「他人事にさせない」参加型レクリエーションで認知症高齢者が笑顔に!

ご高齢者や認知症が進んだ方にも楽しんでいただける音楽会、「音楽の花束」を主催しておりますGOTOです。

高齢者施設にはさまざまな方がおられ、コンサートホールに来られるお客様とは、環境も状況も全く違います。フロアに連れて来られても、いまは眠っていたいと思っている方もいます。演奏曲が好みの音楽でない方もいるかもしれません。座っていると体が痛くなる方もいるかもしれません。そんな環境でのコンサート開催は、明確な目的がなければ意義のないものになってしまいます。

今回は、コンサート開催にあたり、私が気を付けていることについてお話いたします。音楽だけではなく、レクリエーションや日常的なケアに役立てていただけると幸いです。

現場職員の協力なしでは成功しない

「音楽の花束」は、演奏家による良質な演奏を楽しんでいただくことで、心を開き、豊かな気持ちで生活をするためのお手伝いをしたいと考えています。

事前にコンサート内容を磨いておくことはもちろん、外的環境の準備も確実に行わなければトラブルを納められず、充分に音楽を楽しんでいただくことができません。

最初にお伝えしておきますと、コンサート成功の絶対条件は、職員の方と充分にコンタクトを取ることだと考えています。ここにこそ、高齢者施設コンサートの意義、価値を高める大きな可能性が含まれています。つまり外的環境とは、現場職員の協力に他ならないのです。

コンサート開催は誰のため?

コンサートの開催が決定した時点で、現場の職員にコンサートの意図を理解していただくことが重要です。コンサートに最適な時間設定、集まっていただく手はずなど、よい提案や配慮をいただくことが数多くあります。

参加者への事前周知も、「楽しそうですから参加してみませんか」と、なじみの職員が気持ちを高める誘い方をすることで、当日の雰囲気が格段によくなります。

ある高齢者コンサートでは、始まる前から終わるまで、客席にいる入居者さま同士で口論をしていたことがありました。また別のコンサートでは、開始時刻にもかかわらずフロアに参加者が集まっていないため、開始が大幅に遅れてしまいました。この時は初めから楽しみに待っておられた方が、疲れて演奏途中で退室してしまいました。

認知症の症状を含め、参加者の身体的、精神的状態を可能な範囲で伺っておくことが、内容の調整や起こりうるハプニングの予備知識を得るのに効果的です。すぐに立ち上がりたがる方、自分の話しをたくさんしたくなる方、怒りっぽい方、頻繁にお手洗いに行きたくなる方など、何か起きたときに職員の協力も得やすくなります。また、座席も配慮いただけるよう、ご相談することができます。

こうした外的環境が整った状態は、参加者さまによりいっそうの喜びや満足感、充実感を得ていただくことができます。幸せな表情をすることは、介護者にとっての最大の喜びです。

時間の共有が心の距離を縮めます

どこの施設でも職員は忙しいのですが、1人でも演奏の時間に同席いただき、喜びの感情や感動を共有していただくことも大切です。感動という、心が開いているときに寄り添うことで、普段聞けなかったことが聞けたり、信頼関係が築けたりします。

準備が整ったコンサートでは、職員の方々から、喜びの声をいただいています。

「険しい顔しか見たことのなかった方が穏やかな顔になった」
「入居者様のいい笑顔が見られて嬉しい」
「黙って座っていると思ったら声を出して歌い始めてびっくりした」
「発語に問題があってあまり積極的に会話をしない方が、楽器解説のときに感想を声に出してつたえておられた」

認知症の方へのアプローチ方法

一般的に、認知症の方へのケアは、会話ひとつをとっても、個別にしっかりと寄り添い、向き合った働きかけをすることが大切だと言われています。全体に向けてのアクションは「他人事」となってしまい、理解が難しかったり、会話もちぐはぐになってしまったりということがあります。コンサートの場合ですと、じっと座っていることも難しく、音楽を楽しめなくなってしまいます。

コンサート中、ひとりひとりに働きかけることは非常に困難です。しかし、曲の合間に質問を投げかけたり、リズムや掛け声を一緒にとったりする演出に替えることで困難が可能に変わります。なじみの歌を歌うことも、ひとりひとりに働きかける意味を持っています。こうしたやり取りを通じて、「その人に働きかけるコンサート」ができれば、参加者にとってその場は「他人事」ではなくなるのです。

「音楽の花束」コンサートの後、よく職員の方から、「日ごろ10分もじっとしていられない方が、1時間のコンサート中、最後まで静かに座って楽しんでいて驚いた」ということを伺います。また、いつもは静かで目立った行動をしないかたステージに駆け寄り、「自分も歌おうか」と笑顔で参加してくださったという、驚きのハプニングもありました。

どちらも、「これは自分のための場だ」「ここで楽しみたい」と思って下さったからこそのエピソードだと思います。

また、コンサートは決して特別なものではありません。「このあとの時間(日常生活)」へ気持ちの誘導をし、さらには今のこの楽しい時間を職員の方々も共有したということを改めて感じていただきたいのです。なぜなら、施設職員の皆さんがコンサートの場を作ってくださり、そして我々が帰った後、楽しかった体験を語り合い、喜びを分かち合っていただくことができるということが大事なのです。

笑顔は連鎖する!

コンサートは取って付けたイベントではなく、その方々の豊かな生活のための必要から生まれてくるものです。

実際にコンサートが終わってから、脳梗塞による半身不随で少し気難しいと思われていた方が、「とても楽しかったよ、よかった」とおっしゃり、アンケート用紙に動かせるほうの左手を使ってご自分の名前を書いてくださっていたというお話を聞きました。また、筋肉の拘縮が強く、会話も難しい方が、「楽しんでいただけましたか」という問いかけに目の動きで何度もうなずき、喜びを伝えてくださったこともあります。そして、その姿を見た職員の方々の本当に嬉しそうな表情が今でも胸に残っています。

介護の世界にいて音楽をやっていると言うと「音楽っていいですよね」と言っていただくことが多いです。

そうなのです。たかが音楽、されど音楽。音楽にできることはまだまだある。

GOTOの模索はまだまだ続きます。次回もどうぞお付き合いください。

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後藤 京子(GOTO)
「音楽の花束」代表。星美学園短期大学講師。東京音楽大学卒、同大学第2副科オルガン専攻修了、邦楽演奏コース長唄三味線専攻修了。1986年日本ピアノコンクール全国大会第3位、受賞記念演奏会出演、1987年読売新人演奏会出演。NHK邦楽技能者育成会に学ぶ。短大西洋音楽史講師、小学校音楽科教諭を経て2004年より「音楽の花束」のプロデュース活動を始める。2015年きらめき認知症シスター(きらめき認知症トレーナー協会認定)取得。カトリック東京カテドラル関口教会オルガニスト。デイサービス「空の花 高井戸」取締役副社長。>>公式サイトへのリンクはこちら「音楽の花束」
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