はじめまして、ケアリングクラウン・ケアリングコーチの金本麻理子です。幼稚園教諭、ホームヘルパーを経て、現在介護者・看護者のメンタルコーチ、そしてClown one Japan代表として、医療や介護の現場に「ユーモアと愛に満ち溢れたコミュニケーションを取り入れる」ケアリングクラウンの活動を広げています。認知症ケアにも活用されているケアリングクラウンの可能性について、もっと多くの人に知ってほしい。そんな想いから、ここでは私達の活動についてご紹介させていただきます。
ケアリングクラウンって知ってますか?
ケアリングクラウンとは、病院や高齢者施設、養護施設、難民キャンプ、被災地、刑務所などを訪問して、“心のケア”をする道化師(クラウン)”のことです。赤鼻をつけた道化師の格好をして、お年寄りや闘病中の人、障害を持つ人、子どもなどケアが必要な人々に、笑いとユーモアを届ける活動をしています。
クラウンと言っても日本ではまだ馴染みがなく、“ピエロ”と言う方が知られているかもしれませんね。元々は、サーカスや劇場にいたクラウン達が、空き時間に入院中の子供達のお見舞いをしたのがケアリングクラウン、ホスピタルクラウンのはじまりとも言われています。
1998年に公開されたアメリカ映画「パッチ・アダムス」(ロビン・ウイリアムズ主演)ご存知でしょうか。ジョークを連発するユニークな療法で、人々の心と体を癒す実在の精神科医パッチ・アダムス(Dr.パッチ)の若き日を描いたヒューマン・ドラマです。この映画が火付け役ともなり、世界中にケアリングクラウンの活動が広がりました。
私も十数年前、この映画がきっかけでケアリングクラウンに魅せられた一人。当時、認知症の祖母の介護と看取りを経験して憔悴状態だった私に希望を与えてくれました。その後、パッチ本人と出会い、海外でパッチ率いるクラウンチームに帯同したり、国内でケアリングクラウンのグループClown one Japanを立ち上げました。
非言語コミュニケーションで“存在”を伝える
私達は、劇場やサーカスではないので、特別な道具は準備しませんし、特別なパフォーマンスをすることもありません。病室、高齢者施設、養護施設など、その日その場の状況に応じて、常に即興で相手の方と共有できる世界をつくりだします。
時には相手の方のお話を聞くだけであったり、肩に手を置いたり、静かに手を握っているだけということもあります。昔の話に耳を傾けたり、童謡を一緒に口ずさむこともあります。そうしているうちに、それまで無表情であったり、天井をみつけているだけの方の表情に自然に笑みがこぼれ赤みがさしてきます。
私達は相手が認知症だろうが、障がいを持っていようが、そこにフォーカスしたり、病名で判断することはしません。ただそこにいること。同じ空間で、同じ体験をすることで、言葉を超えたコミュニケーションが生まれることが喜びなのです。
想像してみてください。
病院や施設に赤鼻をつけて赤や黄色、ピンクなどカラフルな衣装を着たクラウンが、手に手にバルーンやシャボン玉を持ち、笛やアコーディオンなど鳴らしてやってくる!まるでおもちゃ箱をひっくり返したような光景!会話が成り立たなくても、赤鼻をひとつくっつけるだけで笑顔がこぼれる!
クラウンと出会った人は、明るい気持ちになるのです。明るい気持ちになると、一人ひとりが能動的に“自分ができること”に気付き始めます。どんどん生き生きとした表情に変わっていきます。そんな素敵な変化をこれまでいくつも目の当たりにしてきました。
介護施設にこそ、笑いとユーモアが備わるべき
私たちは、笑い合うことで、自分の中の孤独感が取り除くことができます。初めて出逢った人とも距離を縮めてくれます。ユーモアは、人の気持ちは前向きにさせ、人生の質が高めるためのツールです。
今日はありがとう
あなたに会えてよかった
居てくれてありがとう
生きていてくれてありがとう
笑顔で相手に触れ合うことで、愛が伝わります。私たちクラウンにとっても、相手の人にとっても、それは命の灯に火がつく瞬間です。これは、認知症ケアにも通じることです。
パッチが教えてくれました
「クラウンは相手と友達になれるもっとも近道の方法だよ」
介護施設で生活するお年寄りにとって、人と人との関わりは大きな癒やしになります。そうした場にこそ、ケアリングクラウンの力が求められると思います。今後、クラウンの活動を通して感じた認知症の方の変化、職員の方、スタッフの方の変化などをお伝えしていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。


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