認知症の症状別に薬を使い分ける方法【コウノメソッドでみる認知症】

by 河野 和彦河野 和彦 80927views
認知症の症状別の薬の処方の図

こんにちは。名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦(こうのかずひこ)です。前回のコラムでは、認知症の中核症状よりも、周辺症状に着目して治療をすることの大切さとコウノメソッドの基本コンセプトについてお伝えしました。認知症で表れる症状は、人によって千差万別です。当然、症状や病型によって、薬を使い分けなければいけあません。今回は、症状別の具体的な薬の使い方について、解説したいと思います。
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認知症の症状には「陽性」と「陰性」の2パターンがある

認知症には、中核症状と周辺症状があることは、すでにお伝えしました。私は、認知症の治療で、まずもっとも大切なことは、患者さんの周辺症状が、「陽性」なのか「陰性」なのか、見極めることだと考えています。コウノメソッドでは、周辺症状を「陽性」と「陰性」の二つに分け、処方する薬を決めていきます

陽性症状

通常よりもエネルギーが多すぎる状態
徘徊、暴力、妄想、幻覚、過食、不眠、独語、介護抵抗・・・など

陰性症状

通常よりもエネルギーが少なすぎる状態
無気力、無関心、無言、うつ状態・・・など

特に、陽性症状が出る場合、暴力や徘徊などへの対応は非常に気を使うため、介護者が疲れ切ってしまう傾向があります。

まずは、周辺症状を落ち着かせる薬を処方する

このように、まずは患者さんの周辺症状を「陽性」と「陰性」に分け、現れている症状によって、処方する薬を決めていきます。具体的には、次の図のように分けられます。

認知症の症状別の薬の処方の図
考え方の元となっているのは、漢方医学の陰陽のバランスです。現代医学は、病気の原因を究明して取り除こうとしますが、漢方医学では、症状を目安に陽には陰を、陰には陽を用いて偏りを無くします。まずは、全身を中間の状態(「中間証」とも呼ばれます)に戻す、という考え方を採用しています。

なぜかといえば、やはり介護者を救うためです。例えば、陽性症状の出ている患者さんにアリセプト等の興奮系の薬を処方すれば、ますます暴力的になって、ご家族はもっと大変になります。そのため、コウノメソッドでは、まず周辺症状を落ち着かせる薬を処方し、次に中核症状を治療しています。

今回、アルツハイマー型、レビー小体型、ピック病などのような病理診断の話が出ませんでした。コウノメソッドは、こういった診断はあまり関係なく治せるからです。

アリセプトの処方過多には注意が必要

認知症の治療薬として最も有名なのはアリセプトですが、私はこのアリセプトを処方しすぎる現状に危機感を持っています。というのも、認知症には、さまざまな種類があり、場合によってはアリセプトの処方がかえって有害になる場合があるからです。

アリセプトは、興奮系の薬剤です。この薬をピック病の患者さんに使えば、間違いなく易怒(怒りっぽい)が増強し、レビーの患者さんに使えば歩行がしにくくなる上に、幻視も悪化します。

現在、アリセプト等の抗認知症薬には、国と製薬会社が決めたスケジュールに従って増量していく「増量規定」が定められています。しかしこの規定では、患者さん個々の症状を全く考慮されていない、という大きな問題点があります。本来、一人ひとりの症状の経過をみて、薬の処方をさじ加減していく必要があるのではないでしょうか。

私は、このような今の認知症治療の課題点と向き合うため、堀智勝先生(新百合丘総合病院名誉院長)にお願いし、認知症治療研究会を立ち上げました。今後も、最適な治療の可能性を探っていく所存です。

さて、次回は、医師の指示のもとで、介護者が自宅で薬の量を調整する「家庭天秤法」について解説する予定です。
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河野 和彦
1958年名古屋市生まれ。名古屋大学医学部大学院博士課程修了後、医療法人共和会共和病院老年科部長を経て、2009年より名古屋フォレストクリニック院長。新しい認知症ケア「コウノメソッド」の第一人者。認知症治療研究会副代表世話人も務める。代表的な著書に『完全図解 新しい認知症ケア 医療編』、『医者を選べば認知症は良くなる!』、『コウノメソッドでみる認知症診療』等、著書多数
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