認知症の方を在宅介護する際、ご近所さんが最も心配するのは火の不始末。当事者だけでなく、ご近所も巻き添えにしてしまう危険を、どうやって避けたらよいのでしょう。
物忘れによる鍋焦がしが頻回に起こる段階では、環境を整備することが命を守ることにつながります。今回はその具体的な方法をご紹介します。
前回記事:5つの症例からみる認知症高齢者の独居限界を見極めるポイントとは?
目次
ガスコンロの代替え方法をとる
火の不始末への対策はできるだけ早く、可能であれば、本人の意思決定を促し、鍋焦がしが起こる前に生活習慣を変えておくことをおすすめします。
ガスが流れないようにする
- ロックをかける
- ガスの元栓を閉める
- 屋外のボンベを閉める
など、段階的でも大丈夫です。毎日使うものですので、できるかぎり手間をかけない方が効率的です。ガス会社へも一報入れておきましょう。
ガスコンロを電磁調理器に変える
独居の場合は、鍋など調理器具とあわせて無料給付してくれる自治体もありますよ。是非一度、お住まいの自治体に問い合わせされてみてください。
また、電磁調理器に慣れるためには、早い段階での変更がおすすめ。どうしても交換が無理な場合は、ガスコンロがいよいよ危険になった時点でコンロを外し交換します。そして、料理全般はヘルパーさんにお任せするとよいでしょう。
仏壇のろうそくを電灯式ろうそくにかえる
ろうそくの形をしたセンサー式の電気が、ホームセンターや仏具店に売っています。仏壇近くでバランスを崩した際、ろうそくが倒れ、周囲のものに燃え移ることも考えられます。燃えにくい敷物で、延焼を防ぐ方法もありますよ。
ストーブやこたつ、練炭をエアコン+ひざ掛けに変える
タイマー活用により、温度調整ができ、冬の脱水予防にも効果があります。もちろんタイマーは本人がわからない場所に保管し、ヘルパーさんらが管理するとよいでしょう。
戸口への貼り紙やデイサービスの迎えの職員さんからの声かけ
こたつなどの電化製品を消し忘れることが、火事に繋がることも考えられます。家に貼り紙をして注意を促したり、デイサービスを利用されているのであれば、職員さんのお力を借りることをおすすめいたします。
火災報知機と自動消火器を設置する
これは絶対に必要です!設置を義務付けている自治体もあるため、無料給付や貸与について、各自治体に問い合わせてみてください。
近所に見守りを依頼する
「できるだけご迷惑おかけしないよう、火災報知機と自動消火器を設置しました。ご心配だと思いますが、どうか見守りをよろしくお願いします。」と、対策をとっていることをお知らせしつつ、協力を依頼することがポイントです。
義父の在宅介護を行う上で、ご近所さんの協力は本当に心強いです。近年、隣近所とのかかわり合いが減ってきたと言われています。「最期は自宅で」と在宅の看取りを希望される高齢者が多いことを考えると、ご近所さんの安全を確保するためにも、ご近所さんの力を借りることも選択肢のひとつではないでしょうか。
さいごに
物忘れなど認知症の症状の影響により、火の始末等できないことが増えてきます。住み慣れた自宅で暮らすためには「安全の確保」は絶対に必要です。その中でも火の始末は最も大切なことの一つです。認知症が進んだ方にとって、生活習慣を変えることは一大事で、簡単に受け入れられることではありません。
そのため、認知症かな?と感じた時から、「ここで暮らすために必要なこと」として、本人やご家族とともに、一緒に取り組んでいくことをおすすめいたします。

中嶋 保恵

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