「赤ん坊はそこにいる!」レビー小体型認知症の幻覚への対応方法、ポイント

by 魚谷幸司魚谷幸司 21253views

みなさん、こんにちは。介護福祉士の魚谷です。今回は、介護家族の方から聞かせていただいた介護経験談を中心に認知症、中でもレビー小体型認知症の代表的な症状のひとつ、幻覚の対応について、お話させていただきます。

幻覚とは?

まず幻覚は、大きく分けると2種類あります。ひとつは精神障害によって引き起こされるもの、もうひとつは認知症によるものです。対応の方法はそれぞれ異なりますが、ここでは認知症による症状に絞って、説明させていただきます。

では、認知症の症状のひとつである幻覚とは何なのでしょうか。実際には無いものを見たり聞いたり…や実在しないものを…と多くの書物、ネットの情報では書かれています。間違いではないのですが、それは対応する介護側だけのことであることを頭に入れておく必要があります。

なぜならご本人は、実際に見えたり聞こえたりしているからです。レビー小体型認知症から復活した樋口直美さん著書の、『私の脳で起こったこと』の中で、パンくずが虫に見えた、午後5時に町内で鳴る音楽が違う時間に繰り返し聞こえたと書いておられることからもわかります。

樋口直美さんインタビュー「私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活」

ご主人がレビー小体型認知症の木下さんの場合

木下さん(仮名・76歳)はレビー小体型認知症のご主人をご自宅で介護されている方で、幻覚のひとつである幻視に悩んだと言います。ここでは、木下さんの経験談から、症状やどのように対応したのかお話したいと思います。

「お前は赤ん坊を見捨てるのか!」

ある日、木下さんは自宅でご主人から言われました。

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さっきからそこで知らない赤ん坊が一人でずっと泣いている。お母さんもいないようで困っているようだから何とかしてやれ

赤ん坊などいないこと、ここは自宅であることを繰り返し説明しましたが、ご主人は聞く耳を持とうとしません。それどころか、「お前は赤ん坊見捨てるのか」と怒った口調になってきたそうです。

困った木下さんは、仕方なく赤ん坊を抱きあげ、あやす「演技」をしたところ、思いもよらない言葉をご主人よりかけられました。

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やっぱりお前は優しいなぁ、赤ん坊も笑っているし良かった、良かった

大事なことは「症状」として見ないこと

この件があってから、木下さんは認知症であるご主人が見聞きして言ったことは、よほどの事がない限り否定しないとのことです。「ともに」見える・聞こえる人としていようと思ったと、話をしていただきました。

このことは家族に限らず、仕事として介護をする人にとっても大切なことだと思います。幻覚を認知症の「症状」のうちのひとつとしてみても、何も問題の解決はしないからです。

さいごに

見えないものが見える、聞こえないものが聞こえるとはどんな感じなのか。もちろん経験することはできませんが、一度立ち止まって、見える、聞こえる「世界」とはどういうものなのか、試行錯誤を繰り返しながら考えて対応していく。

これこそ介護の本質で、「症状」として見ることしかできず、薬を飲ませる対応以外に方法を持ち合わせていない医療とは違う、「強み」であると筆者は思います。

前回記事:介護職員と介護家族が連携を取るうえで重要な報・連・相

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魚谷幸司

魚谷幸司

昭和47年生まれ。東大阪市在住。大学在学中よりアルバイトで介護に従事する。卒業後は特別養護老人ホームやデイサービスセンター、認知症グループホームにおいて主任や副管理者等で勤務した後、本年1月に認知症支援事業所を起業。500人、20年以上に渡って認知症と呼ばれる方の声を聴き、今も向き合い続けています。また社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員を所持し5人の成年後見人としても活動しています。
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