介護者は知っておきたいADHD(注意欠如・多動性障害)と認知症の違い

by 中村洋文中村洋文 4838views

認知症オンラインをお読みいただいた方から、ADHDと認知症についての違いについて知りたいと問い合わせいただきました。そこで、簡単ではありますが、ADHD(注意欠如・多動性障害)と認知症の違いについて説明させていただきます。

ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?

ADHD(注意欠如・多動性障害)が世間に注目され始めたのは、ごく最近の事です。日本精神神経学会が、2008年にADHD(Attention(注意)Deficit(欠陥)/Hyperactivity(多動)Disorder(障害))の訳語として示し、2014年に「欠陥」から「欠如」に名称変更しました。12歳以前から不注意・多動性・衝動性の3つの症状を認める発達障害と定義されています。

女性よりも男性に多く、また子どもに多いことでも知られており、主に脳の「前頭前野」と「側坐核」と呼ばれる部分で、神経伝達物質であるドーパミン等がうまく働かないためにおこると言われています。

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前頭前野の働きは、「感情」「計画をたてる」「記憶や気持ちの整理」「想像」「我慢」「動機づけ」「意思決定」と、脳の中でも最高司令塔の役割を担っています。前頭前野がうまく働かないと、会話や読み書き、計算などのワーキングメモリーが小さくなったり、時間に遅れるようになったり、落ち着きをなくしたり、どこに何を置いたのか分からなくなったり、忘れ物をしたり…等が起こります。

側坐核の働きは、端的に申しますと「やる気スイッチ」です。快楽や恐怖にも関係していると言われています。側坐核がうまく働かないと、待つことができなかったり、依存体質になったりします。側坐核は面白いもので、あまりにも働きが強すぎると嘘をつきやすいといった研究結果もあります。

ADHDの特徴を簡単にまとめると、主に3つの特徴があります。

衝動性
  • 後先を考えず、思い立ったらすぐに行動する
  • 会話を最後まで聞けず、割り込んだり途中で終えたりする
  • 抑制(歯止め)がきかず、我慢ができない
  • 自分の順番がくるまで待てない
  • 突然、予測のつかない行動をとる
不注意
  • 忘れ物が多い
  • 決められたルールを守れない
  • 気が散りやすく、キョロキョロしている
  • 整理整頓ができず、いつも散乱している
  • 些細な失敗が多い
  • ぼーと上の空になっている
  • 優先順位をつけられない
多動性
  • とにかく落ち着きがない
  • 身体の一部が常に動いている(顔や頭を触ったり、貧乏ゆすりをしたり)
  • せっかち

認知症との関係

ADHDの特徴には、認知症と同じような症状があります。また、成人のADHD者は認知症を発症し易いという研究結果もあります。

注意欠如および多動性障害(ADHD)に罹患している成人は、European Journal of Neurologyの1月号の研究によれば、変性性認知症を発症する可能性が3倍以上である。
参照元:NEWS MEDICAL

ADHDの詳しい原因はまだ分かっていませんが、先天的に発症している場合もあるとのことです。認知症は、正常に獲得した知能が不可逆的に低下した状態であるため、幼少期や学童期等では認知症は発症しません。

ADHDは大人でも有していますので、認知症と区別がつきにくいところはありますが、脳血管が破れるなど、脳に対して直接的なダメージを受けている訳ではありません。言い換えれば「不可逆的に低下」するのではないということです。

オンリーワンの対応を

ADHDの対応方法としては、認知症者への対応方法と通じるところがあるかと思います。つまり、衝動性、不注意、多動性をマイナスと捉えないことが大切だと思われます。(衝動性=行動力がある、不注意=様々な視点をもっている、多動性=型にとらわれないエネルギッシュ)

ADHDの行動はある種の「癖」であると考え、オンリーワンの対応を心がけると良いでしょう。ADHDおよび認知症へのアプローチで、集団療法も効果がありますが、ADHDにおいては、「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、好きなものにとことん取り組みさせるアプローチも大切だと考えます。

