認知症の睡眠障害を防ぐ夜のケア5つのコツ

by 市村幸美市村幸美 22895views
一晩中ぐっすり眠ってもらうための認知症ケアとは?

認知症看護認定看護師の市村です。前回に引き続き睡眠へのケアについてお伝えしたいと思います。前回は睡眠のための昼間の過ごし方を中心にお伝えさせていただきました。今回は生理的なメカニズムから考える「夜の援助」について考えてみたいと思います。
前回記事:認知症の睡眠障害を防ぐ昼間の過ごし方5つのコツ

1.痛み、痒み、便秘…寝る前の不快症状チェック

身体の不快症状
認知症の中期以降になると、痛みやかゆみなどの苦痛や不快を言葉で表現することが難しくなります。身体症状は睡眠障害の大きな原因になりますので、言語障害のある認知症の方の場合は不快があっても言えない場合があるので介護者がよく観察することが大切です。

高齢になると昼間はさほど目立たなくても夜間になると皮膚のかゆみが出る場合がありますので、寝る前に保湿剤やかゆみ止めを塗るとよいでしょう。身体症状は放っておくとせん妄の原因にもなりますので、痛みだけでなく便秘や尿閉などにも注意をむけて観察しはやめに対処することが安眠につながります。

2.やさしい夜の光で交感神経を休める

間接照明
睡眠には自律神経と呼ばれる神経が深く関係しています。自律神経は活動の交感神経と休息の副交感神経の2種類があり、本来は昼間に交感神経が優位になり、夕方から夜になるにつれて副交感神経が優位になるようになっていますが、このバランスが乱れると、睡眠に悪影響が出てきます。

蛍光灯の強い光は、脳が昼間と勘違いして交感神経を優位にさせてしまいます。夜になっても交感神経が優位のままですと、睡眠に悪い影響がでるだけでなく、興奮しやすいなどの精神症状にもつながることがあります。可能であれば寝る2~3時間程度前からオレンジ色の間接照明を使用すると副交感神経に切り替わりやすくなります。余談ですが筆者もこの方法を行ってから睡眠の質が上がったことを実感しています。

3.寝る1時間程度前に足を暖める

足浴
人間の体温は1日のうちで変動があり夕方18時頃に一番体温が高くそこから体温が下がってくるときに生理的に眠くなるようになっています。介護でもその「体温が下がるときに眠くなる」というメカニズムを利用しましょう。寝る1時間程度前に入浴ができればそれが1番よいのですが、介護を必要とする方は夜に入浴することは少ないと思います。介護施設やデイサービス、病院では昼間に入浴することがほとんどでしょうし、在宅でもヘルパーさんが来てくれる昼間の時間帯に入浴が行われると思います。

そのため夜の足浴がおすすめです。洗面器などに少し熱めのお湯の入れ5~10分程度足を暖めるだけでも効果があります。寝る1時間程度前に少し体温を上げることでその後体温が下がるときの眠気を利用することで自然な睡眠へ導ける可能性があります。

※ここでいう体温は深部体温のことをさしています

4.眠気がないのに布団に入るのを避ける

眠くないふくろう
筆者が認知症病棟に配属になったばかりの頃、「まだ眠くない」という患者様に「布団に入ったら眠くなりますよ」と言って無理に布団に入らせていたことがあります。今思うとよい援助ではなかったと反省しています。

眠れないまま布団に入っていることで「眠れない」という不安やイライラが強くなり交感神経を優位にさせてしまいます。寝付けないというのは人に強いストレスになりBPSDを引き起こす原因にもなりかねません。また無理に寝かせようとして睡眠薬を使用するとせん妄とよばれる精神症状が出現したり足元が不安定になり転倒につながってしまったりすることも考えられます。在宅介護でも介護施設でも自然に眠くなるまで待つようにしてみましょう。

5.ホットココアを飲んでいただく

ホットココア
先述した「眠くなるまで待つ」と言っても疲れている家族にとっては早く寝てほしいと思うのが正直なところでしょう。そこでひとつおすすめしたいのがホットココアです。これは以前一緒に働いていた年配の男性ヘルパーさんから教えてもらった方法でエビデンスはないのですが、筆者が色々試したなかでは1番効果がありました。

温かさと甘さの相乗効果なのか寝付けない方だけでなく、夜間落ち着かず不安そうな方にもよく効きました。筆者個人としてはココアを飲んでいただきながらゆっくりお話をすることがどんな睡眠導入剤よりも効果があると思っています。

さいごに

2回にわたり睡眠へのケアをお伝えさせていただきました。筆者は看護師ですので睡眠薬についてはほとんど触れていませんが、安易な睡眠薬の使用は注意が必要ですし、逆に過度に怖がる必要もありません。医師とよく相談の上適切に使用することが大切です。睡眠薬は医師にお任せをして看護・介護職はまずお薬の前にできることを考えていきましょう。このコラムが少しでもお役に立つと嬉しいです。

前回記事:認知症の睡眠障害を防ぐ昼間の過ごし方5つのコツ

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市村幸美
准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症専門のナースケアマネ市村幸美の【美Happy介護】』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。
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