認知症看護認定看護師の市村です。今回の記事は、介護現場で認知症の方との関わる際に筆者が大切だと思う3つのことをお伝えします。この内容は、以前自身のブログで書いたことがあるのですが、「当たり前のことだけどやっていないときもあったことに気づいた」「ふだん当たり前にやっていたことが認知症の方の手がかりになっていることがわかった」などの感想を多くいただきましたので、こちらでもご紹介させていただきます。
挨拶をする
認知症になると、見当識障害によって自分の置かれている状況が不明確になります。見当識障害はまず、時間の感覚からわからなくなります。
そのような状況の認知症の方にとって、時間を表す挨拶は時間の感覚をつかむ大切な手がかりになります。「おはようございます」という言葉で今が朝(午前中)なんだな、とわかります。「こんにちは」「こんばんは」も同様です。
たまに夜勤のスタッフで、「おはようございます」という言葉を使う方がいますが、上記の理由から認知症の方を混乱させてしまう可能性がありますのでやめましょう。
自己紹介をする
認知症になると、記憶障害により人の名前を覚えられなくなります。認知症の方の記憶障害が、「忘れる」のではなく「覚えていない」ということを理解しておきましょう。たまに、介護現場で認知症の方に、「私の名前覚えましたか?」「私のこと覚えていますか?」などと聞いているスタッフをみかけることがありますが、認知症の方を傷つけるだけです。
スタッフが毎回、「おはようございます、ここに勤めている看護師の○○です」などと名乗ることで、認知症の方は自分の記憶障害に不安を感じたり焦ったりしなくてよくなりますよね。
場所の見当識障害があるような方は、このときに「ここのデイサービスの」とか、「この施設の」という場所を表す言葉をつけることによって、自分が今どこにいるのかの手がかりとなりますし、「看護師です」や「ヘルパーです」と自分が何者か伝えることによって安心してもらえることもあります。
説明と同意(インフォームドコンセント)
実際にケアをするときに大切になるのが、この「説明」をして「同意を得る」ということです。「お風呂の時間になりましたが、よろしいですか?」「お食事の時間になりますが、いかがですか?」「リハビリの時間になりますが、はじめてよろしいですか?」というように、まず「自分が提供しようと思っているケアの内容」をしっかりと伝えたうえで、やるかやらないかは認知症の方に、「判断・選択してもらう」というのが原則です。
介護者主体のケアに慣れてしまうと、「お風呂に入りましょう」「食事にしましょう」「検査ですよ」など、決定事項を伝えるだけの声掛けになりがちです。日々のケアでは、よほどのことがない限り認知症の方も同意をしてくれます。
同意が得られない場合はなぜ嫌なのか?を聞き、どのようにしたら同意をしてもらえるのか、ご本人と一緒に考えていきましょう。筆者の経験では、この「よろしいですか?」の一言をつけることで、ふだん看護師や介護士に気をつかって言えない方がポロリと本音を話してくれることがよくありました。
「よろしいですか?」「いかがですか?」という短い言葉ですが、それだけで認知症の方は、「自分の意思を確認してくれた」と感じてくれるものです。どんな小さなことでも同意をとる癖をつけるといいですよね。
まとめ
ふだん何気なく行っていることが、認知症の方が不安に感じている見当識障害をフォローし、自尊心を保つことにも繋がっていることを再認識していただけると嬉しいです。改めて「ケア」として意識することで、より専門職としての声掛けになっていくのではないでしょうか。
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