こんにちは。クラウンアンバサダーの金本麻理子です。今回は、ケアリングクラウンの活動を体験した介護職員の声とともに、当たり前のようで当たり前ではない、しかしクラウンは自然とできている、高齢者施設訪問に適してたあるスキルについて、お話をしたいと思います。
目次
介護職員から見たケアリングクラウン
「クラウンが施設に来るって言ったって、実際何をやるのかわからないよね」
「ボランティアさんや、パフォーマンスを見せてくれる人と、何が違うんだろう?」
「あんまり大騒ぎされても困るなぁ」
介護職員の方で、ケアリングクラウンの活動をこんな風に思っていらっしゃる方がいると思います。無理もないですよね。クラウンという文化は、もともと日本にはなく、テレビや劇場で見たクラウンのイメージから、派手な衣装でにぎやかに練り歩く!というものを想像してしまいますよね。「正直、利用者さんにとってどうなんだろうか?」という心配もあるでしょう。
利用者の反応を案ずる介護職員の声
私が定期的にコミュニケーション研修を行っている練馬の施設に、クラウンとして訪問した日のことです。スタッフの方は、事前にポスターを貼ったり、利用者さんやご家族の方に宣伝してくださったりと、楽しみに待っていてくださっていたようです。
とは言え、「一体どんな事が始まるんだろう?」という気持ちもあったようです。「始まる前は正直身構えていました。利用者さんはどんな反応をされるのか、何か特別なことが始まり、利用者さんが萎縮してしまうのではないか」と、担当職員さんから言われました。
クラウンを目の当たりにした介護職員の声
クラウンは、利用者さんのお隣に座って話に聞き入ったり、みなさんご存知の懐かしい歌謡曲や童謡を歌ったり、踊ったり、あるいは眠っていられる利用者さんの手を握って静かにそこに居ることもあります。
担当職員さんは、無理なく施設に笑顔が溢れていくのを目の当たりにされ、
「クラウンの人たち、笑顔が自然なんです。そこにいることが自然なんです。何も特別なことはないんですね!」と、予想とは違う光景に驚いていられました。
クラウンの動きや会話、全てが自然だからこそ、利用者さんもスタッフの方々も、「自然でいられました」と、初めてのクラウン訪問をとても喜んでくださいました。
「クラウンの人達は、自然におひとりおひとりに合わせたペース、テンポで係ってくれてその案配が実によいです」と、訪問した病院や施設の職員さんから、よく言われます。
「自然」の正体って?
自然とそこに居てくれる感じがすると言われますが、「実は、コミュニケーションのスキルなのです」とお答えしています。
相手の方にとって、心地よい距離、ペース、テンポ、呼吸の仕方、言葉、しぐさ、声のトーンなどを常に考慮して係っています。相手の目から、耳から、身体から、何が心地よいのか、そのためにどのようなアプローチが良いのかを考えています。ただただ「楽しくすれば良い!」というだけではありません。相手の存在そのものにまずは敬意を払い、相手の方にあった係わりをしています。
コミュニケーションの一例
訪問した施設に入居中の、ある女性に会いました。過緊張で、時折身体がピクピクと反応して動きます。その為、スタッフの方は、常にこの方の身体をさすって緊張を和らげているとの事でした。
その女性の隣にゆっくりと腰掛け様子を見ると、目はどこかうつろで身体は固いままピクピク反応していました。私はその方の手をゆっくりとさすりながら耳元で名前を呼びかけました。すぐに反応はありません。そのうちに私は手をさすりながら、ささやくようにいくつか童謡を歌いました。最初は特に変化はありませんでしたが、「七つの子♫」を歌い始めた時に先ほどまでうつろだった目が少しずつはっきりしてきました。
そして、まるで私の唄に合わせるように口元が動き始めていました。時間にしてほんの5分ぐらいでしたが、その間、身体の緊張はほとんど見られませんでした。スタッフの方もこの光景をご覧になり、「○○さん、ちゃんと聞いていらっしゃるし、歌っていますね」と、いつもと違う反応に気づかれたようでした。
その女性の思い出に触れるような唄だったのかもしれません。あるいは徐々に受け入れていってくださったのかもしれません。正直なところ、理由は分かりません。しかし、こんな風に隣に寄り添ってゆっくりと呼吸を合わせていく中で、心や身体がリラックスして癒されていくこともあります。
感情に訴えることが大事!
相手への係わり方、アプローチの仕方は実にさまざまだと思います
時には一緒に大笑いする
時にはひっそりと話をする
時には一緒に大声を出す
時には一緒にダンスをする
時にはいたずらを仕掛けて驚いてみる
さまざまな感情に訴えかけることで、普段表情がない認知症の方たちの心が動き、自分らしさを取り戻す瞬間があるのではないかと思っています。それを仕掛けていくのも私たちクラウンの役目のひとつ。おひとりおひとりとの係わりを大事にし、その方にあったアプローチをする中で、目覚めさせるものや、気持ちに寄り添うことで孤独から解放できる場所を作っていきたいと思います。
撮影:近藤浩紀


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