認知症介護はなぜ大変なのか?介護で倒れないための心得とは?

大反響「医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得」のシリーズ第2弾「医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得」が廣済堂出版より、7月1日発刊しました。

お祖母様の成年後見人をつとめ、現在も認知症のお母様(要介護1)を遠距離で介護されている、工藤広伸(くどひろ)さんの認知症介護ノウハウがつまった一冊です。本作は5章で構成されており、それぞれの章でとくに印象深かった心得についてご紹介します。

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介護している方の葛藤

認知症の症状のひとつに、物忘れがあります。「何度も同じことを繰り返し言うからイライラしちゃって…」認知症介護をされている方から、よく聞く言葉です。「イライラした挙句、怒鳴っちゃった…」手を挙げるまでいかなくとも、それに近い行動を起こしてしまう場合もあります。

「あぁ、やってしまった」時間が経ち冷静になったとき、介護者は自分を責めてしまいます。感情に任せて怒鳴ってしまった自己嫌悪と後悔。

なぜ後悔し、自己嫌悪になるのでしょう?
それは、認知症という病気を憎んでいるのであって、その人を憎んでいないからです。自分が本当の悪人なら、憎しみだけが支配し、後悔も自己嫌悪もありません。(11ページより)

認知症の症状だと分かっていても、受け止めたりスルーすることができない自分を責めてしまう、認知症介護経験者の悩みの原因のひとつでではないでしょうか。本書では、そんな複雑に絡み合う介護者の心に寄り添い、介護経験者だからこそ語れる内容が詰まっています。

認知症の人との接し方、コツ

著者は介護歴4年目に突入し、自らの経験談とともに、認知症に関する情報をブログで日々発信しています。「認知症介護は辛い、大変…」とよく聞かれますが、著者が発信する情報にネガティブな言葉はなく、あくまで「しれっ」と介護している様子が伺えます。

「トイレットペーパー、洗濯機に入れちゃダメ!」
と声を荒げたくなる場面です。しかし、母を怒鳴ったり叱ったりしないと決めているわたしは、しれっとパンツを洗濯しました。(46ページより)

認知症の方は、怒鳴られた、嫌なことを言われたという、負の感情は覚えていると言われています。だからと言って、怒鳴ったり叱ったりしないと決めていても、なかなかうまくいきません。しかし、なぜ著者はしれっとお母様のパンツを洗濯できたのでしょうか。

初めて見る症状に驚き、悲しみ、悩む介護者は多いです。(48ページより)

「慣れ」という最強の処方せんを、認知症介護する人はだれもがもっているのです。「慣れ」は介護者の成長の証です。(48ページより)

最初から全てがうまくいくはずはありませんし、介護は誰しも未経験からスタートします。いつかは慣れるものと、ゆったり身構えることが介護者にとって必要なのかもしれません。

認知症の便利グッズ

2016年7月5日に開かれた、ヘルスケア分野での事業アイデアを実現するプロジェクト「デジタルヘルスコネクト」で最優秀賞に選ばれた排泄予知ウェアラブル「DFree」。IT技術の発達とともに、よりよい介護を実現していこうと、さまざまな商品が世に出ています。

著者は現在遠距離介護をしているため、監視カメラ「スマカメ」を実家に設置し、お母様の状況を把握しているとのこと。本書では、スマカメの便利すぎる機能を利用することで、介護に興味がない家族への有効性を示唆されています。

わたしのまわりでは、その手軽さからついつい見てしまうという方が多いです。見すぎで心配になってしまう方もいらっしゃいますが、逆に全く介護に興味のない人に「スマカメ」のアプリをインストールしてあげることで、当事者意識を少しでももってもらうことができるかもしれません。(111ページより)

認知症ONLINE編集部も、くどひろさんにスマカメの映像を見せていただきました。まず1番驚いたのはその鮮明さです。カメラ本体が1万円ちょっとで、映像はアプリから。正直これを聞いただけでは、多少なりとも乱れた映像を想像していますよね?在宅介護を望んでいる高齢者が増加しているなかで、このスマカメは介護のスタンダードになるかもしれません!

