こんにちは、クラウンアンバサダーの金本麻理子です。
私はクラウンとして、高齢者施設や病院訪問を行い、医療関係者や福祉関係者向けに、講演会やセミナーでお話させていただくことがあります。先日、医療者・介護者の方が集まる勉強会に呼んでいただいたときのことです。
「さすがに嫌になってしまう」というお医者さん
私の話が終ってから、「質問があります」と、ひとりのドクターが手を挙げてくださいました。
質問の内容は、「認知症の男性患者さんのところに行くと、怒鳴られあっちにいけと言われる。なんとか理解しようと努めてはいるが、あんまり続くとさすがに嫌になってしまう」ということでした。
辛いですよね…。せっかく訪問しているのに、「あっちへいけ!」と言われたり、何も非がある訳ではないのに怒られたり、怒鳴られたりしたら、あまり良い気持ちはしないですよね。
いくら相手は患者さんとは言え、愚痴のひとつも言いたくもなります。そこを踏まえた上で、クラウンの観点からの意見としていくつかお伝えしました。
自分独自のキャラクターを作ってみよう!
私は“クラウン”として訪問したとき、クラウンのキャラクターである “クラウンまりちゃん”としてそこに居るのです。音楽が好きで、自由奔放、好奇心いっぱい、精神年齢10歳ぐらいの“クラウンまりちゃん”というキャラクターでいます。
病院や施設に行ったとき、怒号を浴びせられることもありますし、拒否されることもあります。ときにはドキッとするようなことを言われることもあるのです。
そんなときにどうするか?
例えば、認知症のおじいさんに「うるせえー。なんだお前は!!あっちにいけ!」と、ものすごい形相で言われます。普段の私だったら悲しくなったり、腹立たしくもなったり、恐くなったりもします。
でも、クラウニングのときであれば、「あらーごめんなさーい」と言って、あくまでもクラウンまりちゃんのまま去っていくことができるのです。
感情的な攻撃をうけたとき、クラウンキャタクラーはその攻撃から守ってくれるのです。この場合、「あっちに行け!」と怒鳴られたのは“クラウンまりちゃん”であって、私本人(金本麻理子)ではないのです。だからこそ、その部屋を出たとき、感情的な攻撃は受け流して次の場所に向かうことができるのです。
もちろん、医療者や介護者の方に、クラウンキャタクラーになってくださいというのではありません。ただ、こんなときには、「あのおじいさんは介護士の○○に言ったのだ」「あの患者さんは白衣を来ているドクターの○○に怒っているのだ」というように、自分とは違う、それこそドクターキャラクターや介護士キャラクターに言っていると思ってみてはいかがでしょうか?
自分を攻撃しているのではないという自己防衛にもなるかと思います。
クリアリングの活用!
キャラクターに言っていると思ってみても、気持ちがすっきりしない、なんだか心がずしりと重たいときもあるかもしれません。そんなときは、信頼できる職場の同僚や友達に、もやもやしている気持ちを聞いてもらうのもアイデアのひとつかと思います。
私が行っているクラウン養成講座で、受講者に伝えている最も大事なことは、クラウンは心の状態・身体の状態を良い状態にしていることです。
クラウン自身が病気であったり、気分的に落ち込んでいたら、訪ねてこられた方はたまりません。そのため、できる限り最高の状態でクラウニングを行うようにしていますが、気分的な落ち込みは人間なのでどうしようもないときがあります。引きずらないための策として、クリアリングと言って、信頼できる仲間に自分の話を聞いてもらうというプログラムを入れています。
聞く側は、相手をジャッジすることも否定することもなく、肯定して受け止めます。聞いてもらう側は、たった3分間だけでも、もやもやしている気持ちやなにか不安な気持ちを聞いてもらいます。そうすることで、聞いてもらう前後で気持ちの在り方が楽になり、リフレッシュして次の現場、次の仕事に重たかった気持ちを引きずらずに向かうことができます。
自分の心を見直してみよう!
係る人の健康状態、心の状態を良くすることは、とても大切だと思っています。相手の方へのケアやパフォーマンスを充分発揮する為にも、まずは自分の状態を良くしておくことが大事かと思います。
撮影:近藤浩紀
前回記事:クラウニングが認知症高齢者の五感を刺激し、脳を活性化させる!


最新記事 by 金本麻理子 (全て見る)
- 無反応な高齢者の心を動かすのに必要なたった1つのこと - 2017/6/23
- 認知症のお年寄りを笑わせるちょっとしたコツ - 2017/5/15
- 「あなたの気持ちはちゃんと届いている」私が介護従事者に伝えたいこと - 2017/3/24
編集部おすすめ記事
この記事を読んだ人にぜひ読んでほしい、その他の記事