最近、ますます注目されるようになった認知症。そして、若年性認知症についてもメディアなどで取り上げられるようになりましたが、まだまだ周知されていない部分もあります。
そこで、対応方法のヒントになればと思い、今回は若年性認知症について簡単に述べさせていただきます。
若年性認知症について
若年性認知症は、一般的に18~64歳以下の認知症を指します。18歳以前が入らないのは、「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」と、成人を対象としているためです。
認知症は1つの病名ではなく、記憶障害を中心とした脳疾患の症候群を指します。つまり、さまざまな疾患が認知症発症を引き起こしていると言えます。
厚生労働省によると若年性認知症の基礎疾患として脳血管性障害が39.8%、アルツハイマー病25.4%、頭部外傷7.7%となっております。
(参照:若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について)
老年期認知症を含めた認知症全体では、約6割がアルツハイマー病と言われています。次いで脳血管性認知症、レビー小体型認知症と言われています。若年性認知症に限って言えば、脳血管性認知症や頭部外傷によるものが多いという特徴があります。
また、若年性認知症は、治療可能である正常圧水頭症や、代謝異常による認知症も多いことから、医療機関で受診を行い、治療を継続することが大切であると言えます。
現代社会における問題点
若年性認知症を発症された方は、一見すると身体は丈夫なわけですから、他者からみると、「あの方はどうして訳のわからない行動をしているのかしら」とみられてしまいがちです。そのため、本人も家族も周囲に理解してもらえない苦しさの中で生きていくことになります。
さらに、若年性認知症を支える社会的資源が乏しく、また、理解も進んでいません。具体的には、以下3つが現在考えられている問題になります。
若年性認知症支援専門コーディネーターの不足
2016年度より、全国の都道府県に若年性認知症支援専門コーディネーターを配置しておりますが、それでもまだ充足しておりません。
経済的ダメージ
働き盛りでの発症となるので、経済的なダメージが非常に大きく、家族が経済的なサポートをせざるを得ません。核家族が多い我が国では、配偶者は働き盛りの同世代でありますし、子供は児童(学生)であることが多いです。
介護保険の利用
介護保険利用可能な施設は40歳以上であることから、それよりも若くして発症してしまった方については、精神病院などが受け皿となりますが、まだまだサポートできる資源が少ないのも現状です。
有効な治療法
また最近、若年性認知症のリハビリテーションについても盛んに研究が進んでおります。バリデーション療法、リアリティオリエンテーション、回想法などといったリハビリテーションも効果的であることもわかってきました。基本はパーソン・センタード・ケア(その人を中心としたケア)が基本となります。
有効な治療法は人それぞれのため、その人にあったリハビリテーションを実施し、また真剣に考えてくれる専門家を探す必要があります。臨床心理士や作業療法士、精神保健福祉士などの専門家が配置されている医療機関に連絡をとってみるのも良いかと思います。
さいごに
若年性認知症は発症が若年であるため、全経過を考えると20年以上をたどり、家族介護だけでは非常に難しいことが殆どです。そして、社会資源を活用しようとしても受け皿自体が少なく、また老年期認知症患者のように介護保険や医療保険が使えるなど、フォーマルサービスが充足されている訳ではありません。
本人はもちろんですが、その家族も途方に暮れてしまいます。制度の充足はもちろんのこと、精神的なサポートだけでも地域住民の方に担っていただけると、本人、家族はとても励みになるかと思います。
若年性認知症を発症された方やその家族の想いを理解し、そして専門家でなくとも地域に住まわれている方々のほんの少しの言葉がけで救われることも多々あります。支援の輪を広げ、若年性認知症の方に関わる人を増やしていただければと思います。
さらに若年性認知症について知りたい方は【若年性認知症の基礎知識|症状、チェックテスト、原因、予防まとめ】をご覧くださいませ
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中村洋文

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