認知症は治る!近所のお医者さんも実践できるコウノメソッドとは?

【アイキャッチ】コウノメソッドとは?

こんにちは。名古屋フォレストクリニック院長の河野和彦(こうのかずひこ)と申します。これまで、認知症の専門医として31年間、数万にのぼる認知症の患者さんと接してきました。また、家族会や学会に参加し、多くのご家族の声も聞いてきました。「コウノメソッド」とは、私が提唱する認知症の薬物療法です。認知症臨床ひと筋の道を、試行錯誤しながら歩む中で確立した治療法で、認知症の専門医でなくても、間違いなく処方できるマニュアルです。認知症の家族を抱える方たちの困難を少しでもやわらげ、希望を持っていただきたいという気持ち、また「認知症は治らない」とされている現状に警鐘を鳴らす気持ちで、提唱しています。この連載では、コウノメソッドについて、具体的な事例も交えて解説していきます。

なぜ、認知症は「治らない」と言われるのか

認知症は治らない―――この発想から抜け出すことができない医者は、残念ながら今も多くいます。それは、中核症状の治療にこだわるがゆえです。認知症治療にあたる多くの医師にとって、「認知症を治す」とは、脳の組織や機能そのものを回復させるか、中核症状を改善させるということにほかなりません。しかし、現在の医療では、どちらも困難です。認知症を発症した場合、中核症状は進行していきます。しかし、本当に認知症は「治らない」のでしょうか。私は、中核症状を改善することが真の医療と思い込むと、「治す」ことの本質を見失うと思っています。

中核症状よりも周辺症状に着目する

私は、認知症で問題が大きいのは、中核症状よりも周辺症状だと考えています。これまで認知症臨床ひと筋の道を歩む中で、目の当たりにしたのは、認知症の家族を抱える人たちの苦しみでした。じつにたくさんの家族が、介護の心労で患者本人と共倒れ寸前になっていました。現代医学的な狭い見地から治すことにこだわると、アリセプト(後発薬:ドネペジル※以下アリセプトで統一)をはじめ、中核薬をどんどん増量していくことになり、患者さんをかえって治せなくなります。中核症状は進行しても、周辺症状は治療によって抑えることが可能です。ですから、私の治療で重視しているのは、周辺症状の改善です。また、そこをメインに治療していくと、中核症状も回復するケースも往々にして見られます。「進行性だから治らない」と諦めるではなく、「どの患者さんも必ず治る」という気持ちで臨まなければ、認知症を治すことはできません。

現代医療で見落とされ続けてきたアリセプトの副作用

1999年に登場した認知症治療薬アリセプトは、認知症治療に革命をもたらしました。これまで不可能だった中核症状(記憶低下、判断力障害、失見当など)を治せる、と医師のモチベーションも上がったのです。しかし、アリセプトには、興奮を促す特徴があり、患者が怒りっぽくなったり、歩きにくくなったりと言う副作用がありました。私が問題だと考えているのは、学会がアリセプトの副作用を積極的には広報せず、むしろ増量するように指導してきたことです。その理由は学会が製薬会社の寄附金を受けているからという面もあるように思います。

認知症の約4割の患者は、「怒りっぽい」傾向にあります。その患者に、興奮系のアリセプトを処方すれば、逆効果です。大切なのは、抑制系と呼ばれる落ち着かせる薬を処方すること。しかし、これまで政府はそのことを指導してきませんでした。現在も、副作用で苦しんでいる患者さんは、未だに多く存在します。

コウノメソッドのコンセプトとは

コウノメソッドでは、患者が興奮していたら抑制系の薬剤を、落ち込んでいたら興奮系の薬剤を投与します。すべて、高齢者の安全域の狭さを考慮した少量投与です。その上で、コウノメソッドで大事にしている考え方の3本柱は、次の3つです。

①介護者保護主義

患者と介護者のどちらかしか救えない時は、介護者を救う(記憶力を高めることより、おだやかにさせる薬を優先させる)

②家庭天秤法

薬の副作用を出さないために、医師の了解、指示のもとで介護者が薬の量をコントロールする(どんな専門医であっても、すべての患者にちょうどいい薬の種類や量を一発で出すのは難しい)

③健康補助食品の活用

フェルガードなど保険薬より確実に効果を示すサプリメントを推奨する

現在までに公開しているコウノメソッド実践医は約300名ですが、参考にしている医師は大勢います。多くの医師がほかの多くの疾患を診ながらの認知症診療ということで、できるだけ分かりやすく処方術を説明し、CT・MRIを持たない開業医さんでもおおかた鑑別診断できるような助言をしてきました。認知症はまだ未開の分野ですので、精神科や神経内科に行っても上手に処方してもらえるという保証はありません。コウノメソッドを知っている医師なら家族の悩みに耳を傾け、穏やかで笑顔の見られる患者に変えてくれることでしょう。

次回のコラムでは、具体的に、どの薬を用いて、どの症状を治すのか、ご紹介する予定です。

第二回:周辺症状別に薬を使い分ける方法【コウノメソッドでみる認知症】

第三回:家族が薬の量を加減する『家庭天秤法』とは?【認知症の薬物療法】

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河野 和彦
1958年名古屋市生まれ。名古屋大学医学部大学院博士課程修了後、医療法人共和会共和病院老年科部長を経て、2009年より名古屋フォレストクリニック院長。新しい認知症ケア「コウノメソッド」の第一人者。認知症治療研究会副代表世話人も務める。代表的な著書に『完全図解 新しい認知症ケア 医療編』、『医者を選べば認知症は良くなる!』、『コウノメソッドでみる認知症診療』等、著書多数
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