特にADHDの二次的障害として、自信喪失、不安障害、鬱病などが報告されています。認知症のように成人から発症するわけではないので、幼児期から叱責され続け心(脳)が傷ついていることも多いかと思われます。

そのため、長所を引き延ばした対応が必要です。ADHDにも多種多様な行動がありますが、認知症者との対応としての共通事項は「達成感」を感じさせる事です。

ADHD者は、行為の殆どにおいて中途半端になることが多く、達成感を感じることが少ないと言われています。しかし、達成感を感じることでモチベーションの維持にもつながります。社会(他人)が決めたルールに従うことは難しいですが、自分の決めたルール(下記例参照)であれば遂行が可能です。

  • 部屋に置いている物で1か月間触らなかったら捨てる
  • 食事は時計回りの順番で食べる など

達成できた場合、周囲の方が褒めることでモチベーション維持に繋がります。

認知症者は相手が話していることに対して、理解が乏しいことも多いですが、ADHD者の場合は相手の話を理解できます。ただ、不用意な発言によって相手を傷つけてしまう事があります。

認知症者は、話の内容を理解できていないことで会話が続かないことがありますが、ADHD者は話の内容は理解しても、「この発言をしたら相手はどう思うのか」という未来予測が苦手です。

我々は、相手を傷つけないようにオブラートに包んだ話し方ができますが、オブラートに包むことができていないだけなのです。言い換えれば直観的であるだけなのです。その直感的なセンスを活かす対応力が、我々に求められるのかも知れません。

出てくる症状に違いはある?

行動の多くが似ているため、専門家でも区別することは困難であると言われています。ADHDの症状は、成長するにつれ落ち着いてくると言われていましたが、大人でも症状が継続している方もいます。

また、脳血管性認知症は画像診断によってはっきりされますが、高次脳機能障害の可能性もあり、その症状はADHDと似ています。そのため、間違えて診断されることもありますので、神経内科や脳神経外科を受診すると良いでしょう。

認知症とADHDの症状を和らげるのは「運動」

認知症の症状改善に、運動療法が効果的であることは知られてきましたが、実はADHDにおいても効果的であることが、最近の研究結果で分かってきています。

特に有酸素運動が効果的で、子どもにおいてはより集中力や注意力が増す等の効果が示されています。

補足として、私の経験をお話させていただきます。実は、運動を行う以前に、困難に感じていたことがありました。それは、ADHDの方を誘導することです。また、過集中となりやすい方もいますので、負荷量や運動時間に注意する必要があります。私がリハビリテーションとしてかかわった方はわずか数人ですが、いずれの方も集中力が向上する等、良い結果に結びついています。

認知症の方については、運動を行うことへの理解を得ることに時間がかかることがありますが、時間がかかる=接する時間が増えているという認識で対峙させていただいていました。

さいごに

ADHDの方も、認知症の方も「なにができるのか?なにが得意なのか?」という視点で周囲の方は接すことがひとつのポイントであると思います。

我々の杓子定規で、ADHDの方や認知症の方の行動を測るのではなく、プラスの視点で、「得意としているものを見つけ出す」という関わりが求められるかと思います。

前回記事:働き盛りに忍びよる認知症~若年性認知症について知る~

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中村洋文

中村洋文

鹿児島県沖永良部島出身 介護福祉士 / 理学療法士 / 実務者研修教員/その他 病院、知的障害者施設、デイサービス管理者、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等の医療・福祉施設にて勤務。現場だけではなく、行政側の立場としても市役所勤務の中で介護保険にも携わる。介護保険認定審査委員も歴任。現在、福祉系専門学校での講師及び居宅介護支援事業所、訪問看護等の介護保険事業を手掛ける会社の共同代表として活動中。介護医療現場、また行政側の様々な経験をもとに認知症高齢者本人とその家族の想いを教育現場や全国各地での講演会等で発信しています。
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