脳血管性認知症と診断された父と一緒に暮らしているすーちゃんです。介護が始まった当初、父は私を怒らせるようなことばかりしました。しかし、私が怒っても父の怒りを倍増させるばかり。「私はロボット!」と感情を出さないようにしました。能面のような顔で父に接していた私が、どうして笑かし介護に辿り着いたのか、今回はそのお話をしたいと思います。
前回記事:笑って父ちゃん!脳血管性認知症の介護体験談vol.1
目次
父の「お~い」に支配された私
「お~い、お~い」
私の姿が見えなくなると父は大声で叫び続けました。ご近所に迷惑をかけるのではないか?父が壊れてしまったことを知られたくない。この頃は窓を開けることもしなくなりました。どうしたら少しでも落ち着いて過ごせるのか試行錯誤の日々が始まりました。
とにかく父の視線の中にいるようにしました。私の食事も、台所で父に背中を見せながら食べました。夜も父の介護ベッドの横に布団を敷いて寝ました。父の「お~い」で起きられないと、ベッドから枕やティッシュの箱が私の身体の上に飛んできて慌てて起きる毎日でした。
散歩の終わりを決めて、ひたすら家の周りをぐるぐる
左半身麻痺で自分では立ち上がれない父。でも身体の中から湧き上がってくるイライラからじっとしていられないのです。そんな時は車椅子を押して、ともかく動きました。最初は家の周りをぐるぐる。たまには違うところに行ったら気分転換になるかと車に乗って連れていくのですが「帰る」「帰る」でどこに連れていっても落ち着きません。なので、やっぱり家の周りをぐるぐる。でもただぐるぐる周るのでなく、
「何周まわろうっかなぁ?」
「今日は5周や」
「はい。5周まわったよ。おしまい。」
と帰るようにしました。終わりって言って、部屋に戻ってもまたすぐに「行こう。連れていけ」となるのですけど。そしたら、また、
「今度は何周にする?」
「今度は10周や」
「わかった。行こうね。」
終わりを意識してもらえるように言い続けました。不穏になった時に落ち着けるパターンを作りたかったのです。なので、なんでも「あと何回。はい終わり」をしていきました。
知人の言葉に救われた私。理解者って必要
夕暮れ症候群は有名ですけど、父も夕方から夜、そして深夜が一番不穏でした。とくに寝ようとするタイミングで起こる不穏はひどいものでした。せん妄ですね。もう、こうなるとどんな言葉も働きかけも父の耳に入らないのです。とにかく寝てもらいたい。でも、そう簡単には寝てくれません。見えない相手と喋り続ける父の足を撫ぜ、背中をさするを寝るまで毎日続けました。
夜中の介護は疲れます。シングル介護、かわってくれる人はいませんからね。そんな時、すごく心強かったのが「困ったら夜中でも電話してきていいからね」って言ってくれた知人の言葉でした。どうしてもだめな時には電話しよう。私の励みになりました。
父ちゃんがイライラするのって「いつもと違うことをする」場合?
生活を見直し、寝る前の準備を毎日同じ順番でするようにしました。足浴・手洗い・顔拭き・歯磨き・トイレ、ともかくこれしたら、次はこうしてって流れをつくりたかったのです。この頃の父は、いつもと違うことがとにかく不安でした。わからない。わからなくなってることがわかっているだけに不安だったのだと思います。なので、生活を一定にして父なりに見通しがもてるようにしたかったのです。
もう一つ、心がけていたのは同じ言葉をかけるということです。認知症の人が同じことを何度も聞くのは、きっと不安からなんだと思ったのです。それなら、こちらから同じ言葉を何度も言えば安心できるんじゃないかとの思いからです。「いつもと一緒よ!」「おなじ。おなじ!!」と抑揚をつけて声をかけ続けました。
そうしてだんだんと、どんな時にイライラしやすいのかがわかってきました。イライラしたあとも、これしたら落ち着くかもってパターンができてきました。私の物真似で笑ってくれたのが、ちょうどこの頃です。もちろんうまくいかずこちらが泣きだしたいって思うことも多かったけど。これで落ち着かなかったら、今度はこうしてみようってちょっと見通しが私にもてるようになりました。
笑顔が嫌いな人なんていないよね、父ちゃん
「私はロボット」の呪文はやめました。認知症になってもお父さんはお父さん、一緒に笑って、いやなことはいやって伝えていこうって思ったのです。今になって思うのは、介護している人=私が笑顔でいることが何より父には大事だったんだろうなってことです。能面のような顔で関わられたら、誰だって嫌ですよね。
笑かし介護の始まりです。
父と一緒に楽しめることを探し始めました。


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