【調査結果】介護経験者70%が反対|認知症徘徊で起きた事故、家族は賠償責任を負うべきか

【調査結果】介護経験者70%が反対|認知症徘徊で起きた事故、家族は賠償責任を負うべきか

2007年愛知県で起きた、認知症で徘徊中の男性(当時91)が列車にはねられ死亡した事故で、JR東海は、遺族である男性の妻(93)に監督責任があるとして、損害賠償を求めています。今月2日最高裁判所で公判が開かれ、判決が3月に控えています。認知症の人が起こした事故について、介護家族はどこまで責任を持つべきなのでしょうか。今回は、認知症の介護経験者100名にアンケート調査を実施しました。

アンケート結果

徘徊中の事故で発生した賠償金を介護家族(遺族)が支払うべき、という今回の第二審判決への賛否を教えてください。

問1 徘徊中の事故で発生した賠償金を介護家族(遺族)が支払うべき、という今回の第二審判決への賛否を教えてください。

「賛成(家族が賠償すべき)」が8%と極めて少数派なのに対し、「反対(家族が賠償すべきではない)」との意見が71%と多数を占める結果となりました。寄せられたご意見の一部をご紹介します。

【反対派の意見】

■家族への責任で賠償請求するのは、少し納得できません。今回の案件に関しては、徘徊を未然に防ぐ手だてはあったかもしれません。しかし徘徊するからと行動範囲を抑制してしまうことで、進行を助長する可能性は大きいと思います。 でも徘徊により、このような事故を起こしてしまうことに関しては誰も予測不確定だと思います。 監督責任は小さいと判断してほしいです。(45~49歳/男性)

■意図的に認知症という病気を選んだわけでは無いこと、死亡した本人の生活環境が老々介護であり見守りが行き届いていないこと、そうした生活背景にいる人に賠償責任を問うのは、道理に反するのではないでしょうか。(25~29歳/男性)

【賛成派の意見】

■家族に賠償責任あり。 逆に子供が同様のことを起こしたら親が責任とりませんか? 認知症がある。認知機能の低下がある。 もう家族ではないんですか? 家族ならば、家族が責任を取る。認知機能の低下のために万引きをしたら、子供が、配偶者が頭を下げませんか? 今回の事故で払わないと言った家族は、徘徊で事故にあった家族を見捨てたようにしか思えません。(30~34歳/女性)

■起こした事故についてはある程度の割合の賠償責任はおわなくてはいけないとおもいます。認知症だから賠償責任はないというのはちょっと違うとおもいます。 家族の監督責任については自宅だと100%看ることは不可能であるためGPS等での位置情報やセンサー等を使用して外出の管理等を国や自治体などの援助や地域社会での情報の共有、理解、協力などが必要なのではないかと思います。(45~49歳/男性)

認知症の人を介護する家族の「監督責任」の有無についてどう考えますか。

問2認知症の人を介護する家族の「監督責任」の有無について、どう考え ますか。

介護家族に「監督責任なし」との回答が17%に対し、「監督責任あり」との回答が65%と大きく上回る結果となりました。

この結果について、「監督責任なし」のうち「全くない」が14%、「どちらかと言えばない」が86%。また、「監督責任あり」のうち「当然ある」が42%、「どちらかと言えばある」が58%といった内訳でした。認知症ご本人の監督責任は基本的に家族にあるものの、すべての監督責任があると考えている人は少数派ということが伺えます。

問1の結果と合わせてみると、「認知症の人を介護する上で、家族にはある程度の“監督責任”はあるが、“損害賠償”支払いまで認めることは過剰」と考える意見が多いことが分かりました。

今後また認知症の人による事故で損害が発生した場合、どう賠償するのが妥当だと考えますか。

問3今後今回と同様、認知症の人による事故で損害が発生した場合、どう賠償するのが妥当だと考えますか。

今回の鉄道事故と同様に、今後また認知症の人による事故で損害が発生した場合、賠償はどのようにしていくのが妥当か、という質問です。これに対し、トップの回答は、「国、公的救済制度の創設」(80%)。続く二位は「民間保険制度の拡充」(59%)という結果。「介護家族、親族が賠償する」は10%、「鉄道会社が賠償する」は3%で、いずれも少数意見となりました。

個別の問題ではなく、行政、国、社会全体の問題として公的な制度で保証すべきといった意見が目立ちました。「その他」の意見の回答の一部をご紹介します。

■認知症と認定されてるなら介護保険で払ってもらいたい。家族(本人)1割負担で。。なんのための介護保険なのか?なんのための病名なのか?。病気なのだから。。。家族責任なら拘束や虐待がまかり通るようになると思いますが。。

