前回、自宅で急死していたときの対応方法についてお話させていただきました。
前回記事:介護者は知っておきたい!自宅で急死していたときの対応方法、ポイント
今回は、いざという時慌てないために、前もってできる準備しておきたいことについてお話いたします。
最期の迎え方について、早めに話し合っておく
「元気なうちにしか聞けない事なので、聞きにくいことだけど、今日は大切なことを聞きますね」と、私はいつも切り出します。高齢者の方が「この人は覚悟を持って聞いているのだ」と、こちらの真剣さが伝わると思いのたけを話してくれます。
「延命は希望せんばい」
「ここまできて、チューブにつながれて病院で長生きするようなことはしたくない」
「家で死ねたら本望」
自分の意思を口にすることができる早い段階で、延命や最期を迎える場所ついての想いを確認することをおすすめします。
老々介護の場合は、「もし、あなたに万が一のことがあったら、残された認知症の奥さんの生活をどうしたいと考えていますか?」「万が一の場合、どなたに連絡をしたらよいですか?」と、介護者の方に確認することもあります。さらに身内がおらず、成年後見制度も申し立てていない場合は、「ご葬儀について考えておられることがありますか」と、踏み込んでご意向を確認することもあります。
最後は「話しにくいことなのにお話してくださって、有難うございました」と必ずお礼を述べます。ほとんどの方は、「聞いてくれてありがとう。誰かに話しておきたいと思っちょったばい。これで安心した」と、何とも言えぬ、よい表情をみせてくれます。
家族同士であればなおのことです。亡くなったとき、誰に連絡すべきか、加入している保険や葬儀形式の希望など、エンディングノートで残しておいてくれると助かります。遺産が多い方は、遺された方がもめないよう公正証書で遺言を残す方法があることもお伝えします。折を見て、覚悟を決めて一度は話し合っておくとよいですよ。
関連記事:“もしも”の時に備えよう。「エンディングノート」のススメ
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医療・介護・家族で情報を共有する
延命や最期を迎える場所についての希望を記録に残し、時期をみて遠くに住むご家族にご本人の意向に沿って支援してよいか、確認することもあります。もちろん、本人の同意を得て、主治医やサービス担当者会議で関わる人にも伝えます。通常はこの時点で、ご家族の確認印をもらっておきます。
これで、いざという時にどうしたらよいかチームで共有することができます。そして、いよいよその時期が近づいたとき、本人に見えない場所に明示しておきます。家族の留守中に訪問し、偶然発見した人でも対応方法がわかりますので、その方の意向に添った対応が期待できます。

サポートの幅が広い訪問看護について
日頃から訪問看護を利用しておくと、さまざまなサポートをしてくれます。「いつもと様子が違うけど、どうしたらいい?」「冷たくなってる。どうしたらいいかわからない。すぐ来て!」なんて、何でも相談にのってくれる頼もしい存在です。以下は具体的な利用例です。
- 体調の管理
異変があれば主治医等へ連絡し、すぐに対応策をとってくれます。医師の指示により医療保険での訪問に切り替え、点滴をしてくれることもあります。 - 褥瘡や傷の処置
- 入浴介助や清拭、足浴、着替えやシーツ交換
- 拘縮予防のための運動や嚥下訓練等のリハビリ
- 食事や介助方法など生活全般の相談・指導
- 排便コントロール
便秘の状態や内服の効き具合等総合的に判断し、必要に応じて摘便や浣腸もしてくれます。 - 急変時の訪問対応
- 死去後のエンジェルケア(※)
寝たきりになったら、訪問診療の利用を
「先生、病院に連れていくのが大変になったので、家に来てもらう方法はありませんか?」とまずは主治医に相談します。主治医が訪問診療を行っていない場合は、地域の医師に紹介状を書いてくれます。そこで、バトンタッチとなります。
自宅で診察が受けられるので、患者・介護者双方の負担を軽減できます。医師は体調だけでなく、家族関係など患者や家族そのものを把握していますから、的確なアドバイスをしてくれます。人生最期の大切な時間に寄り添ってくれる力強い味方になってくれますので、自宅での看取りを考えている方や、急変の可能性のある方は、予め主治医に意向を伝えておくことをお勧めします。
最期まで寄り添う…
尋ねにくいことだけど、とても大事なこと。また、気持ちは揺らぎ変わるもの。折に触れ、意向がかわっていないか、さりげなく確認していきます。“その時”を目前にして、「やっぱり病院に行く!」なんてことはよくあることですから、決して周囲が騒がないこと。
ご本人もご家族も後悔しない最期をお迎えできるよう、そっと寄り添うことが何より大切だと思います。
関連記事:「最期は自宅で迎えたい」認知症高齢者の在宅終末期について考える

中嶋 保恵

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