みんな、 今、きゅんきゅんしてる?
結婚した夫婦の、3組に1組が離婚をしている現在の日本。いろんな状況や事情があるけど、なんだか悲しくなるなぁ。実は、私は普段特別養護老人ホームという場所で働いているのですが、「認知症の配偶者を自分で介護したいけど、心も身体も限界がきてしまった」と、止むを得ずに配偶者を入所させるというケースを多く見ます。
そこで、介護福祉士であるわたしが聴き手として、そんな離れ離れで暮らすご夫婦の繋ぎ役になり、お2人の『きゅんきゅん』してしまうような時間を、どこかに残していけたらなと思い、今回新特集として認知症ONLINEからスタートさせることになりました!!
今回は新特集の記念すべき第1弾です!!というわけで、インタビュアーは、都内の特別養護老人ホームで働く21歳現役介護福祉士の私、陽那と、カメラマンは、世界のフォトグラファー、ヒロキがお送りいたします。なんとわたしの実の祖父母の住む群馬県桐生市に旅してきました!!
★インタビュアー
●川上 陽那(かわかみ はるな)
介護福祉士。2015年に介護福祉士養成校を卒業後、20歳で上京し、都内の特別養護老人ホームに勤務。今年で2年目。2015年11月に都内の介護系イベントに登壇。2016年1月に中央法規出版「おはよう21」の3月号の表紙とインタビューを受ける。2016年3月に公開された、国境を越えた仕事(介護)を描いた映画「つむぐもの」に大きな影響を受ける。現在は施設に勤務しながら、自分が現場で体験していることと世の中の情報とのギャップを埋めるための活動をしている。旅が大好きで、将来は世界で働く「旅する介護福祉士」を目指す。
★カメラマン
●近藤 浩紀(こんどう ひろき)
携帯電話にカメラが付属し始めた頃から撮影する事に興味を覚える。2011年にシドニーに語学留学中、またとない時間を綺麗に写真に残しておきたいと思い現地にて一眼レフを購入。2012年帰国後、独学にてカメラの技術力を高める。2013年に総務省発刊のStatistical Handbook of Japan 2013に掲載される。2014年、”The Blue Universe”がNational Geographic Photo Contest 2014 Week 3にノミネート、National Geographic Photo of the Day(2014.10.24)をきっかけに全世界で紹介される。2015年、”The Blue Universe”がトルコ国営航空Turkish Airlinesの機内誌”Skylife”2015年9月号に掲載される。現在は福祉業界の行政、NPO、事業所を中心に、雑誌やイベントなどの撮影を行っている。Facebookやホームページに作品掲載中。
スタートからきゅんきゅん
治平じいちゃん(以下「じ」)「西の西陣、東の桐生と言われた桐生は本当に栄えていたんだよ。桐生織は当時最高潮だった。桐生は新潟の方から出稼ぎがいっぱい来てたんだよ。はた織りだから、女性がたくさん来てたよ。」
セツ子ばあちゃん(以下「ば」)「私の成人式の着物は全部自分で織ったやつを着たのよ。」
じ「じいちゃんはそれで言うと元の糸を染める仕事をしてたんだよ。染め屋さんってやつ。」
ば「だから、やっぱり初めっから赤い糸で結ばれていたのよね!」


―――ふたりの出会いは?
じ「ある場所があってさ、2人がよく行く場所でね。今で言う溜まり場ってとこかな。必ず仕事が終わった後に行くラーメン屋で、そこのおばちゃんが、あの子どう?ってばあちゃんを紹介してくれたんだよ。うんとさくい(すごくきさくな)おばちゃんで、若い人からもモテるんだよ。当時はよくグループで男女で集まって遊んでたよ。」
―――結婚したのはいつだったの?
じ「昭和39年、オリンピックの年だよね、結婚して50年以上、もう金婚式は過ぎちゃったね!」
ば「当時みんなに結婚を反対されたんだよね、菱村(当時の地名)中で大騒ぎだったよ。わたしのお父さんには、通り口は跨がせないなんて言われたわ。」
じ「まあ色々あったよ。」
―――どうやって認めてもらったの?
ば「認めたも認めないもないだろうね~、最後は(反対していた)お父さんが、籍を入れてきたから!って。勝手に市役所いっちゃってね。笑っちゃうでしょ!」
―――親に反対されてる状況の中で、ふたりを繋ぐものって?
ば「やっぱりじいちゃんが真面目な人だったからかなあ。これといって取り柄がある訳じゃないけど、ばあちゃんが入院しても給料袋を開けないで私のところに持ってくれるの。あれには関心したわ。毎日足を運んでくれたのはじいちゃんだったの。」

当時の恋愛観について学ぶ

―――プロポーズってどんな感じだったの?
ば「当時は、みんな友達で、付き合うっていう概念もなかったし、プロポーズなんかもなんだかよくわからない感じだったわ。なんだろうね、知らぬまに一緒になっちゃったんね。」
じ「どうだったかぁ…(照れながら)でも、昔は今みたいに、愛してるとかスキだとかっていう改めてって感じじゃなくって、じいちゃんは雑談の中で、俺と一緒にやっていけるかなって言ったんだよ。多分周りもそういう感じだったんじゃないかな。とにかく、じいちゃんとばあちゃんは、恋愛期間が長かったから、お互いを知り尽くしていたからね。ようするに、”長すぎた春”だよ。恋愛期間は、ふたりとも春のようにポカポカしていい気分だった。」


