
母
ヘルパーさんがいらっしゃった時、必ず伝票にハンコを押します。母はハンコ付きボールペンがお気に入りで、いつも使っているのですがよく失くします。
嫁いで姓が変わった娘は、ハンコを必要としてません。いわゆる「もの盗られ妄想」ですが、もうひとつの見方として「取り繕い」という考え方もあります。
取り繕いとは?
取り繕い・・・不都合などを隠そうとして、うわべを飾る
と辞書にあります。アルツハイマー型認知症の初期症状として、「取り繕い」はあるとよく言われていますが、認知症特有のものではありません。誰でも日々、「取り繕い」をしながら、生活しています。
例えば仕事に遅刻したとき、単なる寝坊だったとしても、
- 道が混んでいて、渋滞で間に合わなかった
- 人身事故が発生して、電車が遅延した
誰もが「取り繕い」をした経験、あるのではないでしょうか?わたしだって、自分のミスを素直に認めたくないとき、つい「取り繕い」をします。
わたしの「取り繕い」は巧妙なので、時に人を騙せてしまいます。しかし認知症の母の取り繕いは、”明らかに”間違いだということが分かります。認知症の方の取り繕いには”ズルさ”がありません。
場の空気が読めている、プライドが保たれている
もの盗られ妄想以外でも、いろんなパターンの「取り繕い」を聞いてきましたが、わたしは
- 場の空気を読もうとしているなんて、すごい!
- まだまだミスしたくないという、プライドが残ってるんだ!
こう考えるようにしています。ちなみに模範的な対処方法は「否定しない」というものです。しかし何度も何度も繰り返された場合は、わたしはやさしく指摘するようにしています。
我が家に来る医療・介護職の皆さまは、母の「取り繕い」によく騙されています。わたしから見ると巧妙さは全くないのですが、信じてしまうことが多いです。

母
確かに、キレイに保たれているように見える部屋。2年ほど前まではマメに掃除をする人だったので、自分では掃除しているつもりでいます。実際、掃除しているのは息子であるわたしで、母がデイサービスに行っている間にいつも大掃除をしています。

くどひろ
亡くなる前の認知症の祖母は、このプライドが失くなってしまったので、母はまだまだ大丈夫と考えるようにしています。
「取り繕い」を見抜くには、ある程度一緒に生活しないと判断できないなと感じています。
今日もしれっと、しれっと。
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