは歯の周りの菌を感染させてしまう可能性もありますので避けてください。

義歯の洗い方

義歯は洗うだけではなく、洗浄剤に浸けます。残っている歯の周りも清掃します。主に合成樹脂でできており、吸水性があることから汚れを放置すると細菌が繁殖しやすくなり、臭いもでてきます。

部分義歯の場合は、バネの部分やバネの内側も義歯用ブラシで清掃してください。その際、はみがきこはつける必要はありません。はみがきこの中に含まれる研磨剤の粒子が、義歯の表面に小さな傷を着けてしまい細菌が繁殖することもあります。

下の義歯を清掃するときは、手のひらにのせないで左右どちらかをつまむようにして洗ってください。そうしないと歪んでしまう可能性もあります。また、義歯は勝手に調節せず、必ず歯科医院にご相談してください。

その他の口腔ケア

その他の口腔ケアには、歯科衛生士が行う口腔ケアがあります。器質的口腔ケアと機能的口腔ケアの両方を行います。歯科衛生士は口腔ケアを行う前に、身体の状態や嚥下、食事状態などを質問します。介護保険を利用して、ぜひ専門的口腔ケアを受けていただくことをお勧めします。

さいごに

専門家が行うケアとご家庭や施設で行うケアの両輪で、命の門であるお口を清潔に守って健やかにお過ごしいただきたいです。次回は、介護職・介護を行うご家族にもできる口腔ケアの方法を詳しくご説明いたします。

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田中 法子

田中 法子

歯科衛生士歴35年の中で、一般診療・歯科衛生士学校講師・歯科助手学校講師・大学病院勤務・訪問歯科・審美歯科勤務を経て、口腔の疾患を繰り返すより予防することの大切さに気づき、北欧他ヨーロッパへ留学。最先端予防と福祉を学ぶ。1997年、日本デンタルスタッフ学院を設立。20周年を迎える。現在までの指導実績は54,000名を超える。叔母と母の介護経験から、家族にとって認知症との関わりがこれからの時代は大切であると痛感し、口腔介護アドバイザー認定資格取得講座を開設。学院経営ならびに専門誌への寄稿・TV・報道番組への出演。歯科医師会・看護協会など多方面にて講演中。2016年11月、医療・介護スタッフのための人材紹介会社を創立。
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