■国で、在宅介護を推進しているのだから、今回のような場合の救済がないのは、おかしいと思う。(50~54歳/女性)

■家族には、一定の範囲の監督責任はあると思いますが、無制限に賠償責任を課すべきではないと思います。訴訟になったケースの場合、奥さんや長男が本人の行動を完全に制限することは難しかったと思います。やはり何らかの共済制度を作って、こうした被害を救っていくべきではないでしょうか?(45~49歳/女性)

「在宅介護の実情に目を向けて」介護者の声

今回の事件において、他にも多くの意見が寄せられています。その一部をご紹介します。

■認知症の人が一人で外出することは本来無害な行為。人間の尊厳を守るなら当然の行動。もし事故が起きた場合も、家族責任を追求するのは筋が異なる話。(65~69歳/女性)

■在宅での介護の場合、家族の仕事、家事など、目を離さざるを得ない場面などいくらでもあり、また、今回の件のように「うたた寝している間に」ということもあり得ます。認知症の家族が出歩くことに対し、何の対策も講じていなかった、というなら監督責任を問われても仕方がないかもしれません。ただ、全てに当てはめるような事にはなって欲しくないです。また、必要な人が必要な時に適切なサービスを利用出来る環境が整って欲しいと思います。(45〜49歳/女性)

■24時間365日目を離さない事なんで、到底無理な話!! 実際に直面してみれば解る話!!(50~54歳/女性)

■家族の監督責任は無し、これが認知症の人を介護している人達の願い、希望です。 でも 現状では無理でしょう。 民間の保険、公的な救済でそれが可能になる様にしていきたいと思います。(55~59歳/女性)

■家族が24時間見守るのは無理です。拘束して外に1歩も出られないようしなきゃ徘徊はなくならないと思います。 でも、縛り付けたら虐待と言われるんでしょうね。 家族は自分の仕事、恋愛、友達、趣味を制限して介護をしているのにこれ以上どうしたら良いのでしょうか。 今回の事件で有罪が確定したら私は在宅介護は2度としたくありません。(30~34歳/女性)

■介護経験のある人ならば本当に辛い請求だと思います。難しい問題ではありますが前例として今回の訴訟の結末が多大な影響を持つ恐ろしさの方が怖いです。(50~54歳/女性)

■今回気になるのは保証を持ちかけられた家族が高齢である点。高齢の妻に徘徊を止められるはずはありません。また近所に住んで介護を担当していた息子の妻の存在もあり決して監督不行き届きとは思えず、なおかつ賠償を求められることには反対したいです。 介護に関してきちんと監視されているかの第三者機関の存在が必要ではないかと思います。罰則で縛るのではなく自己なく地域で皆が暮らせるような。理想論とは思いますが。(45〜49歳/女性)

■今の制度上ではケアプランやサービスの契約に於いて身元引受人となるため、監督責任が生じる。今後も同様の審判がされるようであれば、間違いなく、補償制度が充実しない限り誰も身元引受人はいなくなると思われる。24時間365日見続けられる訳でない。認知症の方は事故が起きないように閉じ込められてしまう。監督責任と言われたらそうなるのが当たり前になってしまう。施設か閉じ込める虐待的対応しか選択できない。民間保険の拡充もいいが、入れない困窮層は被害を回避できない。(35〜39歳/男性)

■家族がいる場合は良いが、今後身寄りのない方は増えていくと想う。入居施設で、職員が見守りしていても事故は起こる現状がある。施設職員と同じ見守りやケアを求めていては、安心して在宅生活が継続できなくなる。住み慣れた地域で家族や友人に囲まれて生活できるよう、公的な制度が整うことを願っている。(30〜34歳/女性)

まとめ

「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」は、国家戦略の一つである新オレンジプランでも重要テーマとして掲げられています。今回の一件で、徘徊行動のある認知症の人を、家の外に出さないように閉じ込めたり、体を縛ったりすることが当たり前になってしまっては、本末転倒です。徘徊行動のある認知症の人を、社会全体でどのように見守り安全を確保するのか、という方向性を考慮した、最高裁の議論が進行してほしいと願います。

今回アンケートにご協力頂いた多くの皆さま、誠にありがとうございました。

【アンケート調査概要】
・調査期間:2016年2月3日(水)
・調査対象:認知症の介護経験を持つ全国20代~70代の男女100名(対象:認知症ONLINEの読者)
・年齡割合:20代 4%、30代 28%、40代 44%、50代 17%、60代 4%、70代 3%
・男女割合:女性80%・男性20%
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認知症ONLINE 編集部

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