認知症看護認定看護師の市村幸美です。今回は看護師の視点で、認知症の方の身体管理の重要性とポイントについてお伝えします。
身体管理で要注意なのは【中期】
認知症の経過は、大まかに初期・中期・後期とわけることができます。この経過において、筆者の経験から1番注意が必要なのは中期だと感じています。理由として、以下を挙げます。
- ADLが徐々に低下してくるが、自分でできることも残っているので介入が難しい
- 清潔への関心が低下、または、自分で行えなくなる
- BPSDが出現しやすい時期なので、BPSDに伴う事故が多くなる(転倒など)
- 言語機能低下により、身体の不快感や辛さを言葉で表現できない
- いつもと違う症状を、「認知症だから」と認識してしまうことがある
- BPSD治療のため、抗精神病薬を服用する率が高くなり、嚥下障害やふらつきが出現しやすい
- 加齢に伴う身体機能低下がある
- 嚥下機能低下により食事や水分が摂取しにくくなる
中期以降に出現しやすい身体合併症
認知症の方の身体合併症は色々ありますが、現場でとくに多い、「脱水」「尿路感染症」「誤嚥性肺炎」について取り上げて、お伝えさせていただきます。
脱水
脱水は、認知症に限らず高齢者に多い症状です。年齢を重ねると、細胞内に溜めておける水分量が少なくなるので、脱水に傾きやすくなります。とくに、認知症の方は水分摂取へ意識が向かなくなったり、徘徊など活動量があがることで発汗が増えたりすることが原因として挙げられます。
尿路感染症
尿路感染症は、認知症の方が発熱された場合、「尿路感染症か誤嚥性肺炎」をまずは疑うというくらい、発症しやすい合併症のひとつです。原因としては、水分摂取量の低下や免疫力の低下などがベースにあります。加えて、中期以降は排泄の失敗や、排泄はトイレでできても排泄後の処理ができなくなってきます。そのため、陰部の清潔を自分で保つことが難しくなります。
紙オムツを使用する機会が増えてきますが、この時期は羞恥心などから交換することを嫌がることもあり、不潔な紙オムツをつけっぱなしになってしまうことも原因になります。
誤嚥性肺炎
筆者個人としては、「認知症の中期以降は誤嚥性肺炎との戦い」と考えているくらい、誤嚥性肺炎をいかに予防するかが重要だと感じています。誤嚥性肺炎は、後期になるまでは大丈夫と思っておられる方もいるようですが、中期でも注意が必要です。
高齢になると嚥下機能が低下します。そこに認知症が加わることで、抗精神病薬の副作用の影響を受けたり、食事摂取機能の障害や、口腔内の清潔が保ちにくいなどの要因が増えます。とくにレビー小体型認知症では、嚥下機能の低下がアルツハイマー型認知症よりもはやくから出現するので注意が必要です。
認知症である前に高齢者であることを忘れない
認知症があると、さまざまなことが「認知症だから」という理由で片づけられてしまうことがあります。無意識でそのような判断をしていないか、自身で確認してみましょう。
「認知症が進んだから歩けなくなった」のではなく、加齢に伴う筋力低下や骨の異常が原因の場合もありますし、「認知症が進んだからコミュニケーションがとりにくくなってきた」のではなく、加齢により難聴になってきているのかもしれません。同じ症状でも原因が違えばフォローの方法も変わってきますので、「認知症だから」で片づけてしまわず、身体の状態をしっかりとアセスメントして考えていきましょう。
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