認知症介護従事者にも有効だった!音楽療法が人に与える影響とは?

認知症介護の悩み…。
外に吐き出すことはできていますか?
相談できる人は周りにいますか?

みなさんは、気軽に介護相談ができる〝ケアローソン〟をご存じですか?どうやら、コンビニのローソンと介護事業がコラボレーションした店舗で気軽に介護相談ができることをコンセプトにしているようです。

介護について相談できる場所って、意外と少ないような気がします。まして、認知症介護の悩みを吐き出して、相談できる環境はもっと限られてしまうのではないでしょうか?

在宅で介護をしている方々の相談窓口となり得るのは、ケアマネージャーや地域包括支援センター、通所系サービスや在宅系サービスで利用している事業所のスタッフだと思います。

しかし、本音で言い合える関係、何でも言い合える関係を築くことは簡単なことではありません。皆様、たくさんのストレスを抱えているのではないでしょうか?そこで今日は、介護をする人たちに対する音楽療法の意味について、お伝えしたいと思います。

実践現場のご紹介

私は現在、介護老人保健施設に勤めています。いわゆる「老健」と呼ばれているところで、介護を必要とする方の自立を支援し、自宅復帰を目指すための場所です。医師の指示のもと、看護師や介護職員の他、リハビリテーション・管理栄養士などの様々な専門職でのチームケアを実践しています。

入所という形で24時間体制のケアを提供する部門と、通所と呼ばれる自宅やサービス付き高齢者住宅などから通ってくる部門があります。神経難病や脳卒中、認知症、転倒し骨折したためリハビリが必要になった方など、対象者の皆様の疾患はそれぞれです。また、認知症の程度もさまざまです。その中で、個別、小集団での音楽療法の実践を行っています。

認知症進行を予防のための音楽療法

まずはじめに、認知症の進行を予防するための音楽療法ですが、「この活動をしたら、必ず認知症の進行が緩やかになります。認知症が治ります」と言うような世紀の大発見(ノーベル賞ものです!)はまだ見つかっていないことを、先にお伝えしておきます。

残念ながら、認知症を治す方法はまだなく、脳を活性化させることが認知症を予防するために進行を抑制するために効果的であるといった段階です。認知症予防の活動でよく耳にするのは、〝あしぶみラダー〟や〝ふまねっと運動〟などの有酸素運動と、脳の活性化を図る活動、計算やパズル、読み書き、麻雀やオセロなどの〝脳トレ〟といった取り組みが有名かと思います。

音楽が脳に与える影響

楽器の演奏は繰り返し行うことが大事ですが、このことが神経的なリハビリに有効なことが分かっています。繰り返し行う動作には、失われた運動機能にかかわる脳の回路を修復する効果があるのです。
引用元:産経ニュース【健康カフェ(60)】より

音楽は、脳のどの部分に働きかけるのかご存じですか?実は、音楽は脳の広範囲に働きかけていることが数々の研究でわかっています。

〝歌を歌うこと〟は、歌詞を覚えるために左脳を、メロディーやリズムを覚えるために右脳を働かせます。歌詞を思い出しながらメロディーやリズムを合わせることは、脳全体を使う作業のため、脳の活性化にとても効果的であると言えます。また、アセチルコリンという物質が分泌されることで右脳が刺激され、記憶力の向上、精神安定、ストレスの緩和に効果があるといわれています。このアセチルコリンは、認知症予防に効果的な物質であると言われています。

βエンドルフィンやドーパミンなど、幸福感や気分の高揚感を生み出す物質の分泌を促し、逆に、コルチゾールというストレスを感じると分泌されるホルモンを減少させる働きもあります。このように〝歌う〟という行動だけでも脳の多くの場所が働いていると言えるでしょう。