気になる方は是非チェックしてみてください。

認知症の人と社会のつながり

認知症を発症することで、「もうできることはなにもない」「あとはただ死を待つのみ」と思う、もしくは思われてしまうことが少なくないようです。そうなると、外に出ることが徐々になくなり家に引きこもり、足腰が弱くなり…。

認知症の方の短期記憶(直前の記憶)は残りづらいが、長期記憶(過去の記憶)は残っていると言い、その過去の記憶(学生時代・仕事・家庭etc)は、認知症の方の心をゆさぶる最強のツールだと著者は言っています。

母もデイサービスに行きたくないとしょっちゅういうのですが、
「工藤さんの料理、食べたいってみんながいってるよ」
元寮母であった母へのこの一言で、急に行く準備をします。(115ページより)

また、著者自身が取材され、見知らぬ土地で美容室を開業した認知症の方の話や、潰瘍性大腸炎(劇症型)を患った着付け歴30年以上のベテラン女性の話などもあり、過去の記憶というのは、どんな病気の方をも元気にする、特効薬のような力を持っているのだなと実感しました。

しかし、介護職員の数が足りず、要介護者に寄り添うための時間が確保されない状況下ではなかなか難しいのかもしれません。以前、介護職員の方からこんな話を聞いたことがあります。「本当はもっと高齢者とコミュニケーションが取りたいのだが、食器洗いやシーツ替え、日報作成などに時間を取られてしまっている」と。

介護者の「働く」と「離職」

社会問題のひとつとして、介護離職が挙げられています。アベノミクス新三本の矢のひとつに、介護離職ゼロを掲げているのは、みなさんご存知かと思います。

著者は介護離職をしたあと、一度社会復帰を果たし再度介護離職をした、異色の経歴の持ち主です。本書には、介護をはじめるとき、介護者には3つの選択肢があると書いてあります。

1、仕事と両立させる
2、離職して介護に専念する
3、転職して環境を変える
(138ページより)

育児・介護休業法と銘打っていますが、介護休暇・介護休業についての理解はまだまだ浸透していません。また、育児と介護の違いはいつまで続くのか、時期の見通しが立たないことだと考えています。

そのためにも、介護生活がスタートしたときに、終末期にかかる費用を差し引いて、現段階でどこにどのくらい貯蓄があるのか、また、生活費等の支出状況を把握することが大事です。現在の収入を考え、どの選択肢が生きているのか、客観的にみることが重要になってくるのではないでしょうか。

介護者の心の悩みや苦しみを解決

前述のとおり、認知症介護には苦しみや悩みがつきものと言われています。しかし、本当にそうなのか、本作で気になる箇所がありました。

「くどひろさんの介護はいい話だけど、ほしいのはネガティブな話」
「くどひろさんの例はまれで、読者の賛同を得られるものではない」
メディアにとって、介護と前向きに取り組んでいる人はNGで、壮絶で悲惨な家庭ばかりを探しているのです。(174ページより)

また、真実とは違う内容を報道している場合もあるようです。

「決してリッチではない、それでもしれっと介護ができています。レアケースかもしれません」
後日、テレビのテロップに、こう書いてありました。
「認知症介護で仕事を辞めた男性、収入が減って、生活に余裕がなくなる」(175ページより)

認知症介護についてポジティブな情報が流れないのは、こういった情報操作も一因のひとつなのかもしれません。「介護は楽しい!」そこまでいかなくとも、「こうすれば、少しはラクになるよ」「こういう情報もあるよ」と、介護で困っている人に手を差し伸べることが、今求められていることではないでしょうか。賛同よりも、真実を伝えてほしいものです。

さいごに

今回ご紹介したのは、ほんの一部に過ぎません。著者が経験してきた介護のコツや考え方が、55の心得としてひとつひとつ書かれています。また、著者自身が取材を通し得た情報も盛りだくさんに詰め込まれています。

2025年、3人に1人が認知症もしくは認知症予備軍になると言われている日本で、認知症を正しく理解し、介護者が自らとの向き合い方を考えるきっかけになる本だと思います。

【緊急告知】出版記念講演会&トークセッションの開催が決まりました!


★くどひろさんの記事を読みたい方は…
ブログ『40歳からの遠距離介護』で読む!

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認知症ONLINE 編集部

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