親の介護をしたら、相続でメリットはある?ない?

介護というものは、精神的にも肉体的にも負担が大きいものです。子どもが複数いる場合、親の介護をした子どもと、していない子どもとでは、苦労の度合いや貢献度に差があるのは事実です。では、実際のところ、相続において、介護をした子どもと介護をしていない子どもとでは、法律上何か差が生じるのでしょうか?具体的なケースを通して、解説します。

介護をした子ども、していない子ども

松子さん、竹子さん、梅子さんは三姉妹。母親が高齢になり足腰が弱ってきたことから、3人は、交代で母親の介護をすることに決めました。しかしながら、竹子さんと梅子さんには家庭があり、思うように時間の都合がつかず、結局は独身の松子さんが母親を引き取り、介護をすることになりました。介護における精神的・肉体的負担は相当なものでしたが、松子さんは福祉の力を借りるなどしながら、母親の介護を行いました。そして、最終的には、認知症を発症し目が離せなくなってしまった母親について、献身的にお世話し、最期を看取りました。母親の四十九日が終わり、相続の話になったところ、竹子さんと梅子さんは当然のようにこう言いました。

「お母さんの遺産は3分の1ずつ分けようね。」

びっくりした松子さん。「母親の介護がどれだけ大変だったか!この苦労が、相続において評価されないなんておかしいわ。」さて、介護の苦労は、相続において評価されるのでしょうか。

3姉妹がもめているイラスト

親の介護が相続にプラスにはたらくか?それは「寄与分」が認められるかで決まります

今回のケースで考えるべきは、「寄与分」についてです。「寄与分」とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加に“特別に貢献”したときには、相続分にプラスして財産を取得させようとする民法制度のことです。つまり、松子さんの行ったお母さんへの介護が「特別な寄与」にあたるとして、「寄与分」が認められれば、他の姉妹よりも多くの遺産がもらえるということになります。

しかしながら、「寄与分」が認められるための「特別な寄与」は、“通常期待される程度を超える”貢献でなければなりません。日本には昔から家族は助け合うものという考え方が根付いており、親族間には扶養義務があるため、一定程度の介護は扶養義務の範囲内とされてしまうことがあるので要注意です。
 
松子さんとしては、自分の介護が、親族間の通常の扶養の範囲を超えるものであり、自分が介護を行ったおかげで母親が療養費を支払わずに済み、母親の財産の維持に貢献したことを“立証する”必要があります。

相続争いの火種になる「寄与分」とは?

「寄与分」は、法律で定められた制度ではあるものの、相続の場面においては争いになりやすく、実際のところ、この「寄与分」をめぐって、調停や裁判にまで発展することはめずらしくありません。

なぜ、「寄与分」については争いになりやすいのでしょう。遺言書がない場合には、相続人の間で遺産分割協議を行うことになりますが、『ある行為がそもそも特別の寄与と認められるのか』『認められたとしてもどうやって寄与分を金銭的に換算するのか』を明確に決めることが難しく、結局は、遺産分割協議がまとまらないことが多いのです。そうすると、どんどん話がこじれていき、遺産をめぐって相続人間で揉めはじめ、最終的には調停や裁判にまで発展してしまうのです。

相続で揉めないためのポイントを知っておこう!

 遺産相続に発展しないために何ができるのか。まずは、介護をしたら、「寄与分」を考慮した遺言書を作成してもらうことです。すなわち、介護の貢献度合いを考慮して、「寄与分」に応じて、多めに相続財産を与えてもらう遺言書を書いてもらいましょう。遺言書がないと、相続人の間で遺産分割協議を行わねばなりませんが、有効な遺言書さえあれば、その必要はなくなり、揉めることもなくなります。

そして、もうひとつ注意すべきことがあります。それは、親が元気なうちに、遺言書を書いてもらうことです。親の認知症が進行し、自分の行為の結果を判断できない状態に陥ってしまえば、そのような状態で書かれた遺言は無効となってしまうため、遺言書を作成してもらうことができなくなります。

遺言書を書いてもらう時は、多めに相続財産を与えてもらったことについて、他の子どもたちが納得するように、遺言の付言事項で、次のことを説明してもらっておくことが賢明です。

  1. 誰からどのような寄与行為があったか(※なるべく大変さが伝わるように書く)
  2. 寄与分を算定するとどのくらいになるか
  3. ①と②を考慮して遺産分割を行うことにした

そうすれば、他の子どもたちも相続財産の分配に差がある理由が分かるでしょうし、不信感から生じる無用な紛争を防ぐことにもつながります。

年老いた親と子供達が微笑んでいるイラスト

いずれにしても、深刻な相続争いを招かないためには、相続のことについて早い段階からきちんと考え、対策を練っておくことが必要です。そして何よりも、有効な遺言書を作成することをお勧めします。

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芳賀 由紀子

芳賀 由紀子

弁護士。大学卒業後JRに入社。法務室に配属され自分のアドバイスで人が笑顔になることに喜びを感じ,一念発起して弁護士を目指す。法科大学院在学中は特待生として授業料免除を受け,その後司法試験に合格。弁護士になってすぐに経験した遺産分割事件で,親族間の凄まじい紛争を目の当たりにし,相続問題に関心を持つようになる。日々の業務の中で多数の相続案件を取り扱うとともに、「ベスト・クロージング」(有限責任事業組合)において、分野の異なるスペシャリストと共に相続&終活のサポートを行う。NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク所属。著書に「遺言書作成のための適正な遺産分割の考え方・やり方」(同文舘出版)。その他、共著多数
介護のお仕事

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