下の図は、歌うこと、楽器を鳴らすことなどで活性化される脳の部分を赤い印で示した物です。

活性化されている脳の部分※クリックして拡大

また、映像でお見せできず残念なのですが、ゲーム的感覚を取り入れ、音楽活動の実践の一例をご紹介したいと思います。

〝オーシャンゼリゼ〟の曲に合わせて、ハンドベルという楽器を鳴らす活動です。ご高齢の方にはなじみがないようにも思えますが、意外と聞いたことがあるという方も多くいらっしゃいます。

私は、この曲を時折活用しており、中等度以上の方には、鳴らすタイミングをお伝えしたり、常に音が出ていても違和感を感じない楽器をお渡ししていますが、軽度認知症や認知症のない方、MCI(軽度認知障害)の方のセッションでは、歌詞の横に書いてある色のベルをご利用者の方に鳴らして頂いています。

歌いながら、決まったタイミングで同じ色の楽器を鳴らしていただくという活動は、意外と難しいのです。また、色の指示が、色そのものではなく、言葉で書いてあることもポイントのひとつです。

漢字とひらがな、カタカナがありますが、漢字やカタカナの赤やオレンジは、すぐに色を想像できますが、ひらがなで書かれているものは、「どんな色だろう…?」と考えてしまう場合もあるかもしれません。視覚刺激から楽器を特定し、タイミングに合わせて楽器を振るという動作をすることは、〝デュアルタスク〟という意味で脳活性化リハビリテーションにつながります。

※クリックして拡大

この際に、注意しなくてはいけないのが、「できない」課題にしないことです。できないことを強制してしまうと、「できない=自信がなくなる」ことにつながります。ご利用者の方、参加される方のできることを見極めるアセスメント力、簡単すぎず、難しすぎない課題設定をする創意工夫が求められると感じています。これは、音楽療法に関わらず、介護をしていく上でも大切なことだと思っています。

認知症介護をする人にとっての音楽療法の意味

介護をしている家族の方はもちろん、施設で働いているスタッフの多くもストレスを感じています。お金をもらっていれば優しくできる、お客様だから優しくできるという方もいらっしゃると思いますが、人対人の仕事である以上、スタッフも認知症の方にイライラしたり、介護することに悲しさや辛さを感じたり、モチベーションが下がる思いをしているのです。そんなストレスを発散するために音楽療法を活用することができます。

常に解放しているスペースで小集団の音楽療法を実践していると、時折、スタッフが一緒に参加していることがあります。活動後は、ご利用者様とともにスタッフも晴れやかな表情で「楽しかった」「気持ちがすっきりした」と話しています。

音楽療法は介護する方にとっても有効!

認知症が進行して、攻撃的になっていたり、不安感が強かったり、落ち着きのない方に対してイライラしているスタッフや自分の夫や妻、父や母が認知症になり、できないことが増えていたり、機嫌が悪くなっていることにショックを受けている方も多くいらっしゃいます。

そのようなスタッフやご家族の方が、音楽療法に参加している様子を見ていると、いつもと違う姿、楽しんでいる姿に、嬉しさや安心感、元気ややる気をもらうという声をいただきます。

スタッフや家族の方を集めての集団での音楽活動を実践する事が一番、望ましいかもしれませんが、このような形でも認知症介護をする人にとってホッとする瞬間を提供できることに意義があるのではと考えています。

関連記事:認知症ケアとは生活状態を改善するためにとる行動の過程である

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小森亜希子

小森亜希子

大学、大学院と音楽療法について学んだ後、認知症対応型グループホームに勤務。認知症の方とのコミュニケーションの取り方や終末期について多くのことを学び、音楽が様々な記憶と結びついていること、気持ちを落ち着かせるために有効であることを実感。認知症介護実践者研修、認知症介護実践者リーダー研修を終了。現在、介護老人保健施設で介護業務に携わりながら、音楽療法の効果をケアに結びつける具体的な手段を模索中。同居しているアルツハイマー型認知症の祖母(96歳)と出かけることが日課。
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