ニューカルチャーが定着した今、認知症ケアで気を付けなければならないこと

by 小森亜希子小森亜希子 4425views

皆様、こんにちは。敬老の日、秋分の日を迎え、あっという間に秋が深まる季節になって参りました。いかがお過ごしでしょうか?私は、先月より、認知症介護実践リーダー研修を受講しております。

現場から数日離れて、認知症や認知症ケアについて学びました。とても楽しく、また、自分のケアについて振り返る良いきっかけになりました。その研修を受けているときにふと気がついた事があります。私が、音楽療法を実践するときに大切にしている、「人間は、ずっと音楽的な存在であるということ」「その方が表現することを大切にしよう」という思いが、認知症ケアの考え方に似ているということです。

そこで今回は、この気づきについてお話をしたいと思います。

認知症の方の本質は変わらない

皆様は、認知症を患っている方の本質を考えられた事があるでしょうか?

毎日、落ち着かなく動く方、怒る方、同じ事を繰り返し話す方など、100人いれば100人違う行動をとります。ですが、ひとつだけ共通することがあります。それは、認知症を患っている方の本質は、認知症を患う前から何も変わらないと言うことです。

「できないことを手伝うように」「とんでもないことをするから、かわりにやらないと…」と、介護に携わっているご家族の皆様、施設のスタッフの皆様、考え方はそれぞれ違い、声のかけ方も違うことでしょう。中核症状や行動・心理症状(BPSD)により、違う人格になった様な気がするかもしれませんが、その方にとって、なにも変わりなく接してもらえることが一番、嬉しいのではないでしょうか?

ニューカルチャーケアに変化を遂げた50年

〝その方にとって、一番、嬉しいと感じること、幸せと感じられる様に接すること〟

認知症に対する社会の関心が高まったのは、有吉佐和子の長編小説「恍惚の人」がベストセラーになった1972年だと言われています。

オールドカルチャーと呼ばれたケアから、50年の間に大きな変化を遂げ、ニューカルチャーといわれるケアになりました。

オールドカルチャー ニューカルチャー
質より数を優先 質の高い介護
認知症の人(症状を重視する) 認知症の(内面を重視する)
身体介護中心 身体介護+内面を重視した介護
業務優先の視点 自立支援の視点
スタッフ・センタードケア パーソンセンタードケア

ニューカルチャーに変化したことで、認知症ケアは180度変わりました。しかし、ニューカルチャーの考え方で介護を行うことは、簡単ではないでしょう。介護現場で働くスタッフの多くは、人材不足による日々の忙しさから、疲弊しているのが現状です。在宅で過ごされているご家族も、毎日続く認知症の方のさまざまな行動や言動に疲れを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

気持ちの余裕と、相手に対して愛情を抱かなければ、優しく接することができないのが人間です。そこで、いらいらする気持ちをなくして、穏やかに接すことが認知症の方が穏やかになるポイントなのです。

パーソンセンタードケアについて詳しく知りたい方はこちら

環境要因のひとつに介護側のケア方法も挙げられる

さまざまな症状が、認知症の方の〝生活のしにくさ〟を生み出します。そして、「人+認知症+環境」は生活障害を生み出します。自分の想いをうまく伝えられない、何かをしたいと思っても、何をどうしていいのかわからない…など、やりたいけどどうしていいのかわからない不安やストレスを抱えているのです。

くわえて、ケアしている私たちが、悪影響を与える環境因子になる可能性があります。大きな声やイライラした口調で対応することで、認知症の方をイライラさせ、不安な気持ちを助長させ、落ち着かない気持ちへつながります。

認知症の方は、「伝えられない」かもしれないけれど、〝不快感〟や〝雰囲気を読む〟など、周りのことには敏感になる傾向が強いです。ケアをする立場の私たちが感じるイライラや焦りは、どこかに投げて、穏やかな気持ちで〝その方にとって、一番、嬉しいと感じること、幸せと感じられるように接すること〟を心がけてみてはいかがでしょうか?

介護側の周りの環境を見直してみましょう

たった一度心がけただけでは、変わりません。継続して穏やかに接することこそ、良いケアにつながり、穏やかな時間が過ごせると思います。そして、優しく声をかけることが難しいなら、隣に寄り添い、そっとその方になじみのある歌を歌いかけることも有効かもしれません。

怒っているとき、イライラするときに歌を歌うことは、時に心を安らげる存在になります。また、悲しいとき、辛いときには、元気をつける存在になります。楽しいとき、嬉しいときには、楽しさやうれしさを助長させる存在になります。

皆様にとって、認知症の方にとって落ち着く曲を1曲、見つけておくことは、認知症ケアの場面で最も簡単な方法の1つかもしれません。
ただし、歌いかけるときに押しつけるように威圧的に歌ってしまっては逆効果なのでお気をつけて下さいね!

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小森亜希子

小森亜希子

大学、大学院と音楽療法について学んだ後、認知症対応型グループホームに勤務。認知症の方とのコミュニケーションの取り方や終末期について多くのことを学び、音楽が様々な記憶と結びついていること、気持ちを落ち着かせるために有効であることを実感。認知症介護実践者研修、認知症介護実践者リーダー研修を終了。現在、介護老人保健施設で介護業務に携わりながら、音楽療法の効果をケアに結びつける具体的な手段を模索中。同居しているアルツハイマー型認知症の祖母(96歳)と出かけることが日課。
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