川崎市の老人ホームで起きた、入所者3人の相次ぐ転落死。そのうちの男性(当時87)1人を投げ落としたとして、当時職員だった介護士男性が殺人容疑で逮捕されました。この事件は連日報道され、ニュースが流れるたびに胸が締め付けられます。今回介護家族として思うことを、義母が老人ホームに入所した際に体験したことを交えて綴りたいと思います。
義母、老人ホームに入所する。
自宅で義母の介護をしていたのですが、義父のストレス発散がほとんど出来ずに、気付いた時には持病(糖尿病、肝硬変)が悪化して入退院を繰り返すようになりました。そのような事情もあり、義父は義母を老人保健施設に入所させる決断をしました。
義母が入所した施設は営業を開始して間もない施設だったため、入所者の数も少なく、一人一人へのケアはきちんとされていました。できる能力を維持できるようにという方針だったため、洗濯物をたたむことや配膳は入所者が行ってました。これは、スタッフの適切な見守り・声かけがあるからこそ成立すること。とてもありがたく感じました。
入所から1ヶ月、変わっていくスタッフ
入所からしばらくすると利用者の数も増え、施設全体が騒がしくなりました。それと同時に、スタッフの働きぶりに変化がありました。例えば、次のようなことです。
- 後輩に声を荒げる先輩スタッフが目につく
- 面会に来ている家族の前でも後輩を叱責するようになる
- 若手の介護士さんたちの目の輝きが消える
- 当初は親切だったお年寄りへの声かけが、トゲのある声かけに変わる
- 食事介助、入浴介助、オムツ交換をしながら、スタッフ同士が世間話をする
原因は何なのか分かりませんが、みなさん常に仕事に追われて疲労困憊しているようでした。義母や、他の入居者のお年寄りは、そのような光景のそばで、ただただ黙って静かに座って過ごしていました。そして、義母の認知症はどんどん進行していきました。今もショートステイを利用することが多いのですが、褥瘡が出来たり、目やにがついたまま帰ってきたりしています。
見て見ぬふりをするしかない?家族の心の葛藤
ケアの質が下がったことに対して、施設や働くスタッフに対して、直接要望を出したことはありませんでした。何か起こってからでは遅いということは分かっていましたが、要望=クレームを出すことで、義母への風当たりが強くなってしまうことが怖かったのです。
でも今は、施設の責任者や担当者の方にお伝えすることもできるようになりました。見て見ぬふりばかりでは、義母の安全を守れないからです。多くの場合はケアマネ経由で伝えていますが、よほどの改善を求める時は直接お話しています。伝え方が批判的にならないように気をつけています。
ボランティアや家族も巻き込んだケア体制を
《きょういく(今日行くところがある)》《きょうよう(今日用事がある)》が、認知症を予防するために大切なことだと言われてます。家にこもってじっと座っているだけでは、予防も維持も出来ません。私たち介護家族にとって、介護施設の存在は大変ありがたく、スタッフの方一人ひとりにはとても感謝しています。だから、スタッフの方々には介護の仕事にもっと誇りを持ってほしい。そう思います。
また、今回の老人ホーム転落死事件を受けて、介護現場の人手不足が一層浮き彫りになりました。これは、私が義母の施設で感じていた問題と同じです。
今後、例えば、専門職だけにこだわらず、ボランティアや家族をも巻き込んだ入所者へのケア体制って組めないのでしょうか。資格が無いので出来ることは限られますが、お年寄りの話相手や見守り役になるだけでも、トラブルを予防できたり、ケアの負担が少し軽減されるのではないでしょうか。
私もですが、「介護の質を要望するばかりではなく、自分達も協力したい」と考えている家族は多くいます。そうした声にも耳を傾けてくれる社会になってほしいと願っています。

満枝

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