はじめまして。現在80歳、アルツハイマー型認知症の義父を介護している中嶋保恵です。家族が認知症かもしれない。そう思った時にまず考えるのが、どの医療機関に、どうやって診てもらうか。私の経験を通して感じたことを綴りたいと思います。
認知症専門医でなくてもいい
義父が認知症?と感じ始めた65歳の頃から、病院とどうお付き合いしていくか考えてきました。認知症の治療を始めるために専門医(※)にかかることが望ましいのは百も承知でした。けれど、私が住んでいる地方では、認知症を自覚していない義父にとって、専門医の受診のハードルは高かったのです。
日本認知症学会が2007年に制定した制度で、神経内科や精神科、リハビリテーションなどの専門医が様々な基準を満たす場合に認定されます。
日本精神科病院協会サイトより https://www.nisseikyo.or.jp/education/shokubal02/
そこで、医師を探す条件を、次のように決めました。
- 専門性よりもお互いの「信頼性」に重きを置く
- 脱水予防など、普段の体調管理についての相談ができる
- 医療だけでなく入院や車の運転等、生活面の相談もできる
- 介護者のストレスの受け止め場としての相談役になってくれる
一番必要なのは、信頼できる主治医がいることだと考え、結果、町医者として老若男女が、怪我でも風邪でも受診している病院の先生を主治医にしようと決めました。
主治医からの声かけで、認知症の検査を受けてもらうことに成功
さあ、かかりつけ医も決まり、次の問題は、どうやって認知症の診断を受けてもらうかでした。まだまだしっかりしている義父。騙して認知症の検査が出来るはずもなく、主治医と相談しながら時期を探り、知恵を絞りました。
「先生、、正月だからと口実をつけ、大きな病院に脳の検査に行くように勧めてもらえませんか?」
それは名案だと、主治医は最もらしく義父母に検査を勧めてくれ、義父母は医師の言葉を素直に受け入れ、大病院で検査を受けることができました。
後日、検査結果が出たため、主治医が画像を見せながら義父に結果を伝えました。
「残念なことながら、此処のところ(脳の一部)が空洞になっています。」
アルツハイマーという病気について分かりやすく、ショックを受けない程度の説明をし、治療が必要なことを本人が受け入れられるように説明してくれました。そして最後に、「大丈夫です。病気の進行を遅らせる良い薬がありますから、それを飲んでみましょう。」と優しく微笑んでくれました。「先生が見つけてくれて早く治療が開始できてよかったですね。」と私は後押ししました。こうして義父は外科で認知症の治療を開始することになりました。
本人に寄り添って、生活の舵取りをするのが、家族の役割
治療がはじまった後は、医師との良い関係がつくれるよう心がけました。義父の場合は、持病である前立腺がんの治療をいつまで続けたらいいか、車の運転をどうやって止めてもらうか等、認知症以外の課題がたくさんありました。私はその都度、かかりつけ医のアドバイスももらい、本人の意思も確認し、判断を重ねました。
本人の心身の状態と、安全確保や家族の介護負担等、多くのことを天秤にかけながら、今後の義父の人生を本人とともに誰かが選択していかなければならないことは明白でした。その役割を担うのが、家族。かかりつけ医をはじめ、周りの知恵や手を借りることを意識しながら、その後今まで在宅介護生活を続けています。
さいごに
認知症と上手に付き合っていくためにまず必要なのは、本人が「認知症」の治療を受け入れることができ、その後の人生をサポートしてくれる「信頼できる主治医」を、本人と一緒に見つけること。
家族だからこそ、本人と主治医の間に糸をつなぎ、何重にもつないでいくように「信頼できる関係」を意図的に作ることが出来ると思います。

中嶋 保恵

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