さあ、タンゴセラピーをやってみよう!基本編vol.2「抱擁」

by 中川健一郎中川健一郎 1208views

前回は、「歩く」をテーマにタンゴセラピーの方法を説明しましたが、今回は、こちらもタンゴセラピーには欠かせない、「抱擁」に焦点を置いてやってみましょう!

抱擁=ハグ=アブラッソ 

日本では馴染みの薄い「抱擁」ですが、欧米では日頃から、家族間や友人間で自然に行われています。タンゴセラピーの生まれたアルゼンチンの母国語、スペイン語では「abrazo / アブラッソ」と言います。ご存知の方も多いと思いますが、「抱擁」には、様々な心身への効果が発見されています。

抱擁とは

抱擁とは、「愛情を持って抱きしめる」ことを言い、言葉を使わないコミュニケーションのひとつです。愛・好意・思いやりなどを伝えるためや、嬉しさを共有したいとき、おめでとうの気持ちを伝えたいとき、悲しみを癒したいときなどに使っています。

タンゴセラピーでの抱擁もまさにこの通りで、相手への愛情・思いやりをもって行います。FreeHug(フリーハグ)という言葉が流行ったこともありますので、ハグといった方が身近な感じがするかもしれません。スペイン語では、「Abrazo / アブラッソ」と言います。

子供の頃はたくさんしていた「抱擁」

馴染みの少ない「抱擁」ですが、実は、みなさん自然に行っています。例えば、赤ちゃんや子どもを「抱っこ」することは抱擁そのものです。それがいつの間にかしなくなり、そしてしにくくなっていくのは、日本の社会の中では、挨拶には「礼」や「握手」をすることはあっても、「抱擁」はしない文化があり、「触れる」ということに恥ずかしさがあるからではないでしょうか?それでも、卒業式や、旅への出発や再会のとき、相手への気持ちを伝えたいとき、私たちは「抱擁」を使っています。

愛情ホルモン「オキシトシン」、心のバランスを整える「セロトニン」と認知症症状の関係

不安やストレスを緩和し、穏やかな気分にする効果のある「オキシトシン」。そして精神のバランスを整え、睡眠や自発性にも関係する「セロトニン」。

抱擁にはこういった心身の健康にとても大切な脳内物質の分泌を促します。そして、認知症でのBPSD※(行動・心理症状)は、周囲の人との関わりのなかで起きてくることから、精神状態を良くするこの「抱擁」は、BPSDの改善に効果が期待できます。

実際の活動では、立位を取るのが難しい方も、座ったままや、その場で手を借りて立ち、抱擁するという方法で行っています。

立位が安定している方は、1曲約3分のタンゴの曲の間、ずっと抱擁が続きますのでその効果がさらに実感できます。(疲れ具合により途中で休むこともあります。)

※主な症状としては幻覚(20-30%)、妄想(30-40%)、徘徊、異常な食行動(異食症)、睡眠障害、抑うつと不安(40-50%)、焦燥、暴言・暴力(噛み付く)、性的羞恥心の低下(異性に対する卑猥な発言の頻出など)などがある。

発生の原因としては中核症状の進行にともなって低下する記憶力・見当識・判断力の中で、不安な状況の打開を図るために第三者からは異常と思える行動に及び、それが周囲との軋轢を生むことで不安状態が進行し、更に症状のエスカレートが発生することが挙げられる。
引用元:wikipedia  BPSD(行動・心理症状)より抜粋

アルゼンチンタンゴは抱擁しながら踊る

タンゴセラピーではアルゼンチンタンゴを元としています。お互いの顔を近づけ、抱擁をしたまま踊ります。慣れないうちは少し離れて組むこともありますが、皆さんが抱擁をできるよう、「立って抱擁をし、音楽に合わせて揺れる」という時間も取り入れています。

さあ、やってみよう!

  1. まずは、相手の前へ行き、視線を合わせます。ご利用者の方は座っていることが多いため、立ったまま話しかけず、まずはしゃがんで視線を合わせ、それから挨拶をします。「こんにちは」「よろしくお願いします」など、状況に合わせて形式的ではなく自然に出る挨拶をしましょう。
    ※認知症の方は視界が狭くなっています。しっかり目の前に行くことで相手の存在に気がつきます。
  2. 立位をとることができる方は、立位の方が自然に抱擁できますので、手を取って立ってもらい、立ち上がったら抱擁します。肩の力を抜いて、思いやりを持って抱擁します。立位を取るのが難しい方の場合は、自分の身を近づけてかがんで抱擁します。腰に負担がかからないよう、膝を緩めて行います。
  3. タンゴ音楽に合わせてゆっくりとリズムを取って一緒に抱擁したまま揺れてみます。
  4. 抱擁した後は、「ありがとうございます」など相手への感謝の気持ちを伝えます。

注意点

抱擁は、形だけのものではありません。お互いの気持ちがあってこそのものです。まずはしっかり挨拶をし、相手を思いやることが優先です。肩の力を抜いて形にとらわれず、自然な抱擁を心がけましょう。

まとめ

タンゴセラピーの「抱擁」も「歩き」と同様、健康な方同士で行ってもその効果が実感できます。
こんなに素晴らしい効果のある「抱擁」は、時間もお金もかかりません。まずは今あなたの身近にいる方と一緒に、思いやりをこめて行ってみてください。

男性同士、女性同士でも全く構いません。その日が素敵な1日となるはずです。

関連記事:さあ、タンゴセラピーをやってみよう!基本編vol.1「歩く」

The following two tabs change content below.
中川健一郎

中川健一郎

北海道三笠市生まれ。東京都在住。20代は世界を放浪し、30代でアルゼンチンタンゴと出会う。アルゼンチンタンゴ講師から、タンゴセラピーがきっかけとなり介護職に転職、社会貢献活動として2016年4月より、 NPO法人日本タンゴセラピー協会の理事として、東京7施設、名古屋1施設での介護施設でのタンゴセラピー活動を行っている。夢は、「人と人のふれあいで、お互いを理解し、社会の平和につなげること」です。
介護のお仕事

Facebookコメント