―――気になるお互いの第一印象は?
ば「初めて見た時?白いシャツに腕をまくっててストレートのズボンを履いてて、背が高くてうーんとカッコよかったのよ。その時に、ああ、私この人と一緒になるのかなって思ったのよ。」
じ「ばあちゃんは働き者だって紹介してくれたラーメン屋のおばちゃんから聞いてたけど、確かにまめで話っぷりがハキハキしてて、これはいいな~と思ったよ。あとは丈夫な人だな~って思ってたよ。」


50年以上の前のことでも覚えているんだね!
―――ふたりの思い出は?
ば「ふたりきりでどこかに行くってなかなかなかったのよね。行くとしたら親戚や親も一緒に連れてったから。二人で行ったのはあそこが初めてね、あれは四万温泉だっけ?新婚旅行で。でも初めて喧嘩して帰ってきたね(笑)」
じ「そうだったなあ。あとは映画デートかな。ローマの休日観たんだよな!あれは忘れられないなあ。」


インタビュー中に、急にばあちゃんがしゃべりだした
ば「お食事とか誘われたらやっぱりいきたいのよね~。40代は一番危ないよね。女性が一番フラフラしたい時期よね。あはは。やっぱりそしたら行くんだけど、そうゆう時はお父さん怒ったわよね~。」
じ「(知らん顔)」
ば「なによそれ!」
―――………。笑
ば「よく二人で『きみか』って名前の焼き鳥屋に子供を寝かしつけた後に飲みに行ってたよね。でも、いつものカウンターに座って、お店の人に夫婦ですか?って言われても、その辺で会って一緒に来ただけって言って夫婦って言わないのよ。だって、つまらないじゃない。もっといい人がいるかもしれないもの。でもそうするとじいちゃんお家帰って怒るのよね。あはは。」
じ「そりゃそうだろ~。」

ずっと連れ添っているには理由がある!
―――ばあちゃんにとっての青春って?
ば「結婚する前の入院生活は一番の青春だったよね。夜遊び前にシャワー浴びたら髪の毛が乾ききらなくて風邪ひいて、そしたら肋膜炎(胸膜炎)になっちゃって…。でも、病院を抜け出して患者さんと飲みに行ったり、水道山に夜景を見に行ったりして、そこでプロポーズとかもされちゃったりしたのよ。結婚しちゃったらよかったかしら。あの頃は同じ部屋のみんなで牛焼き食べたりトランプやら花札やらして本当に楽しかったのよ~。」
―――ばあちゃんのモテ話はこれくらいにしとこうね。汗
ば「でも、変な話、この人を捨てられなかったんだよね。」

―――今、お互いにとっての夫・妻ってどんな存在?
じ「どんな時も側に居てくれて、最初から今まで一生懸命やってくれる人。今だに一緒にいることができて本当に感謝してるよ。色んなことがあったけど、二人で一緒にやってきたなあ。」
ば「結婚して、すぐに子供が生まれて、その後はお義母さんも倒れて面倒をみていたから、息を吐く間もなく、仕事に夢中になってきちゃったからねえ。今はやっとホッとしたって感じだけど、毎日顔を合わせるのも、いいような悪いような感じね、あはは。」
―――来世も一緒になりたい?
じ「一緒になれたらいいなあと思うよ。(即答!!)できれば、ね。ばあちゃんが一番いいなあ。」
ば「ん~、なんとも言えないなあ。どっちでもいいって感じね。んま、でも、じいちゃんなんじゃない?じいちゃんはうるさいとこはあるけど、自由だから気が楽なのよ。」
2人の歴史
年代 | 2人の歴史 | 時代背景 |
---|---|---|
1935年 (昭和10年) |
治平誕生 | シャープ(SHARP)、富士通(FUJITSU)、松下電器製作所(Panasonic)創立 |
1938年 (昭和13年) |
セツ子誕生 | 昭和の三大水害の1つ、阪神大水害発生 |
1958年 (昭和33年) |
2人の交際がスタート | 東京タワー設立年。「ミッチーブーム」「ロカビリーブーム」「栃若ブーム」「力道山ブーム」 |
1964年 (昭和39年) |
結婚 | 東京オリンピック開催 |
1965年 (昭和40年) |
長女(由美子)誕生 | 3C(車、カラーテレビ、クーラー)時代 |
1968年 (昭和43年) |
次女(雅世)誕生 | 週刊少年ジャンプ創刊。テレビ「巨人の星」「あしたのジョー」映画「ロミオとジュリエット」「猿の惑星」 |
まとめ
認知症ONLINE新特集『きゅんきゅん』の第1弾ということで、私の実の祖父母にインタビューしてみました!!いかがでしたか?
正直、自分の中のばあちゃん像がどんどん崩れていきました。生まれた時からずっと一緒に暮らしていましたが、ばあちゃんのプレイガールな要素は全く感じられなかったし、話してくれたこともなかったからです!!笑
知らなかったふたりの関係性に触れることができて、なんだか得した気分になりました。何よりも、ふたりの絆に「きゅんきゅん」しました。インタビューもそろそろおしまいにしようとしたとき、二人とも口を揃えて、「ここ最近は二人だけでいる時間が増えて、少なからずお互いにストレスを溜めていた。こうやって若い人が会いに来てくれて話をしてくれるのはすごく嬉しい。」というメッセージを私たちに残してくれたんです。インタビューの時間がなにか特別な時間になっていた様でした。
みなさんどうぞ引き続き『きゅんきゅん』をよろしくお願いします♪

川上 陽那

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