すべての介護従事者に大切にしてほしい。「相手」と「自分」を満たす介護

こんにちは。グループホームで勤務しています石川深雪です。このコラムを読んでくださっている方は、仕事で認知症介護に携わっている、またはご家族や知人が認知症であるという方が多いと思います。きっとみなさん、いろんなところから情報を得て、たくさん勉強されているのではないでしょうか。

しかし、たくさん勉強すること、資格があることを重視するあまり、大切なポイントを見落としてしまうことがあります。今回は、介護者が陥りやすい、「目の前の人が見えない」状態についてお話したいと思います。

認知症介護の現場でよく聞いた言葉

グループホームで仕事をしていると、周りのお年寄りは認知症の方ばかりです。その中でよく耳にした言葉を紹介します。

夕飯が終わると、順番に就寝介助をしていきます。その時に、「○○さん寝かせてもいいですか?」と必ず聞く職員がいました。その都度わたしは「もう寝たいか寝たくないか、まずは○○さんに聞いて下さい」と伝えていました。

「○○さん、トイレ行ってもいいですか?」と聞かれることもありました。こちらも同じ。「○○さんにトイレ行きたいか聞いて下さい」と伝えます。

知らず知らずのうちに、仕事の相手が「お年寄り」から「職員」になってしまっています。仕事に慣れていなかったり、自分のやり方に自信を持てなかったりということもあるかと思いますが、「認知症だからどうせわからない」と考えている人もいるように思います。

でも、そんなことはありませんよ!寝たきりや認知症でも、うまく表現できないことがあるだけで心はあります。

「知識」があることを重要視してしまう文化

知識が必要ないと言っているのではありません。ただ、知識ばかり重視してしまうと、目の前にいる人が見えなくなってしまいます。

「わたしはこんな資格を持っています!」
「わたしはこれだけの経験があります!」

それは素晴らしいことかもしれませんが、「知識と経験がない」からこそ、気付けることがあります。

以前勤め先で、ターミナル(終末期)のおばあちゃんがいました。そのときの職員で、ターミナルケアの経験があるのはごくわずか。その中でも1番経験を積んだ職員が、他の職員に対して非常に攻撃的でした。誰かが意見を述べると、上司であろうと看護師であろうと、「本当にそうですか?!ターミナルケアとは○○というもので…」「わたしは今までたくさんの方を見てきました!」「あなたの考えは間違っている!」と全く聞き入れず職場の雰囲気がとても暗くなっていました。

そんな中で、最期を迎えなければならないおばあちゃんの心は、どこかに置き去りになっていました。その後は、いつまでも職場の雰囲気を悪くしているわけにはいきませんので、話し合いの場を設け、「穏やかな最期を」という想いのもと、お世話をさせていただきました。

自分の感覚をフル活用しよう

アセスメントの情報、知識も大切です。でも、人に寄り添う介護を目指すとき、あなたの感覚はとても大切になります。認知症の人は、自分の体の異変や違和感をうまく伝えられないことが多いです。

目の前にいる人の動きをよく見ていますか?声をよく聞いていますか?においや体温、肌の状態、いつもと違う点はないですか?具体的に原因を発見できなくても、「なんかいつもと違う」と感じることを見逃さないでください。いろいろ調べた結果、何もなければそれでいいんです。

人間の3大コミュニケーション欲求

  1. 受容…自分を受け入れてもらいたい
  2. 承認…自分の良いところを理解し、ほめてもらいたい
  3. 重視…自分を特別な存在として大切にしてもらいたい

この欲求は、すべての人が最期まで持っているそうです。人は一人では生きていけません。誰かと関わりながら、誰かとつながりながら生きています。みんな、何らかの形でサインを発しています。見逃しそうな小さなサインも、その人をよく見ることによって気付けることもあります。そのために大切にしたいことをひとつお伝えします。それは「あなた自身をよく見ること」です。

わたしは、介護者自身が満たされていないと人の命に寄り添う介護はできないと考えています。いつも幸せで常にうまくいくことは難しいですが、自分の心を満たすことにもぜひ目を向けていただきたいと思います。

よく頑張ったね!今日は何が食べたい?体調はどう?って聞いてみてくださいね。忙しい毎日の中だとは思いますが、時々は自分のことを受け入れて、ほめて、大切にしてあげてください。それはきっと、目の前にいる人を大切にする介護にもつながっていくはずです。

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石川深雪
大学卒業後、15年間介護職として勤務。そのうち10年間はグループホームに勤務し、認知症介護の魅力にひきこまれる。3年前、人間関係のストレスからうつ状態になり、その後回復。それらの経験から、「介護の仕事をする人のサポートをしたい」「認知症介護の魅力を発信したい」と強く思うようになり、2017年1月に独立。現在はLINE@を利用しての仕事の悩み相談や、メルマガブログにより介護に関する情報を発信中。今後はセミナー講師としても活動していく。[保有資格]介護福祉士、社会福祉士、保育士、認知症介護実践者研修修了
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