認知症高齢者に自宅を認識してもらうために介護者が行うこと

by 中嶋 保恵中嶋 保恵 5315views

冬至が近づき、日照時間が短くなると、「家に帰りたい」とソワソワしたり、寂しさを訴えたりする高齢者が増えるのをご存知ですか?

認知症でなくても、なんとなくこの時期は寂しくなりますよね。さらに、認知症高齢者の中には、「家に帰らなければならない」と、外に出て行ってしまうこともあります。

どこかへ帰ろうとする重度の認知症高齢者へのケアのポイント

今回は帰宅願望がある重度の認知症高齢者の方に、安心して落ち着いてもらえるようになる、ちょっとしたコツをご紹介します。
(認知症の進み具合に応じて、効果的な対応も異なります)

ポイントは、下記4点です。

  • 混乱している状況をリセットする瞬間を作る
  • 「ここが家」と認識させることよりも、「今、この瞬間に安らげる居場所」と感じてもらう
  • ゆっくり、静かに、優しく、正面から話しかける
  • 味覚、臭覚、触覚など五感で温もりを感じてもらう

キーワードを探せ

本人が安心したり、ふっと我に返れるキーワードがあります。我が家の場合、自分がどこにいるのかわからなくなって混乱している義父に、「おじいちゃん、ただいま」と言います。にっこり笑って、手を優しく触ると、その瞬間に状況がリセットされます。

その他にも、以下のような声かけも効果的です。

「お義父さん、お茶飲みましょうか」
「お義父さん、お菓子食べませんか」

アルツハイマーの人の場合、リズミカルなテンポが効果的なときもあります。「おとうさーん♪たーだいまー♪」と、歌うように声をかけると、目を丸くして、「今日は元気がいいなー」と返事が返ってきます。

要介護4。認知症重度から末期へ移行している段階で、時として通常の言葉が耳に入っていかない時もあり、たまに、変化を持たせてみると、心に響くこともあるようです。

キーとなる環境を探せ

本人が安心できる風景や部屋を見つけておきます。それが視覚に入れば、自分の居場所と認識できる景色です。我が家の場合は、下記のような対応が効果的でした。

  • 家の周囲などの馴染みの景色を眺める
  • 仏様に一緒に手を合わせる
  • 仏間に飾っているご先祖様の写真を一緒に見て話をする
  • 玄関の表札を一緒に読む

キーパーンソンを探せ

混乱しているときはガミガミ説得しても逆効果。このようなときは、この人の言葉なら耳に入るという、状況に応じたキーパーソンがいると助かります。

我が家の場合は、孫の、「じいちゃん、どうしたん。ここは家。僕がおるやろ」で落ち着きます。不安でたまらない場合は、息子の嫁である私が、「お義父さん、一緒にお茶のみませんか」で、ほっこりすればリセットされます。

家族でダメな場合は、近所のSさんに登場してもらい、「ここはあんたげ(家)ばい。(妻の)ミヨちゃんがおるやろが」と言ってもらえば、その瞬間にリセットされます。

それでもダメな場合

昼間ならしばらく散歩する、もしくはドライブして場面を変えます。その後、ホッと一息。一緒にお茶を飲むようにします。

夜なら、明かりをすべて消して、寝静まったふりをします。時計を見せて、「今2時。外は寒いから、今夜はここで眠っていいよ」と伝えます。ホットミルクでホッと一息いれてみるのも効果的。  

夜に騒ぐからといって、介護者が大声で注意しては逆効果です。電気や音はできるだけ控え、五感を刺激せず、安らぎの雰囲気を作ることが大切です。 

さいごに

徘徊を引き起こす原因のひとつに、心の寂しさがあると言われています。専門家の立場として、納得できるケースはたくさん見てきましたが、家族の立場としては、孤独だけが原因と言われるのはちょっとつらい…。

数十年、衣食住を共にし、孫や家族も常に関わり、一緒に美味しい物を食べ、一緒に笑い、時に喧嘩もしながらにぎやかに過ごしている大家族であっても、徘徊することもあるのですよ…。

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中嶋 保恵

中嶋 保恵

山間部で介護職や介護支援専門員として従事し20数年。たくさんの認知症の方と過ごしてきた。家では要介護4の認知症の義父を介護。愉快な、時として大変な毎日を送っている。専門職としてこうすればいいとわかっていても、笑顔で優しくできないこともある嫁の私。そんな毎日の中から見つけた認知症介護の細やかなヒントがどなたかの参考になれば幸いです。社会福祉士。精神保健福祉士。主任介護支援専門員。認知症ケア専門士。
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